テルデックの二枚組。ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮ワシントン・ナショナル交響楽団の演奏だ。
「革命」から聞き始める。昔、この組み合わせで聞いたかすかな記憶がある。違っているかもしれない。それほど印象に残っていない。ベートーヴェンの「運命」は確実に聞いているのだが、金管が上手かったという印象がこちらにはある。 で、この「革命」だが、伝記などを読めばわかるように、もともとショスタコーヴィチと大変親しい間であるロストロポーヴィッチ の演奏であろから、大変権威のある演奏なのだろうが、私は表現が全体に微温的で、今ひとつだ。 私の理想的な演奏は、ベルナルト・ハイティンク指揮の全集に収められているもので、あの全集は私にとって画期的だった。バルシャイのブリリアント盤は安いという特徴はあるが、私はどうもこの曲に関してはあまり共感できなかった。 で、ロストロポーヴィッチの演奏に戻ろう。テンポ感は昔のアルトゥール・ロジンスキーみたいにもの凄いスピードで駆け抜けるというようなものではなく(ショスタコーヴィチもあれは望んでいないのではないだろうか?)、ハイティンクなどとほとんど変わらない。しかし、表情というか表現が甘い。声部の絡み合いも平板でアンサンブルも時々アインザッツの不明瞭さによる「出」のミスが聞かれる。それもユニゾンなので、これでは素人だ。 第2楽章は全体にメゾ・スタッカートが長いのでちょっと驚く。このような冒頭はこの演奏が初めてである。しかし、盛り上がらないこと甚だしい。権威ある演奏なのかも知れないが、面白くないものはやっぱり面白くない! 第3楽章も平板だ。こんな悲しい音楽をサラサラやられた日にゃー、やっとられんぜ!!で足早に終楽章に移る。冒頭のティンパニはなかなか必死の打撃でよろしい。この空しさが必要なのだ。その後の無理強いされているかのようなアチェレランド(私はこの曲に関する限り、ヴォルコフの本に強く影響されている…)の具合もよろしい。ただ、アンサンブルが雑。アチェレランドで速くなりすぎて崩壊の一歩前だ。これは指揮が良くないと思う。だから強制的な勝利の行進が、迫真のものにならない。 ロストロポーヴィッチの「革命」は気持ちが先走って、オケがコントロールできていないという印象。 では第10番を聞いてみる。オケはロンドン交響楽団になっている。バルトークの「弦・チェレ」のような開始が印象的なこの曲も、私には、ハイティンクの二種類の録音(正規の録音は一つだが)が基準となる。冒頭、ロストロポーヴィッチはちょっと不明瞭だ。オケがこの曲を理解出来ていないのではないかと思われる部分もいくつかある。大切なフレーズがきちんと提示されていなかったりするのは問題だ。第一楽章は特に平板になりやすいところがあるが、優れた指揮者、オーケストラならばそうした落とし穴にはまるようなことは決してない。しかし、どうもロストロポーヴィッチ氏とロンドン交響楽団ははまってしまったようだ。 この演奏におけるロンドン交響楽団は良くない。何しろオーケストラの奏者、特に管楽器奏者にソロを、それもごく薄い伴奏だけでやらせるのが好きなショスタコーヴィチである。この第10番でもそうしたプレッシャーのかかる部分は数限りなくある。で、そうした部分での奏者たちの不安げな演奏が、聞く者を冷静にしてしまっているのだ。 第1楽章からそうである。この第1楽章ってかなりの難物だと思うのだが、ロストロポーヴィッチ氏によるこの演奏はあまりにも変番で退屈な音楽になっている。 第2楽章の冒頭。どうすればこんなつまらなくやれるのかと思うほどだ。ロストロポーヴィッチ氏も、ロシアを出て世界一と言われるギャラをもらうようになって、こうした悲劇的な音楽がわからなくなってしまったのだろうか。権威はあっても、私にはこの演奏から得るものは何もなかった。第3楽章以降も同様・・・。もう書く必要はないだろう。 評価は無印・・・。ショスタコーヴィチの友人の演奏ということであるが、やはりつまらんものはつまらん! TELDEC/8573-85237-2
by Schweizer_Musik
| 2005-02-08 05:17
| CD試聴記
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