今年度の最後の授業の記録
水曜日は今年度の最後の授業であった。最後にとりあげたのは松下眞一の「七楽器のためのフレスク・ソノール」であった。
松下眞一などと言っても、最近はあまり取り上げられないので、知らない方も多いかも知れないが、私のように関西で勉強した者にとっては、一種のあこがれのようなものを持っていた作曲家であり、何度も何度も聞き、スコアを調べたこの作品は、学生時代の思い出が染み込んでいる。
作曲家であり世界的な数学者でもあった松下眞一氏は、ヨーロッパでこそ高く評価された作曲家であった。
1964年に書かれたこの作品は、主題と8つの変奏となっている。フルートとオーボエ、クラリネット、ホルンの4本の管楽器とハープ、そしてヴィオラとチェロという極めて限定された編成であるけれど、これでオーケストラのような効果をあげている点で目覚ましい作品であると言えよう。
拍子感はなく、音そのものの素材を提示し、その音を様々に展開させることで各変奏を作っている。
テーマはフルートのソロによるヴィブラートを伴うロングトーンと細かいリズムによる幅広い音程によるアルペジオの対比によって提示される。これに後半、チェロのトレモロのロングトーンが絡んでいく。続いて、ノン・ヴィブラートのフルートのロングトーンが4度上で提示され、大きなディナーミクの変化が伴って提示される。
これがテーマである。
第1変奏はロングトーンをトリルに発展され、オーボエとクラリネットに移る。ハープとチェロのアルペジオが響きに彩りを加え、ヴィオラにノン・ヴィブラートのロングトーンが置かれ、それにグリッサンドが加わって始まる。
されにチェロに二度のグリッサンドが加わり、ここにハープの即興的なグリッサンドが出てきて盛り上げる。
変奏の後半は、幅広い音程の跳躍が、木管三本でカノン風に演奏され、これにハープが絡んでいく。
ロングトーンと幅広い跳躍の対立が基盤となって展開している。
第2変奏は再びフルートにテーマが戻り、ハープを除く他の楽器がロングトーンを担当する。フルートのの幅広い音程の跳躍は変化を伴い、後半にはリズム・カノンが加えられる。
第3変奏は弦が幅広い跳躍進行を担当するのだが、これに様々な奏法を要求していて、ペンデレツキの弦楽四重奏の影響が聞かれると私は考えている。
ハープがこれに絡み、所々に木管のロングトーンが聞かれ、ペンデレツキのように厳しい響きの連続とは一線を画している。
次第にロングトーンが同音反復のリズミックな変奏に置き換えられ、最も充実したこの作品の中でも白眉とも言えるページとなっている。
続く第4変奏は、オーボエに跳躍が置かれ、その他はロングトーンを演奏するようになっている。ロングトーンはトリルから細かな狭い音程を蠢くパッセージに置き換えられ、木管全員のアルペジオで閉じられ、フルートのロングトーンが残って第5変奏へと移る。
第5変奏弦の下降グリッサンドが一秒ずつずれてヴィオラ→チェロ、ヴィオラ→チェロ、ヴィオラ→チェロと演奏され印象的。この上にフルートのテーマが再現されるので、楽曲全体の中でも再現部に移ったと言っても良いだろう。再び、第3変奏の再現のような弦の跳躍が聞かれ、木管にロングトーンが置かれる。
そして第6変奏は全体のクライマックスで実にダイナミックな変奏となる。そのはじまりは、ハープのクラスターと弦のフラジオのままでのグリッサンドなどの特徴的なサウンドで、これにクラリネットの低音でのポルタメントが絡みフルートが続く。そしてロングトーンが様々な音域、音程に置かれ、ハープのグリッサンド、クラスターが彩りを添え、後半は同音反復の変奏を全員が行い、ホルンのゲシュトップがそこに割ってはいる。
第7変奏は、コーダへの推移のような役割を持ち、静かなロングトーンの響きの変化をが描かれ、第8変奏で再現と変奏が最初のテーマと反対の順序で出てきて終わる。
見事な作品である。
聴講生のW君(留学生)が昔この松下氏に数学を教わったそうで(お互い年齢については言わないでおこう)良い記念にもなったのではないだろうか。
しかし、松下眞一の作品のCD化は代表作の「シンフォニア・サンガ」だけというのはあまりにも寂しいし、日本のレーベルの努力不足と言われても仕方がないのではないか。ビクターなどにかなりの音源が残っているはずで、がんばってほしいものである。

さて、一年の締めくくりは来週末の金曜日。今日もまた実技の試験で出かけなくてはならない。その間にいくつかの編曲も行う必要があり、年度末はいつもながら忙しいのである。
by Schweizer_Musik | 2008-02-22 09:49 | 授業のための覚え書き
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