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バドゥラ=スコダのベートーヴェンの協奏曲全集から
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15 (1794-95)
演奏者 : パウル・バドゥラ=スコダ(pf), ヘルマン・シェルヘン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団
このアルバムは こちら

これは現在、旧ウェストミンスター・レーベルの音源を有しているユニバーサルから正規のライセンスを得てGENINが復刻したものだそうで、1951年から1958年にかけて録音されたものだ。
戦後、飛ぶ鳥を落とす勢いで出てきたバドゥラ=スコダ、デムズ、ブレンデル、グルダなどのピアニストたちもグルダは亡くなり、ブレンデルも引退との情報も流れるなど、皆八十才を越えた。
この若き日のスコダの演奏を聞くと、意外とミスも多いけれど一発録りのライブ感に溢れていてなかなかに聞かせる。
ヘルマン・シェルヘンの勢いのある指揮も良いが、オケはかなり緩めのアンサンブルで、時々ハッとさせられるのは否めない。
ベートーヴェンの協奏曲はもういらないと思っていたけれど、こうしてナクソスで優れた演奏がいつでも聞けるというのはありがたいと思う。
CDを買ったり、色々聞かなくてはならないのに、ああ時間がほしい。今回は第1番だけを聞いておしまい…。
ちょっと不安定な天気で憂鬱な感じだったけれど、この演奏で気分転換できた。お薦めですよ!
by Schweizer_Musik | 2009-01-31 14:43 | ナクソスのHPで聞いた録音
オーケストレーションの課題の作例 (ベートーヴェンの悲愴ソナタの第1楽章の序奏)
昨日のオーケストレーションの授業での課題の作例をあげておく。細かなことはすでに説明したとおりであるので、各自が作成したスコアと照らし合わせてみること。
但し、これが正解とかそういうものではなく、あくまで1案であることを忘れないで!
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なお、このスコアをGPO音源で録音したものを参考までにこちらの管弦楽法・授業作例においてあるので、ご参考までに。
また、原曲の楽譜を持たない者はこちらから手に入れること。

追記 : 実音表記となっているので、気をつけて!!
by Schweizer_Musik | 2009-01-31 09:54 | 授業のための覚え書き
シャンソンの名曲です。
作曲者 : TRÉNET, Charles 1913-2001 仏
曲名  : 街角 "Coin de Rue"
演奏者 : 佐々木秀実
CD番号 : 聞かせてよ愛の言葉を (PARALEZ-MOI D'AMOUR)_EPCE-2017

これはシャンソンの名作。幾人の人が歌ったのだろう。

思い出すのはあの街角
子供の頃によく遊んだ
わんぱくどもが待ち伏せてた
垣根も木立ももうない…

こう歌う金子由香里のCDをよく聞いたけれど、ここにあげる佐々木秀実の歌はポップスのCDとしてはかなり息の長いヒットとなっている。
彼(女)はまだ28才。このCDを録音したのは多分五年ほど前ではと思うが、魂を揺さぶる歌で、こんな人が出て来るから世の中は面白い。
トレネは「ラ・メール」や「詩人の魂」「ブン」などシャンソン界の大作曲家であり、大歌手だった。
さてこの曲。いかにもシャンソンらしい節回しで、1930年代のフランスの流行歌がどういったものだったか、よく表している。付加音の使い方は洗練の極みである。
ああ、でもそんな技術的なことなんてどうでもいい。この佐々木秀実の歌を今日何回聞いたことか。
朝、遅く起きてテレビをつけると彼(女)が出ていて「愛の讃歌」を歌っていた。ちょっと涙が出てしまった。で、この音源をiTune−Storeで購入してダウンロードして1日休みにかこつけて聞いていたのだ。
知っている歌はこれと「聞かせてよ愛の言葉を」、サティの「あなたが欲しい」だけだった。歌詞カードは当然なく、作曲者や作詞者がわからず、レビューなんて書けないけれど、素晴らしい歌が圧倒的な説得力にやられてしまった。

「聞かせてよ愛の言葉を」は、NHKの「ちりとてちん」の挿入歌だったそうで、放送されて問い合わせが殺到したという。
当然だろう。その曲もここに入っているけれど、こんな風にささやかれたら、彼(女)が男か女かどちらでもよくなってしまうから危険だ。
聞きながら、初めてピアフを聞いた時に金縛りにあったような衝撃を思い出した。とんでもない人だ。
シャンソンの他には1970年のサンレモ音楽祭で歌われてヒットした「恋のジプシー」などカンツォーネがいくつか入っている。そうしたジャンルなんてどうでも良い。この歌はそれどころではない。

