ヴェル・レクを聞く。ヒコックスは凄いやつだ
雅楽の影響を調べていた。春秋社から意義ある新作の雅楽の作品の楽譜が出版されていることもあり(なんとCDつき!)吉松隆氏のものを読みながら聞いていた。
ついで、武満作品から色々聞いているうちにホヴァネスの交響曲第15番や、もう雅楽そのもののようなカウエルの管弦楽のための「オンガク」(1957)を聞いて、もう笑いが出てしまった。
カウエルと言えば、実験的というか、電子楽器(確かリズム装置のようなものだっと思うが)を開発したりと、新しい音楽素材の追求で印象に残っていたのだが、こんな音楽も書いていたのかと思わされた次第である。
このレコードは、それこそ大昔に見かけて買うかどうするかずいぶん迷ったあげく買わずにいたため、今日まで聞く機会がないままになっていたのだが、このナクソスのおかげで聞くことができた。CDも何年か前に出たことは知っていたし、出た頃にCDショップで(まだ何年か前は行ってたのだ…今となっては…うーん、行かなくなってしまったなぁ)見かけたのだが、やっぱり買わずにいた。
こんなことが記憶として蘇ってくるほど、気になっていたのだけれど、ついつい…である。

こうした考察をしてから夕食をとり、今、ヴェルディのレクイエムを聴き終えたところだ。先日ブリテンの「戦争レクイエム」を聞いて感動したヒコックスの指揮するロンドン交響楽団のもので1995年の録音。
合唱の出来は素晴らしい。オケが良いのは当たり前だから、わざわざここに書くこともないのだろうが、やはり書きたくなるほど良いから仕方ない。
独唱はまずまずと言ったところか。ロバート・ロイドのバスは良いし、マルケラ・ハッツィアーノのメゾも良い。怒りの日の中の「書き記されし書物は」と歌う部分での語り口は見事だ。もう少し余韻というか、意味深さを感じさせるものであれば(静かに語るというよりも大きな表情で歌い上げるという感じなので)前後の強烈なティンパニや金管の咆哮との対比が印象的となっただろうに。でもこれはただ重箱の隅を突っつくようなもので、魂のこもった良い演唱であることには間違いない。
ただ、リコルダーレあたりで音程がふらついたりするのはどうも…。またここではソプラノのヴィブラートが深すぎて、色気が出過ぎるように思う。もっと敬虔な歌い回しが欲しい。ここでは後半に至って次第に安定してくるようだが、はじめの辺りでちょっとヒヤヒヤしてしまった。
続く"Ingemisco"(我は嘆く)でのテノールは輝かしさに欠けるが、清潔な歌い回しで気に入った。
独唱者は全体に男声の方ができがよいが、やや小粒という印象である。
これに対して合唱の素晴らしさ、オケの素晴らしさは全く凄いというしかない。この大作をヒコックスは実によくまとめ上げていると思う。よろしければ一度お聞きになってみてはいかがでしょう?ためしに聞いてみたいなら、有名な怒りの日の冒頭よりもサンクトゥスあたりをお薦めします。
by Schweizer_Musik | 2007-04-01 21:22 | ナクソスのHPで聞いた録音
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