ペール・ギュントについてのyurikamomeさん、ドクター円海山さんへのレスを書いていたら長くなったので、ここにエントリーします。
プロコフィエフの「放蕩息子」はつい書き忘れというか…、イージー・ミスで失礼しました。 旧約聖書に題材を求めた作品というのは意外に多いのですが、ユダヤ教の聖典でもあるこの書が確かに多くの作家にイマジネーションを与えたことはもちろん、多くの人たちがその内容を知っているということもあるのでしょう。 童謡の「ちょうちょ」は日本語の歌詞となって全く意味が変わりましたが、あれは「小さなハンス」という歌で、ドイツでは誰もが知っている童謡なのだそうです。そしてその内容が「放蕩息子」の内容にそっくりなのですね。 歌詞を直訳します(私の先生によるものです)。 かわいいハンスが一人で行きます遠い世界の彼方へ ステッキと帽子がよく似合う。彼はごきげんだ。 けれどもかあさん、泣きました。かわいいハンスがいないのです。 それに気がつき子供は、いそいでおうちへ帰ります。 以上は全体をまとめたもので、「ちょうちょ」のメロディーで歌えるようにしたものなのですが、実際には何番までか歌詞があって、物語になっていて、成長したハンスが「お母さん、ぼくだよ」と帰ってきたところ、一目で我が子とわかった母親が抱きしめるところでおわっています。 結末が聖書とは多少変わっていますが、これは「ペール・ギュント」そのものですね。こうした話はヨーロッパの各地にあるようで、その元になったのが旧約聖書であるというのが正しいのではないかと私は勝手に想像しています。 旧約聖書の時代は男系社会のお話ばかりで、ごくわずかな例外を除いて女性が主役となることはありません。したがってこの「放蕩息子」の話も母親は全くといっていいほど登場しませんが、ペール・ギュントなどの話では母親が大きな役割を果たすように脚色されています。 こうした脚色によって、話に人々が共感しやすくなっていったことは否めないのではないでしょうか。ペール・ギュントではオーゼが1幕で早々と死んでしまうのですが、その母性をソールヴェイに移され、結局その大きな母性愛の元でペールの放浪が終わり、彼もまたあの世へと行くのです。 しかし、この幕切れはトリスタンなどのようなスケールの大きな「愛の勝利」ではありませんが、情愛に満ちていて、私にはとても共感しやすいものです。
by Schweizer_Musik
| 2006-08-11 19:44
| 音楽時事
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