下手な指揮…でも必要なこと
私はオーケストレーションの授業では昔から作った本人に指揮をさせている。
そんなことを授業で教えていないので、大体学生は意表を突かれたように「できない」とわめく…。いつかもそうして一年それを拒否し続けた学生がいた。でも、それでは上達しないし、大体自分のスコアの精度も劣ったままだ。
作曲と指揮はあんまり関係なさそうだが、実はそうではない。指揮をすることで自分の音楽はこうだと相手(演奏家)にどう伝えるのかを知る機会になるからだ。
別の人(リハーサルに慣れた人)が音だしを仕切ると簡単だ。私がやった方が簡単で時間も短縮できる。だが、それでは作った本人がスコアに対して責任も何も感じない。

ずいぶん古い話だが、教え始めた時にある学生がサックス四重奏のスコアを書いてきた時、それにスラーもディナーミクもちゃんと書いていないし、パート譜はミスだらけで、「こんなのでは音に出来ない」と指摘した私に「プロならそのくらいできるはずだ」と言い返した。
私はあきれて言葉を失った。プライドだけはものすごく持っていた彼は、無理な言い訳をしただけなのだろうが、スコアに責任を持たない者ならではの苦しすぎる言い訳である。「プロならばなんでもできる」なんて笑い話であるが…。

スコアはリハーサルをスムーズに行われるように書かれなくてはならない。リハーサル番号を書くのは当然としても、テンポの表示、スラーによってタンギング、あるいはボウイングの指示を明確にし、ディナーミクを丁寧に書くことで、一々こうしろああしろと言わなくても良いようにスコアを書くこと。
リハーサル番号を書くのは、リハーサルでどうやるかを想像することで書けるわけで、そうした手順を理解していないと書けないのだ。
プロが書くスコアはこうしたものである。この程度でわかってくれるだろうなどということは「プロにあるまじき行為」なのである。

作曲家はスコアを書けば、後は誰かに任せるなどというのは間違いだということがこれでわかる。私はたかだ木管五重奏で、実は指揮などは必要のない編成でもこれをやりつづけることにしようと思う。
しかし、昔よりもテンポの出し方、中学で習っているはずの拍子の取り方(振り方)を知らない学生が増えているように思う。困ったものであるが、まぁ簡単な「たたき」くらいは教えてあげられるので、今年もそれで乗り切ろうと思っている。
指揮者になるのではないので、下手なままでも良いのだけれど、学生の間に最低のアンサンブルのルールと手順を憶えてほしいものだ。
1〜2分の試作品のリハーサルの音だしに、スコアのミスを直したり、ディナーミクの指示をしたり、タンギング、ボウイングの指示をしたりして10分以上かかるようでは、仕事にならないのだから。
by Schweizer_Musik | 2008-05-11 09:33 | 授業のための覚え書き
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