実は以前、ビートたけしの出ている何の番組だったか忘れたけれど出ていたの彼(女)を見て凄い人だなぁと思ったことを思い出した。でもでも、今朝の「愛の讃歌」には参った…。
1日中、これを聞いて冬枯れの景色を窓の外に眺めて過ごす。穏やかな、穏やかな冬の1日だった。明日はまた頑張らねば…。
by Schweizer_Musik | 2009-01-30 00:11 | CD試聴記
チャイコフスキーの悲愴 バーンスタインの旧盤を聞く
作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名  : 交響曲 第6番 ロ短調「悲愴」Op.74 (1893)
演奏者 : レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
CD番号 : SONY/30DC 355

ずいぶん古いCDで恐縮である。もちろんこのCDはとっくの昔に廃盤であろうが、再発されて今も手にはいるのかどうかはちょっと調べてみたけれど、不明だった。
1964年2月11日ニューヨーク録音のこの録音は、後にグラモフォンに入れ直したものに比べて私ははるかに気に入っている。グラモフォン盤のテンポにちょっとついていけないままである。その内聞き直してみようかと思ってはいるが…。
若いバーンスタインのこの録音。今はお気に入りとなったフォステックスのヘッドフォンで聞いているが、とても良い録音で、解像度も素晴らしい。演奏ノイズ(パート譜をめくる音など)も盛大に入っていることも付記しておく。

第1楽章からバーンスタインの解釈は奇抜なところは全くなく、正攻法そのものだ。ニューヨーク・フィルハーモニックを存分に鳴らしているが、ロシアのスヴェトラーノフなどの演奏のように沈没しそうなほどのロマンの海に漂うようなところはなく、筋肉質のマッチョなチャイコフスキーとなっている。
だから、第3楽章は最高の出来だし、終楽章もベタベタにならない。ニューヨーク・フィルと言えば、彼以降、ロクな評判を聞かなかったけれど、その時にいつもついて回るのは、個々の奏者のポテンシャルはとても高いのだが…という一節であった。
なるほど、こんな演奏ができるオケなのだということと、バーンスタインというとてつもないスターの後は誰がなっても比べられ、徹底的にけなされるということなのだろう。
そう言えば、未だにスイス・ロマンド管弦楽団にエルネスト・アンセルメの幻を見ようとしているのが日本の音楽ファンではないだろうか?サヴァリッシュやシュタインがあそこのシェフになっていた時代は、滅多に日本に紹介されず、満を持してアルミン・ジョルダンがなった時にマーラーをレパートリーに加えただけで、あーだこーだと言われ、その後任のファビオ・ルイジなども日本公演ではエルネスト・アンセルメで知られているレパートリーをプロモーターから要求されたそうだ。
話が横道に逸れてしまった。

終楽章で彼はホントに男泣きに世界を歌い上げる。迫真の演奏だ。シンフォニックで極めて力強い音楽の運びである。
そして、有名な銅鑼の音の後の静寂に世界は特に印象的。畳みかけるような展開の後だけにその強い対比が胸に突き刺さる。
この頃のバーンスタインの録音ってハズレがないなぁとつくづく思った次第である。
by Schweizer_Musik | 2009-01-29 22:54 | CD試聴記
尚美のサックス・アンサンブルの定期演奏会
昨日は、いつも神奈川フィルの演奏会などでお世話になっているyurikamomeさんなどの来ていただいて、専門学校東京ミュージック&メディアアーツ尚美のサックス・アンサンブルの定期演奏会が行われた。
先日、私が編曲したアルルの女第1組曲、第2組曲がこの編曲版での初演があったわけで、私も学校の新バリオ・ホールでそれを聞かせていただいた。
今年はアカデミー生が少なかったこともあるし、ディプロマ生が加わらないということで、リハーサルなどではどうなることかと心配していたけれど、本番では何とか大過なく良い演奏をしてくれたと思う。
オケ版から同属楽器のアンサンブルに直しているのだから、元のものより良くなるわけがないのだけれど、それでも色々とジタバタした結果がそれなりの成果をあげていたのは、編曲者としてはしてやったりという気分であった。
指揮とアンサンブルの指導をして下さった本校の卒業生でもあり、先日、CDのレビューもさせていただいた松雪先生の丁寧な指導があってのことだとも思う。深く感謝!!

