現代音楽の授業ではバーバーの弦楽のためのアダージョ、コープランドのクラリネット協奏曲の前半をとりあげ、二十世紀の音楽における三和音の接続について説明する。
モーツァルトやベートーヴェンの時代ではあり得なかった三度の循環、あるいは二度進行の接続についてである。 やっと三和音についての基礎的な説明が終わり、次回は7の和音と9の和音である。和声法では絶対にあり得ない進行、たとえばニ短調の音階にニ短調以外の和音でハーモナイズすることで得られる新しい響きについて説明。 バーバーのアダージョはシッパース指揮ニューヨーク・フィルハーモニックの録音を使う。またシクスティーンの合唱での演奏と原作の弦楽四重奏曲の第2楽章もデューク四重奏団による演奏で聞かせたが、あくまで参考までである。 Ebm7 - F7 - Gb - Ab などとの進行を例に挙げ、こうした二度進行のハーモナイズによってこの作品が一度も主和音を使われないという特殊な楽曲であることを説明。 このベタベタの音楽と同じ和音進行を、コープランドがやるとどうなるか。 それがクラリネット協奏曲の前半に聞かれる。スコアを見せて、その響きを聞かせた。 続くコンクール狙いの授業ではバルトークの弦楽四重奏曲第4番をとりあげる。スコアを先日ダブって買ってしまったので、学生にポケット・スコアであるがあげてしまう。まぁ、それで勉強してくれればいいのだ。それにしても3600円ほどのスコア。あっ資料室に寄付した方がよかったか? 簡単にスコアを分析し、面白い楽器法、技法、あるいは独特の構成法を説明しながら全楽章を聞いて簡単なディスカッションをしただけだが、濃密な作品で1時間半があっという間に過ぎていった。 半音階の不協和音程の厳しい響きとバルトーク・ピチカート、あるいはスル・ポンティチェロなどの奏法の工夫、特にダブル・ストップの使い方の鮮やかさが面白かった。 演奏はアマティ四重奏団のものを使う。ナクソスにあるものである。目も覚める名演とはこのことではないだろうか?迫力ある名演である。 これが終わってから個人レッスンを三名ほどして一日が終わった。 日が長くなった。帰りの水道橋の交差点で撮った一枚が上の写真。右の高いビルは東京ドームホテル。黄昏の優しい光が無機質なビルの風景を抒情的にしているようだ。
by Schweizer_Musik
| 2008-05-21 20:57
| 授業のための覚え書き
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