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ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」
第1部
この曲でドビュッシーは20世紀の扉を開いたのでした。
冒頭のフルートの半音階的なテーマは、夢のようにふわりと響きます。伴奏もなく、ただフルート一本に託したこのメロディーはホ長調で書かれながらも、嬰ハ音からト音へと半音と全音を経て増4度の音程を舞い降り、そしてゆったりと舞い上がると、明らかなホ長調の部分を経て属調へと落ち着きます。
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すでに通常の調性は極限までに拡大され、古典的な調性感は火星の大気のごとく希薄になり、存在を主張していません。
ホルンの少し大きなため息がこのフルートに答えます。ためらいがちに、大きなゲネラル・パウゼを伴って。
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ホルンは遠隔調の和音の上をさまよい、夢幻的な雰囲気を醸し出しています。ハーモニーはその連続性を失っています。このメロディーは先のフルートのソロの裏返しで、ホ音からはじまり変ロ音まで舞い上がるという構造を持っています。この増4度がこの曲の核心であるようですね。
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こうしてテーマが何から出来ているかが、私たちの心に印象づけられ、さらにそれを深めようとテーマが繰り返されます。
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この繰り返しはメロディーはもとのままなのですが、弦によるコードがついていて、それがニ長調の和音というのは、面白いものです。確かに冒頭のメロディーは調性的に何とでも解釈できるものです。そしてこの後ろに、興味深いオーボエのメロディーが続きます。
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このメロディーは次の音程から出来ていますね。
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そしてまたテーマが繰り返されます。ここではメロディーにちょっとした変奏が加えられていますが、単に装飾的なものにすぎません。が、なんて効果的なのでしょうか。ドビュッシーは本当にフルートをよく知っているものです。
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ドビュッシーはここではじめてホ長調でテーマを伴奏し、この2小節のテーマの前半に対して後半を省略して前半のメロディーを三度下げて繰り返し、更にこの形を繰り返し、次第に盛り上げていきます。
こうしてこのメロディーは聞く者の心深く、印象づけられるのです。
このドビュッシーの作品は1892年の作曲ですが、ここから次の部分にいく途中に半音階と全音音階の並置という興味深い部分が続きます。
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この部分、ワーグナーの「トリスタンとイゾルテ」の遠いエコーを聞くというのは、私の考えすぎでしょうか?
考えてみれば、彼の「ペレアスとメリザンド」もこの「トリスタンとイゾルテ」のドビュッシー流の解釈であると言えなくもないでしょうし・・・。
さて、この二重の意味で興味深い瞬間を経て、第2部に音楽は移ります。
by Schweizer_Musik | 2005-06-30 19:10 | 授業のための覚え書き
オネゲル/交響的詩篇「ダビデ王」
このオネゲルの出世作は、ヨーロッパでも人気の作品で、今も頻繁にとりあげられる作品ですが、残念ながら我が国ではあまり聞く機会の無い作品で在り続けています。私にとってもそうですが、聖書の物語によるものというだけでなく、言葉の壁が原因ではないでしょうか。また 1921年の初演時のバージョンである第一版の交響的詩篇は17人編成のオーケストラと語り手、合唱と歌い手のために作られたのですが、好評ゆえに更に多くの上演の機会をということで1923年には通常のオーケストラで演奏されるようにと第2版が作られています。
通常はこの第2版の方がとりあげられることが多く、初演の時に好評のわりには、特殊な編成に対して上演の困難さがあったものと思われます。
現在ではこの第一版の録音はデュトワ指揮で聞くことができますが、新しい録音は私は知りません。デュトワは当時まだベルン交響楽団の指揮者をしていた1971年にパリでこの録音を行ったのでした。アンサンブルにはピエール・ピエルロ(ob)、ポール・オンニュ(fg)、ジョルジュ・バルボトゥー(hrn)、ジャック・ルヴィエ(pf)といった名手が参加している上にフィリップ・カイヤール合唱団やエリック・タピー(ten)などの歌が素晴らしいものです。(ERATO)