で、終演後は卒業生たちとyurikamomeさんの飲みに出かけ、いつもの店で気炎をあげて、最終のちょっと前で帰った次第。
あの店は11時には閉店になるので、帰れなくなるという心配をせずに飲みに行けるので嬉しい。深夜営業でもされたら、朝まで飲まなくては…(笑)。
良い一日を過ごさせていただいた。今年度もそろそろ終わりである。あと一ヶ月ほどで春休み。その前はかなりの多忙となるので、今日は休み〜。

昨日の楽しさを思いだそうと、ビーチャムの指揮したアルルの女を聞いている。あの人はこうした曲を振らせると本当に上手い!!勘所を上手く押さえ、泣かせるところは泣かせ、笑わせるところは笑い…。フワリとテンポを次から次へとくり出す。誰も気づかないほど自然にそれをやっていて、凄い指揮者だなと再認識している。
暢気に寝坊したのでもう昼…だ。
by Schweizer_Musik | 2009-01-29 11:30 | 日々の出来事
五嶋みどりの弾くパガニーニの協奏曲
作曲者 : PAGANINI, Niccolo 1782-1840 伊
曲名  : ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 Op.6 (1817-18)
演奏者 : 五嶋みどり(vn), レナード・スラトキン指揮 ロンドン交響楽団
CD番号 : PHILIPS/420 943-2

今やMidoriと書くべきなのかも知れないが、この天才の16才の時の演奏を聞き返すつもりで聞いた。いや、とんでもない人だ。棒弾きなところなんて一カ所もない。この集中力、脱帽するしかない。
先日、パガニーニのこの曲を巡って書いた時、この演奏のことを完全に失念していたけれど、いやこれこそ第1にあげられるべき演奏だった…。
ギトリスなどのカットなどの変更もない、いわゆるオリジナル版によるものであるが、長大な第1楽章も単調に聞こず一気に聞いてしまった。
オーケストラ部分は大したことはない。スラトキンも手持ちぶさたかも知れないなと思ったりもしたけれど、MIDORIが歌いまくってテンポの伸び縮みが激しく、意外に退屈せず演奏できたかも知れない(笑)。
この曲のオケ・パートはかなり簡便に作られている。和声もかなり単純というか平凡だ。
一説には自分の技術を盗まれないように、楽譜を楽員に渡したりせず、いつも持ち歩いていたため、初見でもオケが演奏できるよう、簡単に書いてあるという話もあるが、私はパガニーニはこういう音楽を書きたかったのだと思っている。
彼のチェントーネ・ソナタなどのギターとバイオリンの作品など他の作品群でもハーモニーはどちらかというとありきたりのものばかりで、そうした面への探求心は彼には無かったようだ。
しかし、彼の音楽のはち切れんばかりのメロディーの魅力はどうだろう!!あのヴィルトゥーソの魅力とともにこれが彼の音楽を今日にまで生かしている源ではないだろうか?
事実、このヴァイオリン協奏曲でのパガニーニが書いたメロディーの魅力は抗しがたいものがある。古今の作曲家たち、特にロマン派のシューベルトやリスト、ベルリオーズなどを夢中にさせたのはヴァイオリンのテクニックとともにこのメロディーにあったのてはないかと私は思っている。
そして、MIDORIは実に見事にこれを演奏している!!ああもう見事と言うしかないほどである。こんな良い演奏を忘れていたとは、恥ずかしい…。
第2楽章の詠嘆のメロディーを見事な節回しで聞かせるMIDORIはこの録音時まだ16才頃ではなかったか?すでに成熟した立派な演奏家であったのだ。
昔天才、今ただの人と言うのは間違っている。天才と早熟を一緒くたにしているからだ。天才とは彼女のような人のことを言うのだ。ハードディスクのこの曲はギトリスからMIDORIに入れ替えようと思っている…。

