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若き日のペヌティエの名演、発見!
作曲者 : MOZART, Wolfgang Amadeus 1756-1791 オーストリア
曲名  : ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482 (1785)
演奏者 : ジャン=クロード・ペヌティエ(pf), カール・リステンパルト指揮 ザール室内管弦楽団
CD番号 : ACCORD/476 9009

1967年4月2,3日録音のこの音盤の存在は全く知らなかった。ナクソスにも彼の演奏したものがいくつか存在するが、私は彼のピアノを高く評価しているので、こうした録音に巡り合えたことは幸運だったと思う。
1961年にロン・ティボーで二位となった彼(この録音の後、1968年のジュネーヴ・コンクールでも一位なしの二位になっている)は、どちらかというとソリストとしてより、極めて優秀な室内楽奏者としての方が私には強く印象づけられている存在である。その彼の協奏曲は、私は初めて聞くものである。(ソロは昔LPで学習者用のソナチネなどをあつめたものを持っていた…)そして、その共演がカール・リステンパルト指揮 ザール室内管弦楽団というのも嬉しい。ベテランの音楽好きならこの名前に反応しない人はいないのではないか?
聞き終えて、期待に違わぬ美しい演奏で若いペヌティエを支えるリステンパルトとザール室内管弦楽団にも心から賛辞を捧げたいが、やはりこの難しい作品を(特に哀しみに溢れた第2楽章の透徹した抒情は特筆すべきだ!)高い次元でまとめあげた彼のセンスに賛辞を捧げたい。
ハスキルのモーツァルトが好きな人ならこの演奏をきっと受け入れられるのではないだろうか?ちなみにハスキルはこの曲の録音を残していない…。(演奏もしなかったのだろうか?ひょっとしてあるのなら誰か教えて!!)
このCDには人気曲の23番(KV488)も入っていて、多分メインはそちらの方かと思うし、そちらも良い演奏なのだが、この22番の良い演奏に巡り合えたことが幸せな出来事だった。
スコダのカデンツァも鮮やかなテクニックで弾いていて良いが、私に言わせればちょっとカデンツァそのものの出来映えに疑問があるので、他の選択肢、例えばフンメルのものなど、私は極めて優れたカデンツァであると考えているが、それに比べるとかなり散文的でダラダラと場面転換をしていくだけで、なんともつまらない。ピアニスト自作のものではゲザ・アンダのものが優れていたと思う。続いてイングリット・ヘブラーあたりだろうか?エドウィン・フィッシャーのように吹き出してしまいそうなほどロマンチックな様式でやっているものなどもあり、失敗しているものもあるようだが、スコダのカデンツァも私には今ひとつの出来映えで、もう少し選んでも良かったかと思う。
第2楽章は控え目でありながら品良くピアノをたてるリステンパルトの指揮が素晴らしく、ピアノが出るまでの数十小節(結構長い!!)を充実して聞かせる。変奏を加えてピアノが登場したあたり、若さ故かちょっとノッペリしてしまうけれど、こうしたゆったりとした音楽を説得力のある演奏をするなんて芸当は、やはりある程度経験と成熟か必要なのではないか?
終楽章はさすがに品よくまとめ上げていて、まさに名演!!この27番の成熟を予告するかのような簡潔な主題でなんと豊かな世界をモーツァルトは描いて見せたことか!!これは下手に手をかければかけるほどメチャメチャになる音楽。そしてペヌティエは最高のパフォーマンスで聞かせてくれる。
ああ今日も良い音楽をたくさん聞くことができた。良い一日だ。

ところで、関係ないが、一ヶ月ほどダイエットの効果がでなくて、85kgから落ちなかったのだが、今朝83kgになっていた…。いや嬉しい!!何とか広島に転勤した当初の体重まで戻した…。1月からすでに15kgほど減量できたのだ。
この曲の終楽章のコーダのように軽やかな体にはやくなりたいものだ…(爆)
by Schweizer_Musik | 2009-08-31 19:14 | CD試聴記
アルベルト指揮のチャイコフスキーの「悲愴」…名演ですよ!
作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名  : 交響曲 第6番 ロ短調「悲愴」Op.74 (1893)
演奏者 : ルドルフ・アルベルト指揮 バイエルン放送交響楽団
CD番号 : ACCORD/476 8956

