シラバス案、完成!
シラバスが完成した。現代音楽の2つの授業については、今年やってみて、少しだけ違和感を感じた部分を修正したりして、今までとは異なるプランを考えてみた。
そのために大変な時間がかかってしまった。こんな程度のものに何でこんなに時間をかけたのか、誰にもわかってもらえないだろうけれど…(泣)。
とりあえず、こんなプランで授業を組み立てるという道標のようなもので、まだ決定ではない。学校がこれでいいよと言ってくれて初めてシラバスとなるのであるから、今のところは、私の授業プランというところか…。

まず本科生のためのシラバスであるが、前期はまず古典モードから合成音階などの近代から現代に至る音階の使用方法を作品の分析から、更に4度構成の和声などから多調性、そしてバルトークの論理的な作曲法についてその基本的な考え方を学び、作品を試作してみるということを目指すこととした。
01) 近代のはじまり : ワーグナーのトリスタン和音から調性の拡大と崩壊と二十世紀を俯瞰する
02) モードの説明 : 古典モードの基本的説明
03) モードによる作品の分析(1) : ドビュッシーの夜想曲より「祭り」(各種モードの使用について)
04) モードによる作品の分析(2) : オネゲルの「夏の牧歌」、イベールの「寄港地」第2曲の分析。
05) モードによる作品の分析(3) : 芥川也寸志の交響管弦楽のための二章の分析。オスティナート作法の可能性について
06) モードによる作品の分析(4) : ウォルトンのヴァイオリン協奏曲第2楽章、第3楽章の分析
07) モードによる作品の分析(5) : バルトークのミクロコスモスの分析 (試験)
08) 古典モードから合成音階へ : 近代のモード、ペンタトニック、ヘキサトニックについて基本的な説明
09) 合成音階(1) : オネゲルの交響曲第5番、メシアンのみどり子イエスの20のまなざし、シベリウス交響曲第四番、ストラヴィンスキーの火の鳥
10) 合成音階(2) : オネゲルの「機関車パシフィック231」の分析
11) 多調性(1) : ミヨーの小交響曲第1番「春」の分析
12) 多調性(2) : オネゲルのダヴィデ王、交響曲第五番の終楽章の分析
13) 中心軸システムの分析 : バルトークの二台のピアノと打楽器のためのソナタの第1楽章の分析
14) 中心軸システムと黄金分割 : バルトークの弦・打・チェレスタのための音楽の第1楽章の分析
15) フィボナッチの数列の応用 : バルトークのアレグロ・バルバロの分析

続いて後期の授業は調性を崩壊から無調、そして12音主義への20世紀前半における重要な技法を学び、それによる小品を試作してみることから、クラスターなどの和音の使い方、4度構成のハーモニーから2度構成のハーモニーと、和音という切り口から近現代の作曲技法を学ぶ。

16) 12音に至る経緯 (1) : 無調の試作の段階 シェーンベルクの室内交響曲第1番からピエロ・リュネール
17) 12音に至る経緯 (2) : ベルクのピアノ・ソナタの分析、歌劇「ヴォツェック」の紹介〜古典形式へのアプローチ
18) 12音に至る経緯 (3) : 音色への興味/ウェーベルンのパッサカリア〜バッハの編曲作品から交響曲へ(音色旋律)トータル・セリエルへ
19) 12音による作品の分析(1) : シェーンベルクの木管五重奏曲の分析
20) 12音による作品の分析(2) : ウェーベルンのピアノのための変奏曲の分析
21) 12音列の制作実習(1) : 音列を制作しメロディーを作り、伴奏を書く
22) 12音列の制作実習(2) : 音列を制作し二声もしくは三声のカノンを書く
23) 近現代音楽における和音の考え方 : 高次倍音と二度和声、四度和声について
24) 11の和音から13の和音(1) : ラヴェルの高雅で感傷的なワルツの分析
25) 11の和音から13の和音(2) : ストラヴィンスキーの管楽八重奏曲、スクリャービンのピアノ・ソナタ第8番
26) 15、17の和音 : オネゲルの交響曲第3番の終楽章、ラヴェルの「マダガスカルの土人の歌」の分析
27) 4度構成の和音(1) : ストラヴィンスキーの小管弦楽のための組曲の分析、4度構成のハーモナイズ
28) 4度構成の和音(2) : 3和音〜4和音について、ストラヴィンスキーの7重奏曲、オネゲルのダヴィデ王の分析
29) 付加音和音 : 増6の和音(伊・仏)から短3、増8、重増8、増3などの付加音、開離での使用などヒナステラのソナタ、ジョリヴェのファゴット協奏曲などの分析
30) 二度構成の和音からクラスターへ