あっ思い出した、庄司紗矢香のものも今度聞き直してみなくては…。
by Schweizer_Musik | 2009-01-28 05:51 | CD試聴記
ドビュッシー以後…二十世紀の大作曲家を十人選ぶ
ドビュッシー以後の作曲家として二十世紀に活躍した作曲家を十人あげよと言われれば、誰をあげるか?
このような問いが何の意味もないことはよく分かっているが、ウェーベルン、ラヴェル、ストラヴィンスキー、メシアン、ショスタコーヴィチ、オネゲル、バルトーク、ガーシュウィン、ルトスワフスキ、メシアン、武満 徹。シェーンベルクやアルバン・ベルクはどうしたというお叱りや、グバイドゥリーナやシュニトケもという意見もあるだろうし、ブリテンなどのイギリスの作曲家が入っていないとか、北欧は?、ペンデレツキは?もう一杯意見があるだろう。イタリアのノーノやドイツのシュトックハウゼン、あるいはヘンツェも重要だ。小さな声でフランク・マルタンなども入れて欲しいという声も聞こえそうだが却下してしまった。
重ねて書いておくが、こうした序列というか差別化は何の意味も持たないが、選ぶ人の音楽の指向性が見えてくるもので、これを私が選んだことで、私の音楽の指向性も公表していることとなる。

では選出理由を少し述べさせていただこう。
ウェーベルンは二十世紀の作曲家たちに与えた影響の甚大さで、まず選ぶこととした。
彼の影響を受けなかった二十世紀の作曲家なんていたのだろうか?十二音がどうのという以前に、彼の音楽は独創的で強烈なインパクトを持っていた。
その師であるシェーンベルクやアルバン・ベルクを重要と考えるがそれ以上に彼の影響力は大きい。

ラヴェルとストラヴィンスキーはオーケストレーションの可能性を極限まで広げたということで、その成果は誰も異論はないのではないか?
ならばレスピーギやホルストなどはどうなのかと言われればもちろん素晴らしい能力と技術を認めるものの、音楽の独創性においてこの二人は群を抜いている。優劣では測れない普遍性がこの二人の音楽にはある。
また、影響力という点でも甚だしい作曲家たちがその技術を分析し、学んだ。「春の祭典」「ペトルーシュカ」「ダフニスとクロエ」みんなディアギレフの興行が生み出したものだ。その点でとちらかに代表させようと最後まで悩んだ末、二人とも選出することにした。

メシアンは第二次世界大戦前から重要な作曲家であったが、戦後に大活躍した作曲家でありオルガニストであり教育者であった。彼の教えを受けた作曲家の多いこと!私の知り合いの中にも一人、二人といる。長年、コンセルヴァトアールの先生をしていたし、パリの教会のオルガニストでもあった。
作品は膨大で、そのいずれもが深いカトリックの信仰と結びついている。
トゥーランガリア交響曲で東洋思想を取り入れつつ、メシアンの音楽は鳥の歌を自らの音楽に取り込んでいくことで、極めてユニークな世界を打ち立てていった。
また、移調の限られたモード(所謂合成音階による旋法)を用いて、独特の響きを作り出していったことと、その技法をいくつかの著書で明らかにし、若い作曲家たちに大きな影響を与えた。

続いてフランスの六人組から一人選ぼうと思い、オネゲルを選んだ。
オネゲルはプロテスタントの厳しい精神性と深いロマン主義への憧憬の中から新古典主義の形式美を追求したことで、フランスの六人組の他のメンバーからは隔絶した高みにあると思う。
多調性、ポリ・コード、簡素なオーケストレーションから生み出されるシンフォニックな世界、そして古典的で入念な動機の展開は群を抜いている。
私が昔から愛して止まないイベールとミヨー、聡明なケックランなどは残念ながら省いた。

バルトークは多くの民族主義、あるいは地域主義から最も普遍性を獲得した作曲家ではないだろうか?易しいピアノの練習曲からオペラまで、彼の幅広いジャンルにわたる音楽は厳しい造形へのこだわりがある。
形式と論理的な美の融合は、民族的なエネルギーを得ることで普遍の高みに至ることができた希有な例としてあげておきたい。
我が国の間宮芳生氏や北欧の何人かの作曲家など、優れた作曲家たちがその影響下で新たな創造を行っていることを思えば、選出は当然というべきだろう。クルターク、あるいはヴェレシュ、そして偉大なリゲティには敬意を込めて挨拶だけはしておこう。

