ミシェル・コルボ変遷
コルボが日本に来ているという。あのコルボも一昨年、リンパ節の腫瘍によって手術を受けるという大きな病気をしている。その後のフリブールの音楽祭でのマタイの演奏が危ぶまれたりもしたが、結果的に大変元気に振り抜いた彼は、我が国にも来て演奏会をすることとなった。
残念ながら、スケジュールがあわず聞けなかった私は、痛恨の極みだ。彼が古楽器の演奏法の影響を受けて、初期の幻想的な表現から1980年代、大きくスタイルを変えたことは、よく知られている。そして、その後どこに彼が行ったのか、聞いてみたかった。
70才を越えて、大病をしたコルボは、何を考え、何を感じるようになったのだろう。
あのベルン交響楽団を振って録音したフォーレのレクイエムの世界は、きっと今の彼の中にはないのではないか。あれは死へのあまりに感傷的な憧れだった。それ故に死が美しいものと聞こえたのだった。しかし、再録音はあまりに違っていた。厳しさはアクセントの明確さとともに鋭さを加えていた。ボーイ・ソプラノの無垢な響きは女性のソプラノになっていた。それが悪いというわけではない。彼の中で何が変化したのかを私たちがどう考えるか、どうとらえるかの問題なのだ。
歌劇「オルフェオ」や晩祷における新旧録音を比べると、別人かと思えるほどだった。新盤は総じてキビキビとして鋭いアクセントに彩られていた。
そんなコルボが大病をして復帰したという。体調は良いとのことだ。でも大きな病を乗り越えて彼がどう変わったのだろう。それは大変興味あることである。
どこか、実況録音でもして流してくれないかな・・・。
by Schweizer_Musik | 2005-02-17 20:20 | 音楽時事
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