旧試聴記の再録です。
バークシャーで出ていたので速攻で申し込んだもの。予想に違わぬ名演だ。あのカール・ベームとフィルハーモニアとの名盤が古色蒼然たるものに聞こえてしまうほどで、歌手の軽量級を忘れてそのアンサンブルのすばらしさに心奪われてしまった。 ロンバールは昔ストラスブール・フィルハーモニーと来日した時にベルリオーズの幻想交響曲を聞いた記憶があるが、今回はあれから三十年近く経ってのことだ。彼がその間どういう仕事をしていたのか、よく知らないが、スイス・イタリア語放送管弦楽団を見事に率いてのこの音盤は広く薦められる。 1幕終わり間際でフェランドが歌う「いとしい人の愛のそよ風は」など、声量というよりももう少し声そのものの魅力がほしいと思う。ラウラ・チェリッチのデスピーナはチューリッヒ歌劇場の録音でのバルトリ(DVDがあった)には遠く及ばない。声の魅力という点でロンバール盤は素晴らしいとは言えぬ。ベーム盤のエリーザベト・シュヴァルツコップやクリスタ・ルートヴィヒ、ニコライ・ゲッダなどの歌の素晴らしさとは比べものにならない。 しかし、不思議なことにオーケストラが入ってきて背景のピントが合ってくると、それなりに聞かせるのだ。ベーム盤はアンサンブルがちょっと重いのだが、この羽のような軽さはどうだ。決して古楽器風の解釈ではなく、伝統的なものなのだが。 フィオルディリージのラングランジェはなかなか良い歌を聴かせる。また合唱はファゾーリスが指揮する放送局の合唱団だ。エドウィン・レーラーが30年代に創設したヨーロッパでも有数の名合唱団は聞く価値がある。 ということで、個々の声の魅力は今ひとつであるものの(コシで歌手の魅力に欠けるのは致命的と思うのだが・・・)アンサンブルで聞かせるコシも良いではないかということで推薦したい。 1999年春、ルガーノでの録音。仏フォルラーヌの盤。CD番号は316809。
by Schweizer_Musik
| 2005-01-27 09:01
| CD試聴記
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