ルドルフ・アルベルトは、ドイツ系のあまりにありふれた名前故に、幽霊指揮者と誤解されるかも知れないが(まさかそんなことはないと思うけれど…笑)、その幽霊指揮者として有名な(?)アルベルト・ショルツなんていうのと混同してしまいそうでちょっと困ったものである。
私の持っている昭和31年発刊の「現代演奏家辞典」(渡辺護著)にルドルフ・アルバートという表記でこの指揮者についての記載があるが、それ以外で彼について書かれたものがほとんど存在しないようだ。(今度時間のある時にグローブで調べてみようと思う…)
1918年でドイツのフランクフルト・アム・マインに生まれ、ホッホ音楽院で学んだ。1945年、つまりは戦後、ヘッセン放送交響楽団の第2指揮者を皮切りに 1948年からバーデン・バーデンの第1指揮者。翌1949年からミュンヘンの放送局の指揮者となって活躍した。
客演は多く、チューリッヒ放送管弦楽団などにも継続的に客演をしていて、1950年代終わりにはベガ・レーベルなどに数多くの録音わ行っているし、マーキュリーにも随分録音しているはずなのだが、これらは全く復刻されていない。
1968年以降は小澤征爾が優勝したことでも知られるブザンソン指揮者コンクールの審査員としても名を連ねていたが、この頃以降の録音としては、ナクソスにブラッヒャーのピアノ協奏曲第1番の録音がある(こちら)他、テオドール・ベルガーのラ・パローラという作品の録音がある(こちら)
他にもストラヴィンスキーのハルサイやペトルーシュカ、あるいはメシアンなどまであるし、協奏曲やオペラなど幅広いレパートリーからいくつかが復刻されているので、知る人ぞ知るといったところではないかと思った次第である。
さて、この「悲愴」であるが、実に見事な演奏で、この指揮者の録音をあま積極的に聞いてこなかったことをちょっと後悔している。録音は1958年12月22日録音とあるので、彼が新進指揮者として確固たる地位についた後のものと言えよう。
現代ものなども得意としていたというが、全体として熱いパッションでねじ伏せるというものとは対極にある演奏で、品のある演奏だと思う。テンポの細かな変化は、音楽上必要最低限のものとしながら、奏者の呼吸などに配慮した職人的な演奏だと思った。かつて森 正氏の指揮がこんな感じだったような印象があるが、ああ誰か海野義雄と森 正で録音したモーツァルトの協奏曲なんて復刻してくれないかなぁ…。
こうした優れた指揮者による見事な演奏に出会えるからCD購入は止められない。いや全く…
第1楽章の展開部も、もっとおどろおどろしい演奏もあるし、男泣きに聞かせる演奏もよくある…(変な日本語だ!)。ムラヴィンスキーのように鉄骨入りのオーケストラ(笑)でガンガン攻めまくるのもあれば、ジョン・バルビローリやウィレム・メンゲルベルクのように情緒纏綿たる演奏もあるし、それを徹底的の磨き上げたカラヤンの名演や、男泣きに説得力抜群のフリッチャイ、あるいは泣くなんてみっともなくて…と流していく小澤征爾とパリ管の名演も…。数えたことないけれど、我が家には多分50種類くらいの「悲愴」がありそうだ。怖くて数えられそうもないが…(笑)。
だが、この演奏はそれらのどれにも属さない。良い演奏なのだが強烈な個性で聞かせるタイプではないのだ。ちょっとハイティンクに似ている気もするが、あちらは深い情緒でガンガンに歌わせているので、やはりちょっと違う。イーゴル・マルケヴィッチなんていうのが一番近いかなと思いつつも、この曲を聞き比べる元気は私にはないので、印象だけで語ってお茶を濁しておくことにする。
第3楽章を聞いていて気がついたのだが、他でもそうだが彼は無理をさせず、比較的オーケストラがやりやすいテンポ、表現でまとめている。これが音楽の品を与えているし、余裕を感じさせるのである。
この曲にそうしたものはいらないという人は絶対に名演とは思わないだろう。私はノーブルな味わいのチャイコフスキーも好きなので、気に入ったけれど、聞き終わって汗だくになるような演奏がお好きな方なら、他を探されると良いと思う。
ところで、私はこの演奏を聴いて、彼の指揮する「春祭」を聞いてみたくなって注文を出したところである。いつ届くかわからないが、またいつかレポートしてみようと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-08-31 18:21 | CD試聴記
映画「ジョーズ」(1975)の音楽
作曲者 : WILLIAMS, John 1932- 米
曲名  : 映画「ジョーズ "Jaws"」(1975)の音楽
演奏者 : ジョエル・マクニーリー指揮 ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
このアルバムは こちら

