ザンデルリンク指揮ドレスデン・シュターツカペレの1973年の来日公演のライブで、モーツァルトのハフナー交響曲とベートーヴェンの交響曲第8番のCDが届いたので聞いてみた。
私はドレスデン・シュターツカペレの1970年代の演奏は、ウィーン・フィル以上に古風で味わい深く、また美しいサウンドを持っていたと考えているが、その最盛期のオケを、東側で主に活躍していたザンデルリンクが指揮している。 想像するだけで良い演奏が鳴り響いてきそうなのだが、果たしてその期待は裏切られることなく、夢のように美しいモーツァルト、第8番にしてはとてつもないスケールの演奏が聞かれるのだ。 ハフナーの第1楽章からその濡れるような弦の美しい響きに魅了される。今の神奈川フィルのようだ…。世界中のどのオケからこんな音が聞かれるだろうか?1970年代から1980年代はじめにかけてのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、1960年代のベルリン・フィルくらいではなかったか? ハフナーの第2楽章を聞いて、完全に打ちのめされてしまった。神経質なところは全くなく、大雑把のようでいて実は細心の注意で小さなフレーズから大きなフレーズまで演奏し、それをたっぷりとしたブレスで歌い上げているのだ。 このザンデルリンクの指揮したドレスデン・シュターツカペレの演奏するハフナーは今までのどの演奏よりも素晴らしい!ありきたりの言葉しか出てこない…。3楽章あたりでもう完全に夢見心地で、終楽章で、青臭い強弱の対比を強調するなどということとは全く無縁の優雅でかつ清々しい空気をサッと漂わせて絶美の音楽は終わる。 あまりに美しいその演奏に、もう一度とCDプレーヤーにアンコールをお願いした。 で、二度目も夢見心地となったところで、ベートーヴェンの第8番を聞く。 これはとんでもないスケールである。全集でのフィルハーモニア管との演奏は、フレーズの隅々まできちんと仕上げたという印象で、あれはあれで名演であった。が、こちらは天下の名器、ドレスデン・シュターツカペレである。細かなミスはあるけれど、音楽を呼吸し歌い上げるという姿勢で、このライブ感覚にはスタジオ録音はかなわない。録音がいささかライブの方が分が悪いという程度である。 音の品位というか、音楽の品位がその辺の古楽器演奏家たちに聞かせてやりたいほどの高さであり、クオリティだ。 フルートも上手いし、ホルンも出しゃばらず、それでいて勘所をしっかりと押さえた演奏に、一流のオケ・マンの姿を聞く思いだ。 第1楽章から終楽章まで、ベートーヴェンが散りばめたアイデアの全ては、こういう品性の演奏からこそ味わえる。今まで一番だったハフナーのブルーノ・ワルターとベートーヴェンのシュミット=イッセルシュテットの録音はこれで私の中での一位の座を明け渡すこととなった。私のこれからのこの2曲の基準となる演奏と出会えたと思う。 タワー・レコードで、これらの録音がたった1000円で出ている。これはみなさん「買い」ですよ! TDK-OC008 追記 最近、神奈川フィルの演奏会で何度も感動しているからか、ついつい褒めすぎる傾向がうり自重しなくてはと思うのですが…。またウィーン・フィルやドレスデン・シュターツカペレ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と比べて褒めてしまった。 しかし、今の神奈川フィルはそれほど良いオケなんですよ!聞いた人は皆信じてくれるのだけれど、昔の荒っぽい演奏しか知らない人は、全く受け付けてくれないのが寂しい…。 (フェイヴァリット会員になりたての独り言です…)
by Schweizer_Musik
| 2008-02-24 10:59
| CD試聴記
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