オラトリオ版ではアンセルメとボードが名盤とされていますが、アンセルメ版の歌の出来が著しく悪く、合唱・独唱共に、録音して残すレベルに達していません。オーケストラの出来、録音は最高なのですが・・・。この演奏とフォーレのレクイエムはアンセルメの声楽に対するセンスを疑うところまで酷いレベル。
しかし、ボードの録音はオーケストラ、独唱陣、合唱、語り(フランス語がわからないので、本当にこれがいいのかどうかはわからないが・・・)全てにおいて名盤と言ってよいのではないでしょうか。ただ、オーケストラがバランスが良すぎて、スコアの特徴が少し相殺されているように思います。アンセルメのはそうした不満はないのですが、あの歌では聞く気になりません・・・。なんで素人を使ったんだろう?(プロとはとても思えない!!)
by Schweizer_Musik | 2005-06-30 12:46 | 原稿書きの合間に
シベリウスの交響曲第6番について思うこと
シベリウスの交響曲第6番はあまりにも美しい作品で、まだ高校一年生の生意気盛りで初めて聞いた時には、唖然としてしまったものです。
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これはドーリア旋法で書かれているのですが、ドーリア旋法についてラヴェルのピアノ三重奏とあわせてこの曲を以前に例にあげたことがあります。
実際、ドーリア旋法は意外に多く使われており、私も作曲の際に比較的よく利用していました。(昔の話ですが・・・)
多少ドーリア旋法に手を加えて使うことが多いのですが、この曲のドーリア旋法の音階を次にあげておきます。c0042908_2331496.jpgなんてラヴェルと違うのでしょう。同じ音階を使っているとは思えないほどです。これはフィンランドの民謡の音階を使っているからという意見もあります。確かにそうかも知れませんが、それがドーリア旋法とどういう関係にあるのかと私にはわかりません。しかし、同じ音組織でありながら、極めてユニークな響きを作り出していることは間違いないでしょう。
厳格なドーリア旋法ではなく、続く部分ではファの音に♯がつけられて、瞬間的ですが、ミクソリディアかと錯覚をおこさせて、すっと戻ります。これは拡大されて繰り返されるのですが、この続く部分を少しあげておきます。

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ついでですので、D音を根音とするミクソリディア旋法のスケールもあげておきます。c0042908_7371855.jpg



このちょっとミクソリディアのような、ピカルディーの終止のようなところを過ぎると、オーボエにスケールが出てきて、フルートに新しい動機が出現します。フルートとオーボエの部分をあげておきましょう。
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この美しいメロディーは、冒頭のフレーズから導き出されたものです。
まず、c0042908_8171118.jpgというフルートのメロディーは最初のメロディーの4小節目の



c0042908_8181166.jpgというメロディーを反行形にしたものであり、つづく



c0042908_8184929.jpgというメロディーは冒頭の



c0042908_8193717.jpgというメロディーから導き出されたと考えられます。



続く部分は、この動機を中心にしばらく展開し、新しい部分に入ります。

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ここからテンポは変わっていないのですが、音符が細かくなったのでAllegroになったように思ってしまいそうです。リディア旋法になっていますが、これはドーリア旋法と平行調の関係とも言える旋法で、第2テーマと考えてもよいかも知れません。ここから明らかに音楽は生き生きと活発になっていきます。
テーマは冒頭から基音がC音からB音、As音へと変化していく転調を内包したものです。そして、この新しいテーマにより第1楽章は発展していきます。