大学生の頃、この音楽を聞いたときストラヴィンスキーの「春の祭典」そのものでちょっとびっくりしたものであるが、これが映画音楽のレコードなどに入っているのを聞くと、どれも毒気が抜かれていて、平板な編曲でつまらなかったものである。
結局、サウンドトラックか作曲者自身の指揮するボストン・ポップスの録音ぐらいしかないと思っていたのだけれど、このマクニーリー指揮のものは録音も良く、大変良い。
ストラヴィンスキーばりのオーケストレーションもよく聞けるし、演奏もよく練れている。クラシックのオーケストラがやっつけ仕事で映画音楽をやっているのを、昔散々聞かされたこともあって、映画音楽を積極的に聞く気があまりなかったのだけれど、このシリーズはよさそうだ。
実はこの前にジョン・バリーの「愛と哀しみの果て」「野生のエルザ」などを聞いたのだけれど、それらもまずは満足できる演奏で、このジャンルが音楽だけで存在意義を持つ珍しい実例のように思えたものだ。確かにBGMとして書かれた「効果音楽」をそれだけで聞くのは邪道だろうし、そうして聞かれることを前提としていないだけあって、スコアをこうして延々と聞かされるのはちょっと辛い曲も含まれている。
が、一方でフィルム・スコアの熱烈なファンがいることでもわかるように、これはこれで完全に自立しつつあるジャンルであるとも言えよう。
これを聞きながら、あれこれは久石譲氏の「もののけ姫」のフレーズではないかと思ったり、新たな発見がたくさんあった。それは盗作とかそういう問題ではなく、一つの立派な音楽が新たな音楽の創造の源になるということだと思う。
でなければ、皆はモーツァルトの「魔笛」を盗作と言わねばならないし、シューベルトの五番の交響曲やブラームスの第1番のピアノ・ソナタも盗作であると非難しなくてはならないだろう。そんな馬鹿なと言うのであれば、「何かに似ている」というのを見つけて鬼の首でもとったような言い方をする(そういう輩が意外と多いのには悲しくなる…)のは止めた方が良い。
これは、この作曲家があの「スター・ウォーズ」なども含めよく言われることだからである。そんな見方、聴き方で音楽を聞くのは貧しいことだ。もっと楽しまねば…。
この録音、なかなか面白かった。なるほど多調性やモード、ポリコードの使い方など、かなり色んなところで私を刺激する。それははじめてこの映画を見たとき(テレビ放映だった…)の驚きと感銘は同じだった。映画そのものは、もう私にはどうでも良いのだが、このスコアが切り開いた地平は、大きかった。それは久石譲などにも受け継がれているが、娯楽映画にこういうスコアが生まれ、その優れた演奏・録音が生まれたことを素直に喜びたいと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-08-31 07:29 | ナクソスのHPで聞いた録音
神尾真由子の弾くパガニーニのカプリース…絶句…凄い!!
作曲者 : PAGANINI, Niccolo 1782-1840 伊
曲名  : 24の奇想曲 Op.1 (1805)
演奏者 : 神尾真由子(vn)
CD番号 : SONY BMG/BVCC-40001

