授業の記録…とうとう金曜日の…
昨日の授業で第3クォーターが終わり、学生たちは試験というか提出物を出して帰って行った。私は六限の授業を終えてから1時間ほど残ってそれを採点し、家路のついたので、帰ったのがかなり遅くなってしまった。
5、6限の制作実習の授業はすでに提出を受けていることもあったのかもともとたった3人の授業なのに、今日は二人欠席したため、一人を相手にすることとなり、何もできないのでここで書いている「高雅で感傷的なワルツ」の楽譜を「眺めながら」その分析をして終えた。
一年生ながらなかなかの知性の持ち主で、教えがいがある。モードについてはほぼ理解できたようで、少し時間はかかるものの分析についてくるのは感心する。
とは言え、最初の4小節の話だけで1時間半をかけて説明した。実質2小節であるが、この冒頭の和音がわからなければこの曲の分析は不可能だからだ。付加音の説明では十九世紀のワルツなどの様式的理解からはじめたのでこういうこととなったが、ラヴェルがそれに「捻り」を加えていることまで話が到るにはそれだけかかるのだ。

さて、ワルツの付加音について説明したことを書いておこう。これが前提となるからだ。そして「ラ・ヴァルス」あたりの理解の前提としても必要だから…。
19世紀はじめにウィーンにシュランメル兄弟が生まれ、次のような曲を残した。
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前半がⅠ度、後半がⅤ度の和音で伴奏されるのだが、メロディーにはスケールの第6音が和声音のように使われている。これが付加音である。
この時代のポピュラー音楽はこの付加音が不可欠だった。ヨハン・シュトラウスの誰もが知っている「美しき青きドナウ」のメロディーにも付加音が使われている。
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和声音のように使われているという点に注意を。この非和声音は「解決」しないのだ!
こうした使い方を更に推し進めてワルトトイフェルが「スケーターズ・ワルツ」で第7音も付加音に加えてみせた。
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それを更に推し進めてみせたのがサティ。「あなたがほしい」という曲は第9音を付加音として「スケーターズ・ワルツ」の行き方を裏返して聞かせる。
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こうして付加音はヨーロッパからアメリカに渡り、ヴギヴギなどに応用され、更にはブルーノートが加えられ、独特の発展をしていくのだが、それはここの話題から逸れてしまうのでまた今度。
しかし、この付加音だけで曲を作ってしまう人まで出てきてしまう。アントン・カラスがその人である。1949年に公開された映画「第三の男」での「ハリー・ライムのテーマ」が次のようなものだった。
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このメロディーはそのほとんどが付加音で出来ている。(某ビール会社の曲ではない。ビールのCM用にアレンジされて使われているだけで、アントン・カラスの音楽がオリジナル)これをラヴェルは♯を加え、捻りを効かせたのだ。
この間にウィーンのホイリゲの話などを挟んだので、こんなに時間がかかった。ウィーンのホイリゲのことを思い出しながら、もう新酒の季節になったなぁと思った。そういえばボージョレーの新酒も発売になったし…。あれは生ものだから買うと置いておけないのが難点だが、やはり季節物は日本人は好きなようだ。

話が逸れてしまった。この話の後、二管編成のスコアを眺め(まだオーケストレーションの授業を彼にしていないので、眺めただけであるが)小澤征爾のCDを聞いてみた。
ちなみにピアノ版はアリシア・デ・ラローチャのCDを使ったのだが、なんて上手いのだろう!メロディーとハーモニーの光と影をこんなに丁寧に扱い表現した演奏はそうないのではないか。
第2曲に入りかけたところで三時間ほどの授業が終わる。丁寧にやるとこんなにかかってしまう…。
この後で提出された作品の採点をして、再来週のオーケストレーションの音だしの申請や、欠席者についての報告を行って帰宅したのだった。今日は寝るぞ!
by Schweizer_Musik | 2006-11-22 06:56 | 授業のための覚え書き
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