この音楽をはじめて聞いたのは、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団のものでした。モノラル録音を擬似ステレオにしたものでしたが、そんなことはともかく、なんとも美しい音楽がゆったりとした時間を漂うように流れていくのに、私は息を呑んだのでした。
今なら、ネーメ・ヤルヴィがエーテボリ交響楽団と録音したものか、クルト・ザンデルリンクがベルリン交響楽団と録音したものが特に好んでいます。私が尊敬する渡邊曉雄氏(一度だけお会いしてお話をさせていただいたことがあるのですが、本当に紳士でやさしい方でした!!)の2度目の録音を聞くのが好きです。カラヤンの新しい録音はちょっと色っぽいところがあり、曲の厳しい世界に良い味付けになっていて、初めての人にはいいかも知れません。もちろん、エールリンクやコリンズの古い録音、あるいはデイヴィスやベルグルンドの楷書風の演奏も捨てがたいものがありますし、ウラディーミル・アシュケナージやロリン・マゼールの全集も・・・。ああ、また節操がなくなってしまう。
いずれにせよ、この作品は愛聴する一曲であり、もっと聞かれるべき素晴らしい名品なのですが、いかがお考えでしょうか?
by Schweizer_Musik | 2005-06-30 10:05 | 授業のための覚え書き
グローフェ/「グランド・キャニオン」他ナクソス ***(注目)
学校に出かける前に、ちょっと一枚・・・。
グローフェの「グランド・キャニオン」を含むナクソス盤を聞いていた。
この曲は、昔々、アーサー・フィードラー指揮で聞き込んだ曲である。あれは良い演奏だった。その後、CD時代に入るとドラティの名盤が出てきて、もう決定盤はこれだと決め込んでいた。あの演奏も良いものだった。他にもLP時代に聞いて良い印象を持っているのはバーンスタインとニューヨーク・フィルのエネルギッシュな演奏とオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の演奏。そしてちょっと古いレナード・スラトキンとハリウッド・ボウルだったと思うけれどこれらは良かった。
また、作曲者の自作自演というのも出ていたが、これは作曲者の名誉になるものではなかった。彼は指揮者ではないようだ。
で、このナクソス盤はそれらの演奏に比べても存在感を主張できるほどの演奏かどうかという点であるが、大体において大人しい演奏で、それほどでもないというのが私の印象である。なんとかまとまった演奏で、破綻はないが、もう少し羽目を外した面白さや、ドラティ盤やオーマンディ盤のようなハンガリー勢の精緻極まる音楽的なアンサンブルを聴かせるならわかるが、そこまでは遙かに至っていない。
ボーンマス交響楽団はこの曲を演奏するのには全く不足はなく、腕はたしかだ。それほど難しい曲ではないから当然と言えば当然なのだが。

私はこのCDを買った理由は「ミシシッピ組曲(音の旅)」が入っているからだ。
昔どこかのテレビ局でやっていたアメリカ大陸横断クイズのテーマに使われていた曲で、聞いたら「ああ、あの曲」と皆が思うはずのメロディーが出てくる。この曲は実はグローフェの出世作で、1926年の作。だから「グランド・キャニオン」の五年前の曲で作曲者34才の時の作品。第3曲の「懐かしきクレオールの時代」などはなかなかに美しく、心休まる響きに満ちている。
第2曲「ハックルベリー・フィン」の脳天気な音楽も愉しい。「グランド・キャニオン」で示された弦を分割してメロディーを分厚いハーモニーで飾り立てる方法は、その後のハリウッド・サウンドに大きな影響を与えたものだと私は思うが、この「ミシシッピ組曲(音の旅)」はもっと大人しいものであるが、「グランド・キャニオン」の原点になったことは間違いない。
第4曲の「マルディ・グラ(懺悔火曜日)」の中間部での弦のサウンドはまさに「グランド・キャニオン」の「日没」のシーンで聞かれたものの原点になっている。
しかし、この脳天気なペンタトニックはアメリカ人のスコットランドへの深層心理での郷愁の現れだと言えなくもない。
この作品を丁寧な演奏で聞かせるウィリアム・ストロンバークが指揮するボーンマス交響楽団は、大人しい演奏であるが故に、曲が持っていない品位を保っていて私は好きだ。
1961年、すでに70才を目前にしたグローフェが書いた組曲「ナイアガラ大瀑布」はもう彼の音楽が若い時代のような勢いを持っていないことを示している。
おどろおどろしい出だしから、確かに聞かせ上手なグローフェ節は健在ではあるが、メロディーが平凡で劇伴を劇無しで延々と聞かされている感じで、最後まで聞くのはちょっと辛かった。そう言えば、長年かかって?書き上げたピアノ協奏曲も結構冗長で、グランド・キャニオン以降の彼は、もう聞くべきものを書くことができなかったのかもと思ってしまった。(実際あの曲は、今時の学生でも書かないだろう)
というわけで、ミシシッピ組曲(音の旅)のみ推薦。あとの2曲はグランド・キャニオンが***の注目。組曲「ナイアガラ大瀑布」は**として、トータルでは***(注目)とすることにしよう。