この曲が好きで、色々と聞いてきた。リッチの古い録音から、これ以上はないと思われたマイケル・レビン等々…。レビンの後、私のスタンダードとなって長く私の驚異の対象であったのはMIDORIであった。彼女のような演奏は滅多に現れるものではないと確信し、以来、色々と買うのを止めてしまった。
そして、先日、iTuneで試聴したこの神尾真由子の演奏があまりに凄く、もう止めようと思っていた心を翻身させることとなったのである。
いや、凄い人がいるものである。1曲目を試聴しただけで、それも試聴時間は30秒しかないのに、完全に私を虜にしてしまった。果たして今、全曲を聞いてみて思ったのは、最も優れたパガニーニのカプリースはと問われれば躊躇なくこの神尾真由子の演奏を推薦するということだけである。
全く、冒頭から彼女の演奏は完璧である。そして輝かしい響きとカンツォーネのような浪々としたカンタービレ!!
この曲に求められる全て゛かこの演奏の中にある。
無伴奏のヴァイオリンの音盤なんてと思わないでほしい。たった一本のヴァイオリンが達成することのできる地平がこれほどまで広大で豊かであるか、まず知るべきだ。
この作品が多くの音楽家にインスピレーションを与え続けたことはよく知られている。まるで奇跡のような作品なのである。たった一本のヴァイオリンが歴史を変えたと言っても良いかも知れない。
リッチが復活させなければ、今は無かったかもしれない。その意味でもリッチの録音は一度は聞いておくと良いと思う。目覚ましい名演だと思う。しかし、レビンの颯爽とした節回しはまた大変魅力的で、新たなパガニーニ像を打ち立てたものと言えよう。
以後、長く、私にとってレビンの王座は揺るぐことはなかった。MIDORIの録音がでるまでは。そして今、新しく神尾が王座に君臨した次第。
今後は彼女のCDは全部買おうと、私は決意した。こんな凄いヴァイオリニストの弾くものは全て聞かなくては…。
by Schweizer_Musik | 2009-08-30 21:02 | CD試聴記
リッチの弾くサン=サーンス / イザイのワルツ・エチュード
作曲者 : SAINT-SAËNS, Camille 1835-1921 仏
曲名  : 6つのエチュード Op. 52 - 第6番 ワルツ形式の練習曲 (イザイ編曲)
演奏者 : ルッジェーロ・リッチ(vn), グレアム・マクナウト(pf)
このアルバムは こちら

