ショーロとは、ブラジルの民俗的素材に基づくセレナードのような意味だそうで、ピアノのソロもあれば合唱曲もあるし、この第11番のようにピアノ協奏曲のスタイルの作品もある。
稀に授業で、第4番のホルンとトロンボーンの作品をとりあげたりしていたけれど、金管が一年のシラバスに入っていて、私の担当している二年生のシラバスから外してしまったことから、この二年ほどはとりあげていない。 実はこの編成が様々でありすぎることもネックとなり、ショーロはまとめてCD化されにくいようだ。 私は、そう集めてきたというわけではないのでまだ第3番と第12番以降のショーロを聞いたことがない(全部で14曲あり、他にナンバリングされていないショーロが2曲ほどある)。 いずれも1920年代の作品で、第1番と第2番を除けば、パリ時代の作品ということになるのだが、民族的な素材を意識的に使うヴィラ=ロボスはこの後1930年代に入ってブラジル風バッハで民族性と新古典主義を合わせた新しい道を模索することとなるが、彼の作風が、無調などの近代技法に満たされることはついぞなかった。 ショーロ第11番を聞きながら思ったのは、意外にもストラヴィンスキーの影響である。ピアノとオーケストラのための作品ということもあるのだろうが、「ペトルーシュカ」の影響を強く感じながら聞いた。 「春の祭典」のようなリズムの面白さよりも、ちょっとした複調による響きの新しさは感じるものの、せいぜい11の和音あたりで、響きは基本的に古典的なのに、音楽は極めて強い民族性というか(私はブラジル人の民族文化をあまり理解していないから、ただ何となくの範囲を逃れられないが)エキゾチシズムに満たされている。 昔聞いていたヴィラ=ロボスの指揮したものは、モノラル録音ということもあるだろうが、よくわからなかったところが多かった。 しかし、このオルティス(彼女はピアノ協奏曲全集も録音している!)とジョン・ネシュリング指揮サンパウロ交響楽団の録音は誠に素晴らしい。金管が何をしているのか、木管が何をしているのかがよくわかり、今後はこの一枚を持っていれば、自演盤は参考程度でよくなったと言って過言ではない。 しかし、この11番はなんという作品であろうか。ピアノ協奏曲の形をとる作品で1時間を超える大作で、こんな曲はブゾーニの合唱付きの協奏曲ぐらいしか私は知らない。 ピアノはペトルーシュカのような限定的な使い方ではなく、堂々たる協奏曲であり、かなりのテクニックを要する難曲である。 彼が新古典主義的、簡潔さと独特の形式美を獲得する以前の作品ではあるが、この途方もないスケールは強力な説得力を持っている。 更に、オルティスとジョン・ネシュリング指揮サンパウロ交響楽団の演奏の見事さも特筆大書しておく必要がある。ブラジルのオケなんて二流でしょと、偏見なんて持たないで一度聞いて欲しい。なかなか元気の良い演奏で、ラテンの血を感じさせるが、物の分かったような顔した、まじめくさった演奏などを権威で武装して聞かされることを思えば、この血の通った演奏には感動させられる。 ナクソス・ミュージック・ライブラリーに最近加わった一枚。ぜひ近代音楽ファンの方は御一聴を!
by Schweizer_Musik
| 2008-03-07 05:15
| ナクソスのHPで聞いた録音
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