NAXOS/8.559007
by Schweizer_Musik | 2005-06-29 08:47 | CD試聴記
序奏とアレグロ、「分解」終わりました・・・
昨日は予想通りバタンキューで帰宅して速攻で寝てしまいました。書き込みできず・・・。
で早起きして書き込むかと思えば、ちょっと形式を取り違えていたというお馬鹿なことに気が付いたので(ああ授業で嘘を教えなくって良かった・・・)それを書き直した。
アホである。全く・・・。一体何年この仕事をしているのかと情けなくなる。昨日までこのアレグロは三部形式だと思いこんでいたのだから・・・。
白状すると、序奏のテーマの作りとアレグロのテーマとの関連に関心の全てがあったので、全体の形式についてほとんど気にしていなかったというのが現状。すみませんでした。解説書を読むなどの努力を怠っているためこうしたイージー・ミスをしてしまいました。で、ちょっと書き直しをしたので、よろしくお願いします。
さて今日の授業の準備をしなくては。
by Schweizer_Musik | 2005-06-29 04:39 | 日々の出来事
序奏とアレグロは途中のままです・・・
序奏とアレグロの主観的分解・・・?は書きかけのままです。昨日、寝てしまいました。で、今から授業に出かけます。帰ったらまた少し進めたいのですが、今日は遅くなりそうなので明後日かなぁ。
意外なほどの反響があったので、続きをまた書きますが、他の曲もやっていこうと思っていますのでお楽しみに!
では行ってきます。
by Schweizer_Musik | 2005-06-28 08:09 | 日々の出来事
序奏とアレグロ、主観的分析
ラヴェルの7人の奏者のための美しい作品「序奏とアレグロ」を主観的に分解してみます。分析とタイトルにつけましたが、本当にただ分解しただけです。悪しからず・・・。
序奏部は二つの部分に分かれ、その最初の部分にこの曲の素材が全て詰め込まれています。
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序奏のメロディーはまずフルートとクラリネットの三度の響きによって印象づけられます。そのメロディーは半音階を経て二度下がる形(転調)で、4度音程を基本としています。


c0042908_1753188.jpgこの音列はオクターブ関係を入れ替えていますが、それはわかりやすくするためで、他意はありません。テーマのはじまりの音をよく見て、それを音列化したものであることを、よく確認しておいて下さい。


c0042908_1815149.jpgこの音列を4度あげて続く弦による3オクターブ・ユニゾンのメロディーになっていますが、これぐらい変わると、最初の木管の音列を使ってのメロディーだとは気が付かないかも知れませんね。
これにハープの幻想的なアルペジオが絡んで一つのグループとなっていて、続いてこれが楽器を入れ替え、二度下に移調されて繰り返されます。二度下というのが、冒頭の三度のハモリを持つメロディーと同じだということに気が付いたことでしょう。

