いくつかのトッカータとフーガニ短調を聞き比べ…
オルガンが好きで、色々と集めていると、別にこの曲が特に好きっていうわけではないのに、やたらとこのトッカータとフーガが集まってくる。そんなに多くは持っていないつもりでも手元にはオケ版を除いて十種類以上が集まってしまっている。
yurikamomeさんがトッカータ・アダージョとフーガをとりあげておられて、コメントしようと思ったらまたまた長くなりすぎたのでエントリーすることにした。

さて、手元にあるのは
01) ヘルムート・ヴァルヒャ バッハ_オルガン全集_DOCUMENT223489-321B
 1947年ドイツ、リューベック、聖ヤコビ教会録音
02) ヘルムート・ヴァルヒャ ARCHIV/F00A 20019〜30
 1956年9月17日オランダ・アルクマール、聖ローレンスカーク教会大オルガン録音
03) カール・リヒター LONDON/POCL-3920
 1954年11月スイス、ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、クーン・オルガン録音
04) カール・リヒター ERMITAGE/ERC CD 12008-2
 1965年7月6日スイス、ティチーノ州マガディーノ、聖カルロ教会マッシオーニ・オルガン録音
05) カール・リヒター ARCHIV/POCA-2023〜7
 1964年1月コペンハーゲン、イエスボー教会オルガン録音
06) アントン・ハイラー VANGUARD CLASSICS/08 6107 71
 1964年スウェーデン、ヘルシンボリ、聖メアリー教会録音
07) アントン・ハイラー aura/AUR 145-2
 1967年6月21日スイス、マガディーノ、パロッキアーレ教会マッシオーニ・オルガン録音
08) ハンス・オットー DENON/C37-7004
 1979年10月1-5日ドイツ、フライベルク大聖堂、ゴッドフリート・ジルバーマンによる1710-14制作のオルガン録音
09) ルドルフ・シャイデッガー Die Orgel Im Grossmunster/TSO 98206
 1998年2月17,18日チューリッヒ、グロス・ミュンスター、メッツラー・オルガンにて録音
10) ウルリッヒ・ベーメ DS/3 28 069
 1989年ライプツィヒ、聖トーマス教会、シューケ・オルガン(1966-67製造) を使用して録音
11) マリ=クレール・アラン ERATO/WPCC-5864
 1980年10月フランス、オルレアン大聖堂、カヴァイエ=コル・オルガン録音
12) フランツ・ハーゼルベック hanssler/COCO-75169
 1989年4月10,11日オーストリア、ヘルツォーゲンブルク修道院1752年ウィーンのオルガン制作者ヨハン・ヘンケによって建造され、1894年にホッテンスハイムのレオポルド・ブラスバウァーによって修理、1964年グレゴール・ラデツキー商会によって修復されたオルガンを使用して録音
13) ライオネル・ロッグ HM/HMX 290772〜83
 1970年スイス、アーレスハイム1761年ジルバーマン製造(1959-1962にメッツラーによって修復)のオルガンによって録音
14) クリストファー・ヘーリック Meridian/CDE 84148
 1988年リリース ロンドン、ウェストミンスター大聖堂オルガン録音
15) ギー・ボーヴェ GALLO/CD 453
 1986年リリース、スイス、ポラントリュイ、前イエズス教会ユルゲン・アーレント・オルガン使用
16) 木岡英三郎 日本SP名盤復刻選集1
 1930年頃録音東京日本橋、三越本店七階ギャラリー設置のアメリカ、ウーリッツァー社製オルガン使用

一応、手元に在ったものをあげてみた。オルガンについての覚え書きはCDのライナー・ノートを私がその時々にテキトーに訳したものなので、あまり信用しないでほしい。
さて、聞き比べるとわかるのだが、オルガンのピッチ、調律は千差万別。オットーが弾く18世紀初頭のジルバーマン・オルガンなど、ライオネル・ロッグの弾く同じ18世紀中頃のジルバーマン・オルガンとは短三度ほどの違いがある。絶対的な音高の基準が出来たのは20世紀に入ってからの話である。
その話になるとまた興奮してしまうので(笑)このくらいにして、バッハに話を戻そう。
ヴァルヒャ、リヒター、ハイラーの3人は複数の録音があり、オルガンの違いを聞くのにとても都合が良い。中にジュネーヴのヴィクトリア・ホールにかつてあった19世紀末のクーン制作によるオルガンによるモノラル録音もあり、これは貴重である。
メッツラーの名前がいくつかあるが、私の好きなオルガンだからで、エッジの効いた素晴らしい楽器だと思う。
一方、世評の高いアランの録音はカヴァイエ・コルによる大オルガンの機能を精一杯使い切った演奏で聴き応え充分であるが、この曲のロマンチックな面に焦点をあてたものとして評価できる。が、私にはちょっと身振りが大きすぎるように思え、もっとすっきりとした解釈が好みである。しかし、ストコフスキーのオケ版などの華麗な演奏を聞き込んだ人にはこうした録音が良いのではないだろうか?
世評に高いリヒターの録音はコペンハーゲンで録音されたアルヒーフ盤をもって代表させるべきだろうが、火災で永遠にその響きを失ってしまった旧ヴィクトリア・ホールのクーン・オルガンによる録音も捨てがたい。恣意的なテンポの崩しは全くなく、名匠クーンによるまろやかな響きが心を打つ。コペンハーゲン、イエスボー教会オルガンは少し音が硬く、私はあまり好きではない。
その点、ライオネル・ロッグの弾くバーゼル郊外のアーレスハイムの大修道院のジルバーマン・オルガンによる1970年の全集は素晴らしい出来だと思うが、私は名工メッツラーによるリストアが良かったおかげだと思っている。実に反応の良いオルガンで、古いジルバーマンだとは思えないほど良い状態だと思う。
今日のスイスをはじめてとして多くの弟子がいる名教師にして名演奏家であるシャイデッガーがチューリッヒのグロス・ミュンスターのオルガンを弾いたものなどは大変な名演であるが、日本で彼の演奏したCDを手に入れることは至難の技ではないだろうか?
スウェーデンのヘルシンボリ、聖メアリー教会のオルガンを用いた名手アントン・ハイラーによるヴァンガードへの録音は、廉価で出ているので耳にされた方もいるのではないだろうか。これはこの作品の演奏史の中でも最高のものの一つである。ウィーン音楽大学で長く指導されていたこともあり、日本人のお弟子さんも多いようだが、オルガンそのものが日本では人気が今ひとつないので、彼の名前が話題となるようなことはあまりなかったようだ。しかし、このヘルシンボリの教会のオルガンはとても良い状態のオルガンである。エッジの効いた反応の良い音で、アントン・ハイラーの解釈にピッタリだと思う。
メッツラーのオルガンによるバッハ全集がハイペリオンから出ているヘーリックであるが、ここにあげたのはロンドンのウェストミンスター寺院の大オルガンによるもの。マリ=クレール・アランの演奏をもっとスタイリッシュにした感じで好ましい。
by Schweizer_Musik | 2007-02-03 21:15 | CD試聴記
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