食欲の秋だ!…音楽を聞こう -17. ピアソラのギターとバンドネオンのための協奏曲
作曲者 : PIAZZOLLA, Astor 1921-1992 アルゼンチン
曲名  : ギターとバンドネオンのための協奏曲「リェージュのために」(1985)
演奏者 : カチョ・ティラオ(g),アストル・ピアソラ(bandoneon),レオ・ブローウェル指揮リェージュ・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : KING_K32Y 2035
食欲の秋だ!…音楽を聞こう -17. ピアソラのギターとバンドネオンのための協奏曲_c0042908_5175969.jpg
リェージュのギター・フェスティヴァルのためにピアソラが書いたこの曲には、随分多くの録音が存在する。ナクソスにも選り取り見取りであるので、関心のある方はどうぞ…。
ピアソラが自身で書いたオーケストラ作品は、初期にはシンフォニエッタなどの作品を書いているけれど、モダン・タンゴの音楽家として地位を確立してからはそう多くないという事情もあってか、この作品は人気があるようだ。
序奏〜ミロンガ〜タンゴという3つの楽章がゆったりとしたテンポでのギターとバンドネオンのダイアローグのようなカデンツァの序奏から始まって、オケが加わるミロンガでリズムというかテンポが決まり、リズムが動き始め、最後のタンゴで盛り上がって終わるというもの。
ギターはさすがに見事な扱いで、初演が大成功だったことは想像に難くないが、バンドネオンを入れたことで表現の幅が大変大きくなっていて自由度が増しているあたり、ピアソラのセンスの良さを感じる。
更に、この曲でのオーケストレーションも…。ギターとオケはとてつもなく難しい代物である。私もまだやったことがないけれど、この曲でのピアソラもかなり気を遣って編曲をしているように思われる。

哀愁というより、見かけの甘さの裏に、もの凄い深淵が潜んでいるのがピアソラだ。恐ろしいほどの暗さ…。でも甘い響きと弾むリズムにうまくオブラートされて、私たちは絶望せずに彼の音楽を楽しむことが出来る…。
このピアソラ自身がバンドネオンを担当した録音はiTuneでも購入可能である。デュトワが名手ビネリと組んで録音したものもあるけれど、バンドネオンは良いのだけれど、デュトワがあまりに冷静に過ぎて、オケの響きの良さ、録音の良さはあるものの、私は不満だった…。
カチョ・ティラオというギター奏者がどういう人かは知らないが、私にはこの演奏の持つ不完全さ故の熱さのようなものが、かけがえのないものに感じるのだ。
ピアソラのバンドネオンのクールな熱さ(変な言葉だ!)、キューバの作曲家にして指揮者、ギター奏者のレオ・ブローウェルについて、今更私が語る必要もないだろう。

写真はまたまたバーゼル駅の朝の雑踏である。人混みと言っても東京あたりの朝のラッシュとは随分違うなぁと思うけれど、いかが?
録音は確か初演の時のもので、拍手入り…。ブラボーが飛んでいる。
by Schweizer_Musik | 2008-09-22 05:19 | 食欲の秋だ!…音楽を聞こう
<< グールドの皇帝を見る 食欲の秋だ!…音楽を聞こう -... >>