実に技巧的で、それでいてとても洒落た作品である。もともとはピアノのための技巧的な小品(といっても7分ほどの作品!)であるが、それをイザイがヴァイオリンとピアノのために編曲している。
ヴェンゲローフのモスクワ・リサイタルのビデオで演奏されていたので、ナクソスにあるかなと思って見てみたら、75歳のルッジェーロ・リッチが演奏しているのを見つけて聞いてみた。驚くテクニック!!75歳の人のボウイングではない!!ここまでくるともうお化け、妖怪の類と思わざるを得ない。
そう言えば、ナタン・ミルシテインなども年取ってからも良い演奏聞かせていた…。
しかし、このリッチのは特別である。曲も極めて技巧的なものが多く、無伴奏作品もかなり入っているが、その見事なこと!!最初にバッハの無伴奏パルティータの第1番ロ短調が演奏されているが、これは最初、ちょっとテンポが上滑りしている感じがしていたが、第2曲あたりから焦点が定まってきて、圧倒的な説得力を増す。
ちなみに彼はゲオルク・クーレンカンプの弟子である。1930年代、神童として騒がれた後、ドイツでこの孤高のヴァイオリニストに学んだものは、こうした作品の筋目の通った解釈ではないだろうか?
神童として幼い頃を過ごした音楽家がどこかでそれがトラウマとなる傾向があるようだが、リッチはどうだったのかと思いつつ、きっとこの留学がそれを軌道修正したのではと、私は勝手に思いこんでいる。
若すぎる大成は、成人に達したときに行き場を失う、何か大きな喪失感を伴うようで、昔神童、今…という場合が多いことは、若い才能に対する大人のより慎重な対峙の仕方を示唆しているように思うのだが、如何?
さて、それはともかく、75歳のリッチの瑞々しい演奏を心から堪能したところである。
イザイの編曲は、あたかもこれがヴァイオリンのために書かれた作品かのような完成度で驚かされる。IMSLPでは、イザイの作品の中に置かれているので、楽譜を探す方は注意が必要だ。そうそう、ヴェンゲローフのリサイタルではイザイの作品として扱われていた。いや、それほど見事な編曲というべきであろう。弦楽器の書法の勉強にも良いだろう。作曲の学生は一度楽譜をよく研究してみると良い。
by Schweizer_Musik | 2009-08-30 16:14 | ナクソスのHPで聞いた録音
プッチーニの「つぱめ」を見る
プッチーニのややマイナーな作品である歌劇「つばめ(ラ・ロンディーヌ)」(1917)を見た。昨年の収録とのことで、公演のライブらしい画面の暗さなどはあるものの、まずは合格点で、オケはフェニーチェ劇場だけあって、大きな不満はなかった。
こんなオペラも衛星放送のおかげで見ることができる…。ミヨーの「哀れな水夫」、ピツェッティの「大聖堂の殺人」、更には新作で陳銀淑(チン・ウンスク)の作曲した歌劇「不思議の国のアリス」なんていうのも最近見た。
ヤナーチェクの「利口な女狐の物語」も…。
しかし、この「つばめ」。第1幕で歌われる「ドレッタの美しい夢」はやたらとアリア集などで持っていて、私にはお馴染みなのだが、古いLorin Maazelだったかの指揮した録音を持っていたけれど、ロクに聞かないまま、大阪で眠っている状態では、知っているオペラとはとても言えぬ。
筋立てがあまり劇的でなく、やや食い足りないと感じられたためだろうか、いささか上演される機会が少ないようだが、冒頭のサロンや第2幕のパリの社交界の雰囲気など、ああこんなところにヴェルレーヌやドビュッシー、あるいはピサロ、シスレーがいたのではなどと思って見入ってしまった。
少々猥雑な舞台は、時代設定や場所がニューヨークの下町のようで、服装もパリを想像するものではあまりない…。3幕のリヴィエラの海岸は、カリブ海のコテージのようでもある。衣装がなんだか1950年代のファッションにようで、ちょっと冒頭からすると違和感を感じずにはいられない。と言ってもそれは大したことではない。
音楽がそれを補ってあまりある美しいもので、圧倒的な説得力を持っているのだ。円熟のプッチーニの素晴らしいスコアに私は最高の敬意を表したい。
主役のフィオレンツァ・チェドリンス(sop)は頗る美声というのでも、容姿端麗というのでもないが、演技力と歌唱力で充分な説得力を持っている。ルッジェーロ役のフェルナンド・ポルターリは、筋肉隆々たる男でいかにも田舎から出てきたという感じではまり役。歌も誠実で朴訥とした雰囲気と優しさが出ていて、好演だと思った。
やや猥雑な演出(あまり私の好みではないが…)ではあるが、この二人の歌と演技で最低の品格を保っていると思う。それにしてもプッチーニの書いた音楽の美しいこと!!筋立ては「椿姫」とちょっと似ているものの、あんな葛藤や死といったドラマチックな舞台装置はここにはない。ただ、洒落た音楽と洒落た登場人物たちだけである。
DVDも出ているようだ。私はHDに録画したので、それをこれからは楽しむことにしよう。いや良いものを見た…。
by Schweizer_Musik | 2009-08-29 21:45 | クラシカジャパン視聴記録
新曲出来ました
作品名 ピアノのためのミニアチュール (2009) 第2曲 : いにしえの舞の幻想
編成 ピアノ・ソロ
演奏時間 1分37秒

