オネゲル/クリスマス・カンタータ ****(推薦)
オネゲルのクリスマス・カンタータは、彼の作品の中でも私が愛してやまない作品である。一九五三年の一月、親友のザッヒャーの委嘱によって書き上げられたこの作品は、有名なコラールのメロディーが高らかにクライマックスで響き渡り、受難向こうに清浄な天使の歌声と降誕が歌い上げられる。名オルガニストのマルセル・デュプレが初演のオルガン・パートをぜひ弾かせてほしい言って、この巨匠が参加しての初演は、会場中が感動の渦に巻き込まれたという。デュプレは感動のあまり涙が止まらなかったと伝えられるが、確かに今聞いてもこの作品の持つ力は永遠のものだという気がしてならない。
20世紀に書かれた文句なしの傑作であろう。私の無人島の一枚の一つでもある。この音楽が無人島での孤独をどれだけ慰めてくれることだろう。
さて、このCDであるが、マルティン・ネアリー指揮のウィンチェスター大聖堂合唱団他による演奏は丁寧でとても美しい。(実は音楽が素晴らしいために、少々の演奏でも十分感動してしまう嫌いがなきにしもあらずだが・・・。
このCDをどうして手に入れたかどうか憶えていないが、この演奏とペシェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団他の演奏で私は持っているだけだ。他が目に付けば買っているはずだが、まぁ、この二枚で満足してしまっていることも理由の一つだ。
「バラの花の出現」での少年合唱の清らかなこと!!。クリスマスを心から穏やかに優しく祝う音楽だ。このあたりからどんどん音楽は清らかに天上の世界を目指し始める。「いと高きところから神の使者は来る」と歌うと「おお幸福なる者、賛美される者!」の合唱の中によく知られたクリスマス・キャロルが響き、クリスマス気分をどんどん盛り上げていく。やがてバッハの有名な「目覚めよと呼ばわる声がする」の中で使われたニコライのコラールがトランペットに高らかに響き渡り「おお、全ての異教徒も主を賛美する」と歌うそれは、キリスト教徒ならずとも感動的な瞬間である。
バリトン独唱はドナルド・スウェーニー。特に不満はない。オルガンはティモシー・ビィラム=ウィグフィールドである。マルセル・デュプレほどではないのかも知れないが、私は十分に感動して聞いている。オーケストラはイギリス室内管弦楽団。演奏はまずまず、でもこの音楽の魅力は多少の不備をも乗り越えてしまう素晴らしさだ。ぜひ一聴されることをお薦めしたい。

他にプーランクのミサ曲とクリスマスの4つのモテットも入っている。無伴奏の合唱曲でこれまた名曲である。ただ、これらの作品についてはもっと良い演奏が可能だろう。マルティン・ネアリー指揮ウィンチェスター大聖堂合唱団は出来としてはまずまずで、敬虔な雰囲気もあるが。
ごめんなさい、私はオネゲルの魅力に完全にいかれてしまっているようだ。

EMI/7243 5 66118 2 5
by Schweizer_Musik | 2005-02-28 07:16 | CD試聴記
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