昨日はフランクという、こってりしたロマン派で過ごしたので、今日はスペインの作曲家バラダを聞きながら、ちょっとした原稿に手を入れる作業をしている。
バラダは1970年代にはある程度前衛的な技法を取り入れたスタイルで作品を書いていた。それは1976年作の4本のギターと管弦楽のための協奏曲でも明らかである。 しかし、前衛に対する大きな揺り戻しがあった1980年代を境に、バラダは作風をぐっとわかりやすいものへと舵を切ったようだ。 もちろん、1992年の「管弦楽のためのセレブラシオ」ではクラスター的な部分も聞かれるが、ジャズや平易な民族音楽の要素なども聞こえてきて、わかりやすく、すっきりしたオーケストレーションが特徴であるように思われる。 2001年に書かれたチェロ協奏曲第2番を聞いていると、こちらが気恥ずかしくなるような初期ニューオリンズ・ジャズの要素が鳴り響いたりする。 あの同時多発テロに対する交響曲第5番「アメリカン」という作品もあるし、「ゲルニカ」という作品などちょっと政治的な作品もあるようだ。ああいった時事的なテーマについて作曲するというのは、私は好まないので、今ひとつ印象も弱い。こうした戦争や大きな悲劇を主題とした作品で私が唯一深い感銘をうけたものは、原爆小景という合唱作品だけだ。あの阿鼻叫喚の描写はあまりに深く心に突き刺さってしまい、聞いた日は眠れなくなってしまったことを憶えている。 あの強烈な印象に比べると、この曲の描写性は浅く、つまらない。だから終楽章の明るさが偽物に聞こえてしまう。私にはああいった題材で音楽を書くなんてことは出来そうもない。
by Schweizer_Musik
| 2007-06-17 10:28
| 原稿書きの合間に
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