c0042908_1817429.jpgそのまま転調しただけの繰り返しは、最初の三度の響きはフルートとクラリネットからヴィオラとチェロに移され、3オクターブのユニゾンはフルート、クラリネット、そして第1ヴァイオリンに移って、音色の変化をつけています。
それに絡むハープは更にダイナミックになっていることも留意しておきましょう。
ここまでが4拍子でしたが、ここから3拍子になり、少しだけテンポが速くなります。序奏の後半に入ったわけです。
伸びやかなメロディーがチェロによって演奏されます。
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このメロディーは最初のテーマの音列から出来ています。ただ反行形なのでわかりにくいようです。
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この音列は最初の音列の3番目の音を外して3音の音列にしてから、それを反行形にするとこのメロディーの音列が得られます。その音列を次に示しておきます。
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続いてアレグロに入ります。アレグロはソナタ形式で出来ています。
第1テーマを次にあげておきましょう。
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テーマは3音の方の音列で出来ています。As-F-Esの三度下降と二度下降で出来ていて、その間に経過音を加えた形になっていることが、ご理解頂けると思います。
この3小節というちょっとイレギュラーな小節構造のメロディーが4度上の調に移調されると、メロディーは拡張され4小節の構造になっています。
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4度上では、ハープのソロからアンサンブルでの音楽になり、フルートが先行して続いてハープがユニゾンでメロディーを縁取っていきます。
一度カデンツで区切られてからもう一度繰り返され、続いて第2テーマが提示されます。
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この第2テーマは3音からなる音列の2度音程と4度音程を繰り返すことで出来ているのですが、こうしたテーマ間の関連は主題の背景を統一させるということで、作曲家の常套手段と言えましょう。
そしてこのメロディーのリズムだけが残り、アレグロの展開部がはじまります。
まず展開部第1群。
序奏の三度のメロディーが三拍子のまま弦に再現されると、まもなく冒頭のメロディーの後半(3オクターブのユニゾン)のメロディーがハープに出てきます。ここの仕掛けはなかなか巧妙です。
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この部分の最後に第2テーマの部分(リズム)がくっついていますが、これが次の部分へのつなぎとなります。
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これに続いて展開部の第2群が始まります。第2群はこの第2テーマの断片をテンポを少しあげて繰り返す「問いと答え」のような断片とハープのgグリッサンドの応酬から始まり、続いて第2テーマ全体をハープのダイナミックなソロで繰り返され、そしてまた断片の「問いと答え」を繰り返すというa-b-aで出来ています。
ハープのソロの部分をあげておきます。
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このハープのソロの後、断片による問いと答えは楽器編成を変えて第2群を終え、第3群へと進みます。
また第2テーマが今度はクラリネットで全体が演奏されるのですが、このメロディーが繰り返されるところでハープがさりげなく第1テーマをリズム的に拡大して寄り添うという美しさ!!
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これが、第2テーマがフルートとクラリネットに、そして第1主題の拡大がヴィオラに移され、そこにハープが絡んで次第に盛り上がり、ハープのカデンツァへとたどり着きます。
このハープのカデンツァを聞く度にラヴェルがハープを熟知していたことを痛感させられます。なんでフランスの作曲家ってこんなにハープの扱いが上手いのでしょう。私などは足下にも及びませんが、こういう素晴らしい書法を見る(聞く)度にため息が出てしまいます。
そしてハープの幻想的なハーモニクスが響く中、再現部へ。
型どおり再現されてコーダがついて終わりという次第です。ああ疲れた・・・。朝から考え事をこんなにするものではありませんね・・・。
構成を見誤るなどという恥ずかしいこともしてしまいましたが、一応これでこの曲はおしまいです。
by Schweizer_Musik | 2005-06-27 19:03 | 授業のための覚え書き
亜麻色の髪の乙女の主観的分析
ドビュッシーの前奏曲集第一巻の「亜麻色の髪の乙女」は、ドビュッシーの音楽の中でも最も親しまれている作品ではないだろうか。歌謡曲のタイトルにまで使われたこの魅力的なタイトルもその原因の一つ・・・かも知れない。亜麻色とは良い響きですねぇ。
c0042908_11171192.jpgそんな妄想はともかく(笑)、この曲のテーマはどんな構造なのでしょうか?
まず無伴奏の単音でテーマが始まります。このテーマは変ト長調に六度音を付加した分散和音のメロディーに変ト長調のスケールがくっついた形で出来ています。
大変印象的な出だしですね。名曲というものの条件にはいくつかのファクターがあると思いますが、この印象的な出だしを持っていることと言うのは、大きいと思います。ベートーヴェンなんてこの印象に残る出だしのオン・パレード。よく思いついたものだ・・・。
c0042908_1122145.jpgこのテーマにコラール風のレスポンスが続きます。これはトニックの和音の仲間であるI度、III度、VI度の和音を中心にしてちょっと長調とも短調とも言えない響きを持っていますが、これに続いてピカルディーの終止風の長三和音が続くのです。
このちょっと中世風の響きは、最初の分散和音が5音音階風の響きを持っていることからも、うまく対応していると思われます。
続いて、最初の単音で出てきたテーマがもう一度出てきて確保されます。
c0042908_11244211.jpgここでは和音がついていますが、変ハ長調のドミナント7と変ニ長調のドミナント7がつけられていて、古典的な和声機能を無視して和音がつけられています。ちょっと不思議な感じですね。和音だけ取り出して聞くとさらによくわかるはずです。
c0042908_1145413.jpgこれに続いて、長いスケールが続き、この曲が分散和音(5音音階)とスケールの対比で構成されていることを示しています。
小さなカデンツの後、続く部分には5音音階による上行音型と下降のスケールがこの曲を象徴しています。そしてこの部分を発展させて、下属調へ転調して盛り上がる部分が続く。c0042908_12151357.jpg
下属調に一時転調をした後、三度上の変ホ長調にすぐに転調していくのですから、ここは大変流動的であります。c0042908_12564454.jpgこれで最初の部分が終わり、中間部へと入るのです。
中間部はこの終止した調である変ホ長調を確保するところから始まります。
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変ホ長調を確保する時にはペンタトニック・スケールによる上行音形に続いて、転調して下降のヘキサトニック・スケール(6音音階)で対応しています。が、この部分、ペンタトニックの主題の最初の部分と後半のスケールとが縮小されたものという考え方も成り立つのではないかとも私は考えています。