続いて、ガーシュウィンはここにちょっと前までケージが座っていたのだけれど、涙を呑んで天才ガーシュウィンに席を譲ってもらった。それは二十世紀、特に第二次世界大戦後の音楽界、もっと言えばダルムシュタット楽派が捨て去ったメロディーというものの根源的な意味で、二十世紀最大のメロディー・メーカーをこの十人に入れておくことは意義深いことだと思ったからだ。
クラシックからポピュラー、ジャズ、様々な分野に愛されたガーシュウィンはこの座を多分「ボギーとベス」で手に入れたと言っても良いだろう。彼の他の作品が全て失われたとしてもこの一作で彼は不滅であるし、二十世紀を代表し、そしてアメリカを代表する作曲家となった。コープランドやバーンスタイン、そして偉大なケージに深く頭を垂れつつも、ガーシュウィンの影響力の大きさを考えて彼を選んだ。

ポーランド楽派はペンデレツキとルトスワフスキ、カレル・フサなど多いが、さて誰に代表してもらうかと思って散々考え、ペンデレツキかルトスワフスキか?で迷いに迷い、話題性でペンデレツキの方を選んでも良いかと思うが、意見の分かれるところで、実際のところ私の好みでルトスワフスキにした。
管理された偶然性、あるいは微分音まで埋め尽くした重厚なクラスターや、弦楽の様々な奏法による作品群など、1960年代前後のポーランド楽派はやはり世界中の作曲家たちに影響を与えたものである。

最後になったけれど(ホントは一番にあげたかったのだが…)武満 徹をあげてこの一文を終える。
やや情緒的にとらえられそうだが、彼の著書に倣って述べさせていただくならば、武満 徹は一つの音と永遠の沈黙が同じ重さを持つことを示したただ一人の音楽家だった。
東洋の音楽とか、日本の音にこだわったと言うのもちょっと一面的な話で、彼の音楽はもっと普遍性をもっていた。
日本的な音、楽器の使用はごく一部の曲に限られていて(あの有名すぎる「ノヴェンバー・ステップス」など!)実際には様々な音楽を融合し、自らの音を作り上げて行ったと言えるのではないだろうか?
彼の音楽を聞いていると本当に色々な音楽を聞いているのだなぁと思うが、親しい人達の話を聞くと、とてもよく音楽を聞いていたことがわかり、ちょっとだけうれしくなる。自分もこうして音楽を聞くのがとてもとても好きだから。

とまぁ、かなりいい加減で、思いつきではあるが、選ぶ人によってはこういう人選は大きく変わる。そして私だって、その日の気分で変わる部分もある。あっ忘れてた…とか、やっぱりこちらにしておくんだったと、書いてすぐに思い始めている次第だ。
それでもこういうのを書いてみると、それなりに面白い…。
by Schweizer_Musik | 2009-01-28 00:33 | 作曲(家)について
ロマンチックなレスピーギ23才の作品、ピアノ協奏曲イ短調
作曲者 : RESPIGHI, Ottorino 1879-1936 伊
曲名  : ピアノ協奏曲 イ短調 P.40 (1902)
演奏者 : ジェフリー・トーザー(pf), エドワード・ダウンズ指揮BBCフィルハーモニック
このアルバムは こちら

ロマンチックなピアノ協奏曲がお好みであれば、レスピーギ若書きのこのピアノ協奏曲は、きっと喜んで頂けるのではないかと思う。
ナクソス・ミュージック・ライブラリーには、この演奏とシチェルバコフのものがあり、チューリッヒ音楽院の教授でもあるシチェルバコフのものもとても良いのだけれど、スイスに長く住んだヘルマン・シェルヘンの高弟でもあるエドワード・ダウンズ卿の指揮ということもあってこちらを選んだ。演奏はどちらも素晴らしいもので、聞いてつまらないなどということはない。
ちなみに、シチェルバコフ盤で共演しているグリフィスもチューリッヒでエーリッヒ・シュミットに学んだイギリスの指揮者で、エドモン・ド・シュトゥツの創設したチューリッヒ室内管弦楽団の指揮者として活躍している。
まっ、スイス好きとしては、どちらでも良いかと思うが、今回はこのトーザー盤を。