こんな流れで本科生の現代音楽の授業を組み立ててみた。今までは12音をさきに行っていたのだが、現実にドデカフォニーからトータル・セリエルの方が過去の遺物となりつつある現在、モードなどを最初に学んだ方が、それを使った作品制作が早く出来るということもあって、これを入れ替えることにした。それに伴い、色々な要素を前後に入れ替えると同時に使用する曲も一部に変更を加えた。
ケックランやパーシケッティの本などを教科書に使いたいのだが、多くは絶版で使えず、今年もスコアなどをみんなで見合いながらのアナリーゼとなりそうだ。
しかし、どう考えても20世紀前半の作品が中心の分析であるから、現代音楽作曲法という科目名にちょっとプレッシャーを感じずにはいられない。

アカデミーの方はもう少し現代音楽らしい内容となる予定である。続いてアカデミーの方の案を…。

まず前期は、トータル・セリエルなど1950年代の理論的根拠となったウェーベルンの作品、メシアンの初期のドビュッシーの影響下の作品を中心に分析することから、論理的な作曲について習得することを目指す。
01) 無調への道(1) : ストラヴィンスキーの兵士の物語の分析(調性の新たな可能性の模索)
02) 多調性の音楽(1) : ストラヴィンスキーの「春の祭典」のもたらしたもの、その影響について
03) 多調性の音楽(2) : ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」「春の祭典」の分析。ポリ・コード、ポリ・リズムなどの説明
04) 多調性の音楽(3) : オネゲルの「ダヴィデ王」、交響曲第5番終楽章の分析(復習)
05) 無調への道(2) : シェーンベルクのピエロ・リュネールの分析(調性の際限の無い拡大)。語りと朗唱について。
06) 12音への到達と崩壊 : ウェーベルンの交響曲の分析(本科の復習/音色旋律と十二音)
07) 12音以後 : 矢代秋雄のピアノ・ソナタ
08) メシアンの音楽(1) : 世の終わりのための四重奏曲の分析(1)
09) メシアンの音楽(2) :世の終わりのための四重奏曲の分析(2)
10) トータル・セリエルへの接近 : メシアンの4つのリズムの練習曲の分析
11) トータル・セリエルの後 : チャンス・オペレーションと音世界の拡大(ケージ)
12) ポーランド楽派の跳梁 : ペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」の分析
13) ポーランド楽派の跳梁 : ルトスワフスキの「オーケストラのための書」の分析
14) リゲティの音楽 : リゲティの初期から中期にかけての音楽の技法(音群作法について)
15) ポップカルチャー : ポップカルチャーのアンチテーゼ。ミニマル・ミュージックの跳梁と

後期は、武満徹などの戦後の日本の作曲家による作品を分析し、その技法を学ぶことに集中することにした。
16) バルトークの音楽 : 管弦楽のための協奏曲の分析
17) ショスタコーヴィチの音楽 : 交響曲第4番の分析
18) 雅楽などの伝統音楽への接近 : 近衛秀麿の「越天楽」の分析〜早坂文推の音楽
19) 日本の民族主義 (1) : リトミカ・オスティナータの分析(モードとリズム)
20) 日本の民族主義 (2) : 3人の会の音楽(1) 團伊玖麿の「夕鶴」 芥川也寸志「弦楽のためのトリプティーク」
21) 日本の民族主義 (3) : 3人の会の音楽(2) 黛 敏郎の涅槃交響曲などの分析"
22) 日本の民族主義 (4) : 早坂文推の映画音楽とシリアスな作品を俯瞰する
23) 日本の民族主義 (5) : 外山雄三のラプソディ、小山清茂の管弦楽のための木挽歌などの分析
24) 日本の民族主義 (6) : 間宮芳生のヴァイオリン協奏曲、セレナーデの分析
25) アカデミズムの音楽(1) : 矢代秋雄のピアノ協奏曲の分析
26) アカデミズムの音楽(2) : 三善晃の交響三章の分析
27) 武満 徹の音楽(1) : 弦楽のためのレクイエムの分析 (弦楽の可能性)
28) 武満 徹の音楽(2) : 地平線上のドーリアの分析(雅楽への接近)
29) 武満 徹の音楽(3) : ガーデン・レインの分析(ブラスによる音色の多様さの追求)
30) 90年代以降の音楽 : 吉松隆の「朱鷺によせる哀歌」の分析

こうしたプランを作るのは意外なほど大変だった。とはいえ、こうして勉強できるのだから、文句を言うと罰が当たるというものだ。この他にもオーケストレーションのシラバスなど持っている授業コマ数が多いので、結構大変だったが、まぁなんとか期限内に作成して提出を終えることができた。
今日は一日授業もあって、現代系の一年生たちと、ボレロの分析とペルトのカントゥス(ブリテンの死を悼んで)を聞く。ついでにコダーイのハーリ・ヤーノシュの第一曲のくしゃみの部分の書法について説明しつつ、イベールなどにこうした書法が聞かれることや、「ウィーンの音楽時計」でバスが全く使われない、ウィンド・アンサンブルでのアレンジの妙についてもスコアを見ながら話す。
楽しみながらの三時間であったが、さすがに一日となると疲れた。明日は完全休養にあてよう。
by Schweizer_Musik | 2007-01-26 22:14 | 授業のための覚え書き
<< 今日は休養日〜! 松下真一のフレスク・ソノール(... >>