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この後にテーマの分散和音をそのまま別のリズムにした推移が続き、最初のテーマに戻ります。最初のメロディーと比べて下さい。そのままリズムを変えただけということがおわかりになられることでしょう。
和音はメロディーの分散和音と同じGes-B-Des-Esの6度音を付加した変ト長調の主和音です。それに最後ドミナントの和音が出てきてカデンツとなるのですが、このドミナントはまるでポピュラー音楽のような使い方でちょっと驚いてしまいそうですね。
そして普通なら変ト長調の主和音に解決するのですが、これがどっこいそうはいかず、二度下のサブドミナントに行くのです。ちょっと擬終止のような効果がある部分ですが、これが大変効果的で、このサブドミナントの上に最初のテーマがオクターブ上に移されて再現します。
後半のスケールはリズム的に倍になり、ゆるやかになっていて、エンディングへの見事なつなぎになっています。リタルダントを音符にしたような感じですね。
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最後の数小節のペンタトニックのスケールは、名残惜しげにというより、ほのかな艶やかさを感じるのは、私の妄想のせいでしょうか?
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by Schweizer_Musik | 2005-06-27 14:10 | 授業のための覚え書き
山の音楽 -3-
夏に聞く山の音楽。さわやかな作品!ダンディの「フランス山人の歌による交響曲」は、実はフランクの交響曲の二年前に発表された作品。フランクはでもこのダンディの先生ですから、フランクがいかに大器晩成型の作曲家だったかよくわかります。
そんなことはどうでもいいのですが、このセヴァンヌ地方の民謡に取材した「フランス山人の歌による交響曲」は冒頭のコール・アングレのメロディーが低音の木管のユニゾンに導かれて出てくるあたりが、モーツァルトのセレナード 変ロ長調「グラン・パルティータ」K.361(370a) の第3楽章に似てなくもないと思うのですが、意外とこんなところにルーツがあったりして・・・。モーツァルトは誰が何と言ってもネヴィル・マリナーの全集録音(Philips)が一番ですが、これはダンディと無関係ですね。
ともかく私は冒頭の数小節が特に好きなのですが、もちろん他も好きですよ!(誤解しないで!)3楽章の何回繰り返したでしょうと言われたら絶対困るピアノのフレーズもペンタトニックでやっぱり民謡調で、なんだか笑ってしまいそうで、大好きですし・・・。
演奏は私はペーター・マーク指揮ベルン交響楽団とミシェル・ブロックのピアノによる演奏(CONIFER/CDCF 146)が最高です。ただこれは手に入りにくいでしょうから、セルジュ・ボード指揮パリ管弦楽団とアルド・チッコリーニ(pf)の演奏(EMI/CDM 7 63952 2)もあげておきましょうか。ミュンシュの演奏は私のこの曲との出会いの一枚。(RCA/09026-62582-2)ただ、今となっては冒頭の部分、あまりに素っ気なくちっょと残念です。(ここが好きなのですから・・・)主部に入ってからは生気あふれる素晴らしい演奏なのですが、私は彼の合わせモノはあまり好きでないというか、合わせようという気持ちがあまりないのではと思うところがあり、どうしてもピアノが大活躍するこうした作品では、今ひとつとなります。それに彼が気に入っていたというニコレ・アンリオ=シュヴァイツァーのピアノは音が硬く、表現が一本調子になりがちで今ひとつです。その点、ボード盤のチッコリーニは最高です。本当に良いピアニスト!!では何故ボード゛か一番でないのと言われると困るのですが、ペーター・マークの歌に溢れた演奏が、やはりスイスのベルン交響楽団との演奏であるからでしょうか。ベルン交響楽団って、宣伝をしないものだから、あまり知られていませんが、フルトヴェングラーもしばしば客演していたオーケストラで、デュトワやペーター・マークが音楽監督をしていた名オーケストラなのです。最近までテルミカーノフ(ロシア人の指揮者)がやっていました。

さて、このダンディ。30年近く経ってから交響詩「山の夏の日」という作品を書いていますが、これは夏の音楽-03-で書きましたので、重複しますのでこのくらいにしておきます。