前置きが異様に長くなってしまったけれど、全1楽章、20分あまりの作品であるが、なかなかテクニカルでロマン派のピアノ協奏曲の伝統を受け継いだものと言える。1902年という時期にはちょっと保守的すぎると言われそうだけれど、あのレスピーギである。
この後彼の音楽の興味はロマン派どころか、古典も越えて、バロック以前へと飛翔してしまったのだから、この懐古趣味も充分理解できる。
まだ経験をそれほど積んでいなかったであろう時期に、これほどの完成度の作品を書き上げたことに、彼のオーケストレーションなどの作曲技術がかなり若い頃から実に達者だったことが窺える。
ピアノも充分効果的である。
全体は大体六つの部分からなり、シャンドス盤では3つにトラックが区切られている。(シチェルバコフのものは一つのトラックにおさめられているという違いはある…)
ジェフリー・トーザーのピアノは実にしっかりしていて良い。ずいぶん前、リストのピアノ協奏曲をとりあげたことがあった(こちら)が、あの時も冴えたテクニックに驚いたけれど、この協奏曲の演奏でもそれは健在である。
ダウンズ卿(彼はまだWikiに何も書かれていない…今度書こうかな)の指揮もとても良いし、マンチェスターのBBCフィルハーモニック(あのBBC交響楽団とは別のオーケストラ)もまた実に良い演奏を聞かせている。
レスピーギはローマ三部作だけでない(もちろん、あれは凄い名作だとは思うが)のだ。
by Schweizer_Musik | 2009-01-27 06:21 | ナクソスのHPで聞いた録音
出会い…スイスと音楽、そして津田理子さん -01
津田理子 〜 Musik Treffen in YOKOHAMA 〜 Vol.2

5月24日に行われるコンサートに向けて、スイスと音楽について小さな連載を行います。そしてそれをまとめたものが、当日のプログラムとして頒布されるということを考えています。
その第一回です。
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上の絵は津田さんのコンサートによく行かれる方はお馴染みとなっているのですが、ご主人の指揮者ダニエル・シュヴァイツェル氏がとても若い頃に書いたもので、津田さんのお宅の玄関を入ったところに飾られている絵です。
私はこの絵が好きで、今回の作品「風のダイアローグ」はこの絵からもインスピレーションを得たのですが、その話はまたいつか…。

