クルト・ザンデルリンクの指揮したブラームスのピアノ協奏曲第1番
昨日は、午後から用があって出かけ、午後四時からyurikamomeさんの飲みはじめ、音楽について色々と放言したあげく、九時半を回る頃まで飲み続けるという、昔、広島に住んでいた時代のようなことをやらかし、帰ってからその興奮からかなかなか寝付かれず、寝たのは12時頃になってからであった。
おかげで今朝は八時頃になって起きるという大寝坊をし、もう毒食わば皿までの心境で、iTuneでダウンロードしたグリモーの弾くブラームスの第1番のコンチェルトを聞く。
指揮はクルト・ザンデルリンクで、オケはベルリン・シュターツカペレである。
これが素晴らしい演奏で、聞き始めてしばらくして夢中になった。
実はこの曲。私は大の苦手で、何故かすぐに退屈してしまい、コンサートなどでは必ず熟睡してしまうのが常で、CDでもラドゥ・ルプーの演奏やいくつか(数えてみたら15種類ほど)聞いているのだが、気に入ったものがないという状態だった。
グリモーのピアノはいつものようにきれいなタッチで気に入ったのだが、私がいつもこの曲に感じている不満はオーケストラにあったので、このクルト・ザンデルリンクの指揮は耳を洗われるようで、なるほどこういうことだったのかと、この曲が好きになってしまった。
大体、色々と重ねているから、ポリフォニックに絡み合っている音楽のラインがワケが分からなくなっている演奏が多いのも一つで、更にセルなどのように筋肉質のオケのサウンドを作るのか、モヤッとしたロマンチックな側面に合わせるか、どちらかに解釈が揺れる傾向にあるのも、曲の内容を絞りきれなかった所以ではないかと考えている。
こうしたところを見事に整理して聞かせてくれたのがこのクルト・ザンデルリンクである。
私にとっての難所であった第1楽章が、こんなに魅力的な音楽だったとは…。オケにピアノが埋没することなく(これが多い…)、オケは実に注意深くバランスをとっている。
こんなことをしなくても済むようにブラームスが書いていればなんということは無いのだが、ピアノに対して分厚すぎるオケを、音楽的な耳を持つ指揮者がこんなに見事に聞かせてくれると、苦手意識も一気に吹っ飛んだ。
第2楽章に今入ったところ。これがもともと交響曲にしようとして、最後にピアノ協奏曲に化けたという話がよくわかる。この楽章の冒頭の音楽は後に色々なブラームスの楽曲に転用されたもので、いかにもブラームスという感じの音楽で、ここは以前から好きで、ルプーのピアノなど愛好していたのであるが、オケが私には今ひとつで(というより、オケの各声部の分離がよくないこともある。指揮が悪いのではなく、この曲を録音するのに、当時はまだそれほど環境が良くなかったということなのだろう)あった。
グリモーのピアノはとてもきれいだが、この曲のソロに関する限り、私にはラドゥ・ルプーの演奏に勝るものは知らない。敢えて言えばクラウディオ・アラウであろうか…。
グリモーも美しいのだが、しみじみとした情感を表出しきれていないように思われる。
終楽章もソロに関してはラドゥ・ルプーの演奏の方に一日の長があると思われるものの、オケははるかにこちらが上である。
ラドゥ・ルプーのピアノでクルト・ザンデルリンクの指揮だったら…などと考えてみたりしているのだが…。今となっては永遠に無理な話だ。どこかに放送録音ででも残っていないものだろうか?
iTuneストアで800円。他にリヒャルト・シュトラウスのブルレスケが同じグリモーのピアノ、ディヴィッド・ジンマン指揮ベルリン・ドイツ交響楽団の演奏で入っている。これはまあまあ…。
by Schweizer_Musik | 2008-02-17 10:57 | CD試聴記
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