高雅で感傷的なワルツについて -01
授業について、ちょっと前にドクター円海山さんよりご指摘を受けたラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」について、特にそのハーモニーについて考えてみたい。

冒頭のバスは次のようなものである。
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普通に考えて、このバスにのせる和音ってせいぜい次のようなものではないだろうか?
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ああ、なんてつまらない響きなのだろう!陳腐でどうしようもない。せいぜい6度の付加音でもつけてみたいと思うが、それでも救いようのない和音だ。
ちなみに、みなさんがもし作曲するならば、こんな和音を書いてはならない。
これはラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」の冒頭のバスである。天才ラヴェルはこのバスの上に次のような和音をつけている。
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冒頭の和音をよく見てみると、ソの音からミの♯まで6つの音が使われていることがわかる。これは13の和音と見ることが出来なくもない。が、最後の13度(根音から13度上の音という意味)の音は、ワルツ特有の付加音として解釈すべきで、ラヴェルはそれに♯をつけて響きに少しひねりを効かせているが、それでも11の和音とすべきである。
3拍目の和音はドミナントであるが、それを増和音で使っている。7度の音は半音下げて使うのが普通であるが、それを半音あげて使いレの♯はミの♭と異名同音であるからそう考えれば9度を半音下げて使いここに二度の不協和となっている。
言葉で説明すると面倒くさいので、和音のモデルの楽譜をあげておく。
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これは、少し使い方は異なるものの、ポピュラー音楽ではザラに聞かれる69の和音である。そしてそれは続く部分で確認できる。
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このハーモニーは、実はヨハン・シュトラウスなどと同じ和音なのだ。6度、7度の付加音、ついで9度の音を使いまくれば、サティの「あなたが欲しい」が出来てしまう。
ただ、こうしたポピュラリティのある和音の特徴を、ラヴェル流に変えて使っているのだ。このラヴェル流がこの冒頭の終止のところに聞かれる。
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ドミナント調に終わるこの和音はバスがラの音で、ドミナント調のニ長調に対する5度の根音である。それに冒頭と同じ13度の和音が使われて、冒頭に対応しているのだ。
ついで一曲目の終わりの和音もあげておく。ほとんど同じように見えるが、微妙に音を変えてト長調に終わっているところに注目すべきだ。
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(この部分のみ11月20日追記)
ラヴェルは二重三重にこの1ページの伏線を張り巡らせているのだが、それは全曲をまとめあげる基礎となってもいる。すごい奴だ、ラヴェルは!!

この稿、続く(予定)
by Schweizer_Musik | 2006-11-19 08:06 | 授業のための覚え書き
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