さて、フランスの山の音楽としてはもう一曲。フランス人ではないのですが、トロンボーンの作品で面白いものがあります。1989年に初演されたサンドストレムのトロンボーン協奏曲「オートバイ小旅行」という曲です。フロリダやオーストラリアなどを巡るのですが、第3楽章がプロヴァンスの山を旅行しています(笑)。
トロンボーンなどがサーキット場のような効果を出していて面白いのですが、はいそれだけですねぇ・・・。どこがプロヴァンスか?ふと気になったのですが、このサンドストレムという作曲家はオートバイで走ることが目的のようです。最後近くに教会のそばを通ったのか、教会のオルガンの音を模したオケと金管によるコラール風のフレーズが風に乗ってしばらく聞こえてくるところが結構好きです。
私が持っているCD。クリスティアン・リンドベルイのトロンボーン、レイフ・セーゲルシュタム指揮スウェーデン放送交響楽団の演奏で、他にブロッホのトロンボーンとオーケストラのための交響曲やリムスキー=コルサコフの管弦楽版のトロンボーン協奏曲(原曲は吹奏楽とトロンボーン・ソロ)の超名演が入っていますので、トータルとしては買って損のない一枚です。(BIS/CD538+568 )

フランスは今回はこのくらいにして、アメリカに渡ってみましょう。
ホヴァネスは1911年、アメリカのマサチューセッツ州サマーヴィルに生まれ、ニュー・イングランド音楽院を卒業した作曲家です。父親がアルメニアからの移民で、母親はアイルランドからの移民なのだそうですが、二十世紀の音楽家としては例外的なほどの多作家で、交響曲がなんと60曲ほどもあるという人です。
その彼が交響曲第2番につけたタイトルが「神秘の山」。この神秘の山とはなんと富士山のことで、1955年に作曲されたものです。(委嘱してのはストコフスキー!!)
この曲にストコフスキーの録音があるのかどうかは知りませんが、フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団の決定的ともいうべき名盤(BMG/09026-61957-2)があります。今後これ以上の演奏が可能なのだろうかなんて下らないことまで考えてしまうほどの演奏!!です。現代音楽の難解さは全くなく、屈託無く書き散らかした作曲家
ですから、現代ものと思わずに虚心坦懐に楽しんでほしいと思います。
彼の膨大な作品のほとんどはまだ聞いたことはありませんが、数少ない私のホヴァネスの知識の中からもう一曲。
交響曲第50番「セント・ヘレナ山」です。これは1983年に書かれた作品で、セント・ヘレナ火山の大噴火にインスピレーションを得て書かれたものです。終楽章がその大噴火。打楽器を大動員しての迫力満点の音楽です。ジェラード・シュウォーツ指揮シアトル交響楽団のもの(DELOS/DE 3137)もありますが、これは最近ナクソスに買収されたので、ナクソスから出ている家、出る予定のはずです。演奏は、終始安全運転で、ちょっと不満も残りますが、とりあえずはこれで楽しむことにいたしましょう。
他に第14番が「アララト山」というノアの箱船がたどり着いたという伝説の山を(もちろん実際にあります。中東の方でしたね。)題材にしたものなどもあり、この作曲家は山をテーマとした作品が多いようです。ただしこの曲はまだ聞いたことがありません。一説によると、黛敏郎の「涅槃交響曲」のようだとも・・・。聞いてみたい気持ちになってきました・・・。

山の音楽はまだまだ・・・
by Schweizer_Musik | 2005-06-27 09:42 | 音楽時事
鬼平(長谷川平蔵)の命日に
私は池波正太郎ファンなので、時代劇が大変好きだ。で、今日は一日時代劇専門チャンネルというスカパー!のチャンネルを見ていた。
関心の無い人には、何ということもないのだが、今日は鬼平(長谷川平蔵)の亡くなった日なのだそうだ。
鬼平は実在の人物をもとにしたフィクションで、単なる勧善懲悪ではない奥深さが私は好きなのだ。ちょっとシャーロック・ホームズを読むようなところもある。
一日、ゆったりとドビュッシーのエントリーを書いたり。原稿を書いたりしながら、ぼんやりとテレビを見てしまった。ただ、もう何度も見たものなのであるが、やはり愉しかった。良いドラマというものは、何度見ても面白いものだ。
by Schweizer_Musik | 2005-06-27 00:07 | 日々の出来事