クライツベルクのフランス物を聞く
クライツベルクが2003年から音楽監督をしているオランダ・フィルハーモニーを振ったフランス音楽集を聞いた。フルートが活躍する作品を選んだようで、ドビュッシーの牧神の午後への前奏曲やラヴェルのダフニスとクロエ第2組曲やフォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲などが収められている。
ロシアの指揮者がフランス物というと、どうも色眼鏡で見られてしまうようであるが、もともと本場物というものを信用しない私は、何年か前の来日公演の評判がよかったこともあって、興味をもっていたのだ。そしてその結果はまさに私好みでとてもうれしく思った。
ドビュッシーはかなりテンポが遅く、タメが深い。それでいて決して重くならない。当然ロシア音楽のような響きはない。(当たり前だ…チャイコフスキーみたいにこの曲を振ったらただの物笑いの種にしかならない)表情は全体に淡彩で、濃くないのがそうした重さを感じさせないところとなっているのではないだろうか?しかしこのテンポはとても気持ちが良い。ただ、全体にもう少し起伏というかメリハリがあっても良いだろう。クライマックスがやや不完全燃焼で聴き応えという点ではやや?である。
ダフニスを聞いても、テンポの良さがクライツベルクの大きな特徴となっていることがわかる。無理がないのだ。速すぎることもなく、かといって停滞するようなこともなく、どこにも極端な表現はない。それでいて音楽は深く、充分な呼吸で息づいている。これは大きな美点である。
フォーレの「ペレアスとメリザンド」の前奏曲などはそうした美点が最も良い結果をもたらした例としてあげることができる。楚々として美しい!こんなフォーレが聞きたかったのだ!クレジットされているLeon Berendse(なんとお読みするのでしょう?)はきれいな、とても素直な音色で私を魅了した。これは「牧神の午後…」でもそうだったが、このCDでのフルーティストは大正解である。したがって有名なシチリアーノの演奏は今まで聞いた中でも最高の出来だと思った。
ラヴェルの「鏡」の中から「鐘の谷」がオーケストラ編曲で聞けるのはありがたい。編曲はこれはおそらくグレインジャーのものだと思う。何かのCDで聞いた記憶がうっすらとあるが、打楽器を色々と使った異色の編曲で、墓の下のラヴェルは苦笑しているに違いない。とは言え、ラヴェル自身が編曲しなかったピアノ作品の中で、最もオケ向きだと思う作品だけに、このグレインジャーの挑戦的なアレンジも聞き物であることは間違いない。演奏は前に聞いた(誰だったかすっかり忘れてしまった)ものよりもずいぶん良いように思った(うろ覚えの記憶だけがたよりなので…)。
ボレロは大体標準のテンポで、じっくりと演奏している。全く聞いていて安心感のある運びで、エキセントリックなことをやって話題をとろうなどという山っ気はまったくない本格派の演奏で、こうした演奏でこそこうした作品は生きてくるのだ。私は極めて好ましく感じた。
これからクライツベルクという指揮者には注目していかなくては!本日の掘り出し物であった。
by Schweizer_Musik | 2007-02-25 14:20 | ナクソスのHPで聞いた録音
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