ディスク・モンターニュのライブCDを聞く。実は先日実家に帰った時にCDの山の中から「発見」した一枚。聞いた記憶がなく、買ってそのままになっていたに違いない。オネゲルの交響曲 第1番 (1930)やデュティユーの交響曲 第2番「ル・ドゥーブル」(1956-59) 、更にドビュッシーの「海 〜3つの交響的スケッチ」(1903〜5)、管弦楽のための映像 (1905-12) 第2曲「イベリア」、ピアノと管弦楽のための幻想曲 (1889-90)、そしてルーセルのバレエ組曲「バッカスとアリアーヌ」第2番 (1930)という内容の二枚組。1962年に行われたパリでのミュンシュのコンサートからの録音だ。オケはフランス国立管弦楽団。ドビュッシーでピアノを弾いているのは、ニコール・アンリオ=シュヴァイツァー。
大分ミュンシュを集めたがRCAでの正規録音のないものも多く、ステレオでの復刻というのもうれしい。録音状態は当時のものとしては上々である。 DMSというレーベルで日本盤となって出ていたものを買っていたので、解説もあるが、大したことは書いていない。しかし、良い演奏だ。オネゲルの第1番の交響曲には良い演奏が無かっただけにこの録音はその乾きをいやすものである。この作品ではじめて感動を覚えた。シャルル・デュトワなどの演奏はこの演奏に比べれば表層をさらっているに過ぎない。 冒頭から深く抉るような2声の交換にブラスが加わっていくところなど、こうでなきゃと思う。決して若書きでもなんでもない、オネゲルの熟練の作なのだ。このあと4曲の交響曲を書いたため、第1番が軽くみられることが多いのが残念でならない。この曲を書いた時、すでにオネゲルは機関車パシフィック231などをすでに世に問うていたのだ。 第2楽章の深い悲しみを弦のユニゾンに延々と語らせるのは、もうショスタコーヴィチ以外にはオネゲルしかいないだろう。終楽章のスケルツォ風のPrestoが不条理であれば、それがAndante tranquilloにとけ込んで、そして全てが穏やかに終わる。これがどうして聞かれないのか、残念だ。ミュンシュの演奏はいままで色々聞いてきたこの曲の録音の中でも最高の出来だ。もうこれ以上のものは出ないかもしれない。 デュティユーの交響曲第2番もまた名演だ。ミュンシュはこうした同時代のものを数多く手がけたが「ル・ドゥーブル」と題されたこの作品でも力強い演奏を繰り広げている。この作品はダニエル・バレンボイムが指揮した録音を私は愛聴してきたが、そちらはずっとスマートな演奏で聞きやすいが、ミュンシュの録音の方が踏み込みが深いと思う。細かなフレーズをフランス国立管弦楽団の面々は実に自信たっぷりに演奏している。 続くドビュッシー作品のいくつかは、1962年5月8日ドビュッシー祭でのライブ録音である。 ドビュッシーのピアノと管弦楽のための幻想曲は3楽章からなるドビュッシー唯一のピアノ協奏曲のような作品で、私は大学の時の卒業の年、かなり入れ込んでこれを分析したことがある。その時聞いていたのはアルド・チッコリーニのピアノでマルティノン指揮のフランス国立管弦楽団であった。奇しくも同じオケであるが、ニコール・アンリオ=シュヴァイツァーは悪くはないが、タッチが平板でどうも良くない。展開部でもオケの立派さばかりが目立ち、ピアノは霞みがちだ。 ピアニストに人を得ていればと思うが、この曲をレパートリーとしている大ピアニストはそう多くないだろうし、ミュンシュは合わせものがどうも上手くないので、やはりニコール・アンリオ=シュヴァイツァーくらいになるのだろうか。 しかし、第2楽章のファンタジックな入りは本当にきれいだ。もっと人気が出て良い曲だと思う。ドビュッシー初期のベルガマスク組曲などのような甘いハーモニーに満ちていて、メロディーも美しい! 「海」はこのコンビでの正規録音もあるので、無理にこれでなければならないことはない。(解釈は当然同じだ)しかし、こちらの方がずっと表現が積極的でわかりやすい。ただ、録音上のバランスというか、ドビュッシーのもともとのオーケストレーションがデリケート過ぎて、いくつかのフレーズが他の楽器にかぶってしまっている。特に木管のフレーズのいくつかに問題がある。正規録音ではこうしたことはない。どちらを選ぶかは、五十歩百歩といったところか。両方ともとびきりの名演。 「イベリア」は正規盤の方が明らかに上。どうも乗っていない。この演奏は同じ日に行われているはずなのに・・・。それでも第3楽章あたりになって大分持ち直すのだが、第1楽章の「街の道や抜け道を通って」は駄目。 最後にルーセルのバレエ組曲「バッカスとアリアーヌ」第2番 (1930)が入っている。これも正規盤が何種類かあるが、このライブ盤もなかなか良い。ただ、会場の咳ばらいが盛大で、冒頭のデリケートな部分の雰囲気が大分損なわれている。少々残念ではあるが、それでも購入して聞くだけの価値はある。表現のスケールが大きく、マルティノンなどの名演を聞いていても、このミュンシュの踏み込みの深さは特別だ。 今も手に入れば良いのだが・・・。良い演奏だ。ライブとしては第一級品。 シャルル・ミュンシュの芸術/DISQUES-MONTAIGNE/DMS-1001〜2
by Schweizer_Musik
| 2005-01-27 08:15
| CD試聴記
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