置き場所 こちらのNEWのフォルダにAntique_Dance_Fantasy.mp3という名前でおいてあります。

昨日はモーレツな忙しさであった。おかげで今日は完全に使用不能で、寝て一日を過ごした。そんな中でも午前中は比較的時間があり、合間に先日の作品の続きとして「いにしえの舞の幻想」という小品を作った。お神楽のイメージを広げて行く中で出てきたアイデアをまとめたもので、右手がDes durでペンタトニックを中心に4度和声で出来ていて、左手はC-durの教会旋法というもので、フリギア、リディアなどを使っている。
ちょっと変わっていると言えば変わっているのだけれど、それほど不協和にはならないように書いたつもりである。お気に召せば良いのだが…。
by Schweizer_Musik | 2009-08-29 18:04 | 新曲出来ました
昨日の授業
テレビがますます低俗になっていく…。きっと野次馬的に面白いのだろうけれど、覚醒剤を使っていたという女優の話をこれでもかというほどほじくり出して電波にのせる…。犯罪を犯した者を単に有名人だったとは言え、その罪を認めさせ、更生させるのはマスコミの役割ではなく、罪をつぐない社会復帰する過程を正確に、そして冷静に伝えることが役割のはずだ。
彼女がどういう子供時代を送っていたとかそんなことを私たちが知らなくてはならないこととは到底思えない。テレビをつけて「サカイ」という単語が出てくるとすぐに消すという状態である。もういい加減にしてほしいと思うけれど、マスコミはやり始めたら止められないらしい。

昨日の授業は、無調の音楽をどう作るのかということを夏休み前の最後の授業に引き続き行った。今回はシェーンベルクの「ワルソーの生き残り」のスコアを分析したりしながら(結局管弦楽法の授業までこれを引っ張ってしまった…笑)どう無調にしていくのかということを説明した。
無調ってデタラメに音を並べているの?と言われることもなきにしもあらずである。まっ当たり前のことだけれど、デタラメに音を並べて無調になんか絶対ならない。
ともかく…、無調の音楽を書いてみよう。普通は良い音楽を書こうと思って作曲するのだけれど、ここではその正しい道からいささか逸れてみる。つまり目的は無調の音楽を書くことを第一義として作曲してみよう。
これは、ある意味でチャレンジである。今もってチャレンジであり続けていると私は考えているが、それは調性という音楽の書き方の基本、言ってみれば絵画における遠近法を捨てたピカソやブラックのキュビズムを音楽で試みるようなものであった。
シェーンベルクの「架空の庭園の書」あたりがその最初であろうか、あるいは弦楽四重奏曲を無調の試みとしてあげている人もいるようだが、この試みがやがて名作「ピエロ・リュネール」に結実することとなる。
音楽と絵画を同一視するのはどうかと思わなくもないが、キュビズムの出現と無調の「完成」が時期を一にするのは象徴的である。

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右手はハ長調のアルペジオ、左手は黒鍵だけのペンタトニックである。聞いてみたいならこちらのSCHOOLのフォルダのEx1で入っているのでダウンロードしてみてほしい。ちょっとドビュッシーのようにも聞こえるかもしれない。右手を白鍵、左手を黒鍵という風に考えていただければ簡単だ。
右手を白鍵、左手を黒鍵という風に考えていただければ簡単だ。これを少し発展させると全音音階を使う方法が思いつく。全音音階は2種類しかないが、この2種類を同時に鳴らせば、確実に無調になる。ただうまくやらないと右手と左手で通常の調性のハーモニーになってしまうのでご用心!次の例もちょっとそんなところもある…(笑)。
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音は同じところ(こちら)にEx2としてmp3のデータがあるのでダウンロードして聞いてみるとよい。
それならもっとと考えるのであれば、調性否定型の方法を試してみると良い。
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ある音程が考えられる調性の可能性を否定していくことで、調性感をなくしていく方法なのだが、作るのに結構手間がかかる上に、旋律ののびやかさが失われがちになることが多いと思われる。
これに対して、普通の調性音楽なら出てこないような広い音程を使うことと、半音階、そしてその間に音を一つ、二つ加えることで無調を作り出す方法である。
これが一番作りやすいようで、多くがこうした方法をとっている。
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このメロディーの中にはCからの半音階の下降と、Gからの半音階の下降が隠されている。探してみると良い。リズムはこうした音楽では特に重要で、メロディーの抑揚で興味を惹くことは期待できないのだから、リズムをより鋭くしたり、音程を予想外の音に持っていくことで変化をつけて興味を惹くように書くことが一般的である。
2つの半音階を隠して書いたが、別に2つでなくても良い。
これに、半音でぶつかる和音わつけるとより調性感が希薄になる。
このように無調で書くということは、調性をなくすという意志が必要となるのである。決してデタラメに書くのではなく、一つ一つに意志を持たないととても書けるようなものではない。ただ、それが面白い音楽なのかどうかは別問題であることを忘れてはならないが…。
このメロディーにクラスター(音塊)の響きを背景につけると、ちょっとしたミステリーなどの劇伴程度にはなると思われる。
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音は同じところ(こちら)にEx5としてmp3のデータがあるのでダウンロードして聞いてみるとよい。
これらの様々なヴァリエーションを試みたのが戦後の前衛音楽だったのだが、まず最初にその中心になったのはセリエルであった。そのことについて、来週は授業でやる予定である。

