仕事納めはまだではあるが、一応、年内の授業は終了した。これでクリスマス・イヴにパルテノン多摩に出かけて、昔にアレンジしたプロコフィエフのロメ・ジュリの編曲を聞いてくる予定である。もう一ヶ月あまりたって昔の話となってしまった。
今日の現代音楽の授業はアカデミー生対象の授業ではメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」の第1楽章「水晶の典礼」をとりあげた。ピアノとチェロの朝靄のような背景にナイチンゲールとクロツグミの鳴き声が交わされる。それぞれが全く異なる時間軸の中にあり、それらが交錯して行く中でクライマックスが形成され、やがて静まっていく。 これをスコアを見ながら分析するのであるが、こうした宗教的な意味を深いところで強く意識した作品の場合、日本人はもう理解することが難しい状態となっていることに唖然としてしまうしかない。 池波正太郎が描く鬼の平蔵や秋山小兵衛は、町を歩いて社があれば必ず頭を垂れて参詣を欠かさない。がしかし、今の日本人は彼らの敬虔な祈り、八百万の神への畏怖の念を忘れてしまったのではないだろうか。私も含めて、神社には正月くらいしか行かないし、お寺には葬式か法事がないと行きそうもないのが今の人ではないか。 祈りを忘れた心がたどり着く先は一体どこなのか、この「世の終わりのための四重奏曲」を聞きながら痛切に思った。 さて、この後、オーケストレーションでの音だし。結局、外部の方に来て頂いてオーボエも入った十人編成の木管の音だしを行った。私の弟子が、雅楽の響きをやろうとして玉砕したが、でもそのチャレンジ精神は立派。 ということで、彼らの現代音楽の授業は近衛秀麿の「越天楽」をとりあげる。これは実はとても面白い曲なのだ。3つのセクションに分かれるのは龍笛や篳篥のセクションと打楽器などのセクション、そして笙のハーモニーのセクションに雅楽そのままに分かれて書かれているせいで、それも上手にコブシなどをいれていく。きちんと揃っていないのが美学となるこの雅楽の世界は、ヨーロッパの人々には脅威であったことだろう。初演の時の批評で「この曲の作曲者はドビュッシーの影響を受けている」というのがあったそうで、そうした甚だしい見当違いも、西洋の音楽家たちにとっては仕方がなかったのだろう。 このあと、二限のアレンジの授業が入り、教え子がライブをやるというので、それをちょっとだけ地下のスタジオに行って聞き(なかなか良い演奏だったよ!)、そして最後のレッスン・・・。 終わってから学務で来年度の授業の依頼というか、話があった。今年と同じ科目を担当するようだ。しかし疲れた…。もう寝よう。明日は一日何もしない日にすることにした。絶対寝てやる!
by Schweizer_Musik
| 2006-12-20 23:23
| 授業のための覚え書き
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