ヴィラ=ロボスの音楽をいくつか聞いていたのだが、私はこの作曲家をどう考えて良いのか、未だに結論を出せずにいる。南米の文化に対してあまりに無知であるせいでもあるのだろうが、20世紀の作曲家ヴィラ=ロボスが70年あまりの生涯に1000曲にも及ぶ大量の作品を残したことが理解できないのだ。
主題創作の労苦は彼には無かったらしいのだ。そんな馬鹿なこと…。軽い古典的な様式での小品ならいつでもすぐに書けるし、それならば私だって一日一曲で三年ほどで1000曲なんて夢ではない。しかし、それは20世紀にはもう出来なくなっていた。ヴィラ=ロボスだってわかっていたことで、その上でのこの1000曲というのは、もの凄い重みがある。 その上、自分の言葉、独自の表現方法を持っていた。ショーロのように形式として定着したものもある。これは凄いことだ。なのに、私は何も彼のことがわかっていない。こんな作曲家は他にいない。つかみきれない多様性…とは言いながら、どれを聞いても明らかなヴィラ=ロボスの刻印。強烈なエキゾチシズムと大胆な楽器法…。 1917年の作という交響詩「アマゾン」は明らかに「春の祭典」の影響を受けている。音の使い方がそのままのところもある。こういう出所がはっきりした曲ばかりでないというか、そうでないものが多いのが特徴とも言える。 ブラジル風バッハなど、そのエキゾチシズムをブラジルということで単純に納得してしまわないで、エキゾチシズムを充分に味わいつくすことが重要に思えてきた。 交響曲第6番「ブラジルの山の歌」を聞いてから、ルーダ(愛の神)を聞く。交響曲は変な構成で面食らうが、第2楽章の美しいオーケストレーションに魅せられてしまった。ルーダはバレエ音楽で1951年の曲。ミラノ・スカラ座で初演されている。インカだとか、アステカだとかのタイトルが並ぶまさに南米!しかし、音楽を先入観で聞かない方が良い。そうすると意外にこの作曲家が冷静でインターナショナルな精神を基盤に作曲していたことがわかってくる。 近代モードは徹底して使われている。私も同じやり方をとる場合が多いのでどことなく共通する部分があるのかなと思ったりし始めているのだが、私如き者よりも、もっと比肩するに相応しい人物が日本にはいた。それは伊福部昭。 伊福部昭も日本という狭い範囲で捉えるよりも、もっと広いアジアの音楽というとらえ方の方がずっとすっきりすると思っている。ヨーロッパの言葉と文法でヨーロッパ的でないものを目指した作曲家に分類すべきなのだろう。 だから、ヴィラ=ロボスの民族主義はブラジルの民族主義というよりも南米大陸全体というか、広義にとらえた方が良いのではないか。 そう思いながら、バレエ音楽の「天地創造」を聞いていたら、1954年の作ということであったのだが、かなり前衛的な響きを使っていて、彼とても戦後の前衛音楽を無視できなかったのだろうかとちょっと思ったりもしたが、1917年の作である交響詩「アマゾン」の響きとそう違わないことにすぐに気が付き、これも彼のスタイルだったのだと、そしてその根底には「春の祭典」があったのだと、はたと気が付いた次第である。 彼も「春祭」世代だったのだ…。
by Schweizer_Musik
| 2007-03-02 08:07
| ナクソスのHPで聞いた録音
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