続いてオーケストレーションの授業では、弦楽器についてその機能と技術について説明した。ボウイングの説明から、調弦、ポジション、そしてダブルストップなどについて、その技法を使ってのアルペジオなどの弦楽器特有のフレーズやフラジオレット、ピチカートのいくつかの種類についてなどをザァーッと説明して終えた。

追記…
体調を崩して休んだKさん、よく読んでおいて下さいね…。くれぐれもお大事に!そして直ったら元気なお顔を見せて下さい。待っています。
by Schweizer_Musik | 2009-08-27 12:43 | 授業のための覚え書き
新曲出来ました 涼しげに「水琴窟の幻想」というミニアチュール
作品名 水琴窟の幻想
編成 ピアノ・ソロ
演奏時間 1分33秒

置き場所 こちらのNEWのフォルダにFantasy_of_Water_harp.mp3という名前でおいてあります。

昨日は授業で欠席があったので、ちょっと時間があまったので、その時間を利用して小さな曲を書いてみた。
水琴窟は最近は随分知られるようになったが、以前テレビで見て(聞いて)その涼やかな音に思わず惹きつけられたものである。
その音のイメージを音楽にしてみようと思ったらふわっと曲が頭の中に浮かんできたのでそれを書き留めてみた。日本の庭園にこうした優しい響きがかつてあり、近年、それを復活させた職人の意気と、洗練への憧れを水琴窟の澄んだ響きと暑い夏のイメージが重なってきたもの。いかがでしょうか?
by Schweizer_Musik | 2009-08-27 08:59 | 新曲出来ました
ラロのバレエ音楽「ナムーナ」全曲
作曲者 : LALO, Edouard 1823-1892 仏
曲名  : バレエ音楽「ナムーナ」全曲 (1882)
演奏者 : デイヴィッド・ロバートソン指揮 モンテ・カルロ・フィルハーモニー管弦楽団
このアルバムは こちら

ラロってスペイン交響曲ぐらいしか聞かれない。まれに歌劇「いすの王様」の序曲あたりがまれにとりあげられる程度では、なかなか文句を言う機会もないので、このあたりでちょっととりあげてみたいと思った次第。
バレエ音楽「ナムーナ」はエルネスト・アンセルメとジャン・マルティノンが録音しているが、最近はどうなのだろう?素晴らしい傑作だと思うのだが、あまり演奏される機会はないようだ。残念なことだ。
ドビュッシーがこの曲を高く評価していたことはよく知られているが、バレエのレパートリーとしては定着しなかった。
さて、アンセルメやマルティノンの録音は(両者とも複数回録音しているようだが、私はステレオ録音の方しか聞いていない)いずれも組曲版、もしくは抜粋版で、完全な全曲版ではなかったが、このロバートソン盤は全曲版らしい。かつて全曲版が録音されたことがあったのかどうかは知らないが、この録音はアンセルメのような天性のリズム感やマルティノンのような輝きに溢れたサウンドはないが、現代の優れたオーケストラ技術と最新の録音技術によって存在価値を主張することになるだろう。
ラロをスペイン交響曲をだけしか知らない人には、この19世紀フランスの作曲家がいかに優れた音楽を書いていたかを知るためにもぜひ一度聞いてみてほしいと思う。
しかし、この全曲を良い音で自由に聞くことができる時代になったということを心から喜びたい。かつてなら、これを聞くために随分お金わかけないといけなかった。LP時代からの私などには夢のような時代だと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-08-25 08:24 | ナクソスのHPで聞いた録音