今週の授業の覚え書き
今週は夏休み明けということで、とても大変だった。ペースが変わるというのは、色んなバランスが変わるということなので、いい加減歳をとってしまった身体にはきつい一週間であった。
c0042908_1432585.jpg現代音楽の授業ではシェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」とバルトークの弦・チェレをとりあげた。
シェーンベルクは極端な半音階への依存による無調の書法について説明し、それで作ってみるという実習を行った。簡単な話なのでここで解説しておこう。欠席した学生たちは各自でやってみることをお薦めしたい。
シェーンベルクはその冒頭を次のような強烈なフレーズと響きで埋めている。左の譜例はその冒頭第1小節目を抜き出したものである。冒頭のトランペットの音は次のような音で出来ている。c0042908_14465174.jpgこの四つの音は実はFis-G-Asの3つの音からなる半音階をオクターブに拡大し、これにC音を加えたものであることが解る。
これを超高音域での長7度、そして超低音での長7度の厳しい不協和が彩るのである。これ以上はないというほどの不条理をこうした響きの厳しさ、鋭さによって表したシェーンベルクであるが、これは1910年代に新ウィーン楽派の作曲家たちが作っていた無調様式の作品の多くのやり方でもあった。

これは半音階を徹底して使い、調性を希薄にすることを目的として行う技術の一つである。この技術を使ったから良いとか悪いとかいう問題でないのは当然で、あくまで表現の手段の一つとして考えてほしい。

ではこれを実際にやってみよう。
半音階からなる3つの音をまず設定してみる。c0042908_1559534.jpgこの3つの音に一つ音を加えてオクターヴに広げてみよう。そうすると半音階のスケールだとは思われない。


c0042908_16152165.jpgこの単純な音のつらなりは、ただの音列に過ぎない。ここに命を与えるにはリズムを与えなくてはならない。リズムの変化を加えた動機をくり返しながら楽節に発展させよう。次々と思いつこうなどと思う必要はない。冒頭の着想をくり返せば良いのだ。ただくり返すだけでは単調だし、同じ音ばかりくり返すと調性感が生まれてくるので、常に変奏、変容してくり返す必要がある。
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こうして出来たメロディーに同じ半音階を転回させた長7度を主体とした伴奏を付け加えてみる。もちろんそれに4度音などを一つ加えて、響きに円さというか穏やかさを加えておいた。
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無調で音楽を作るという目的で書くことは、今の時代には全く意味をなさないものではある。だが、今から百年ほど昔、二十世紀の扉を開いたのがこうしたパイオニアたちであったことを再確認しておきたい。
こんな話を夏休み明けの最初の授業でとりあげた。
つづいて翌水曜日にはバルトークの弦・チェレの分析を行い、中心軸システムから音権分割、フィボナッチの数列などの話をした。久しぶりのバルトーク話であったので、かなり疲労する。
昨日は一日授業を終えて、試験の実施についての報告(こんな試験をしますというやつ)を行い、授業の報告書を出してから、学生とちょっと一杯飲みに行ってから帰った。かなり重い一週間であった。
by Schweizer_Musik | 2007-09-01 09:45 | 授業のための覚え書き
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