 さて、スイスと言うとみなさんはどういう印象をお持ちですか?ヨハンナ・シュピリが書いた名作「アルプスの少女ハイジ」を思い出す人も多いのではないでしょうか?あのイメージのままの風景が今もスイスのあちらこちらに残っていて、日本からもたくさん訪れる観光客の人たちを思い出す人も多いのではないでしょうか?
 スイスは日本の九州ほどの国土で、地方分権の国です。小さな村がパッチワークのようになって州になり、連邦国家となっています。小さな国ですが、観光だけでなく化学工業や国際金融、あるいは有名な時計産業などが
 でも、スイスと音楽というとあまり結びついては来ないようです。チューリッヒやベルン近郊のトゥーンなどにブラームスが滞在し多くの音楽を書いたというのはご存知ですか?
 リヒャルト・ワーグナーがチューリッヒの銀行家ヴェーゼンドンクの庇護を受けて、長くこの町に住み、更にルツェルンに邸宅を構え、コジマとの結婚生活をスタートさせたことは?
 フランツ・リストがダグー夫人と道ならぬ恋に落ち、逃避行の地としてスイスを選び、ジュネーヴ音楽院の最初の教授陣の中にその名前が見出されることは?
 ストラヴィンスキーやフォーレ、あるいはチャイコフスキーなど、スイスと浅からぬ縁で結ばれた作曲家たちもそうですが、スイスに生まれた音楽家たちも数多くいます。ダルクローズのように教育の世界で名高い音楽家もいますし、世界的な名指揮者エルネスト・アンセルメもスイス人でした。作曲家ではアルテュール・オネゲルやフランク・マルタン、オトマール・シェック、ウィリー・ブルクハルトなどが近代では重要でしょう。
 スイスにはオーケストラもいくつもあります。ジュネーヴにあるスイス・ロマンド管弦楽団、チューリッヒにあるチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、チューリッヒ室内管弦楽団、チューリッヒ交響楽団、バーゼルにあるバーゼル交響楽団、バーゼル室内管弦楽団、ヴィンタートゥーアにあるヴィンタートゥーア・コレギウム・ムジクム、ローザンヌにあるローザンヌ室内管弦楽団、ルガーノにあるスイス・イタリア語放送管弦楽団などなど。他にのまだまだありますが、スイスが小さな山国だと思いこんでいる人には意外なほど音楽が盛んだなと思って頂けるのではないでしょうか?
 合併などしてかなり変わってきたものの、オーケストラ活動は活発に行われています。この他に、チューリッヒ歌劇場も専用のオーケストラを擁していますし、スイスが音楽はアルペン・ホルンとヨーデルぐらいだということが誤解だということはご理解いただけたものと存じます。
 さて、そういうスイスに根をおろし、活発な演奏活動を行ってこられたのが、今日お迎えするピアニスト津田理子さんです。お住まいになっておられるのはチューリッヒ近郊の小さな村。静かな環境の中で子育てをし、ご主人を支え、自らもピアニストとして活発な活動を行っておられるのです。
 ご主人はチューリッヒ交響楽団の創立者にして二十五年にわたって音楽監督をされた指揮者のダニエル・シュヴァイツェル氏。チェロのディプロマを持っておられ、セルジュ・チェリビダッケのお弟子さんでもあります。
 ご主人は1981年にスポンサーの強力を得、スイスの若い音楽家たちを集めてチューリッヒ交響楽団を作ります。その最初のコンサートから津田さんは協力し、毎年彼女の豊富な協奏曲レパートリーをこのオーケストラの定期公演などで披露して来ました。
 フランク・マルタンのピアノのオーケストラのためのバラード(記念演奏会での録音がCDになっています)やショパンのピアノ協奏曲(ベルギーのレーベルからCDが出ています)などをはじめブラームスの協奏曲、グリーグ、チャイコフスキーの第2番やスイスの作曲家ミークの協奏作品など、彼女のレパートリーは幅広く、今も新しいレパートリーに挑戦してとりあげていくエネルギーも秘めているのです。
下の写真は、東南アジアに手兵であったチューリッヒ交響楽団と演奏旅行に行った2000年にシンガポールのヴィクトリア・ホールでベートーヴェンの皇帝を演奏した後に撮られた一枚です。
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写真、絵は著作権者に許可を得て掲載しております。また一切のコピー、転載などを固くお断りいたします。
by Schweizer_Musik | 2009-01-26 20:04 | 音楽時事
バーンスタインの指揮で聞く七枚のヴェールの踊り
作曲者 : STRAUSS, Richard 1864-1949 独
曲名  : 歌劇「サロメ」Op54 (1903-05) 〜 7枚のヴェールの踊りと終曲のサロメのモノローグ
演奏者 : レナード・バーンスタイン指揮 フランス国立管弦楽団
CD番号 : Grammophon/POCG-30032

昨年だったか、この曲をアレンジするという機会に恵まれ、ほぼ一ヶ月かけてなんとか仕上げたけれど、この作品がただものでないことは身をもって体験させられたものである。

このCDを買った時のお目当ては、カバリエが歌うオケ伴の歌曲であった。それも素晴らしいものであったが、その前に入っている「サロメ」の終わりの部分、そして有名な「七枚のヴェールの踊り」はすごい名演だった。
まず、サロメの要求で首切り役が地下の古井戸に降りていったところから始まるが、カバリエの歌は強烈だ。
この凄まじい情念の世界に私はもう圧倒されてしまい、声もない。バーンスタインの指揮は冴えに冴えている。
対訳を読みながら、聞いていて、こんな世界があるということに今更ながらに驚くと同時に恐怖を感じた。カバリエ最高の歌唱ではないだろうか?

オケはフランス国立管弦楽団であるが、目立って素晴らしいアンサンブルを聞かせている。録音も絶品だ。だから続く「七枚のヴェールの踊り」は最高の出来映えである。
このおぞましい作品については、古いライナー指揮シカゴ交響楽団とこのバーンスタインの録音を長く一番だと思ってきたけれど(全曲はカラヤン盤)、今回改めて聞いて、その感を強くした次第である。
しかし、どうして全曲を録音しなかったのだろう。舞台はご遠慮させていただきたいけれど、CDでならカバリエのサロメは世紀の名演だと思うからだ。
by Schweizer_Musik | 2009-01-26 15:52 | CD試聴記