曲名 : ブラームス/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83 (1878-81) 演奏者 : マウリツィオ・ポリーニ(pf), クラウディオ・アバド指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : Grammophom/UCCG-9500 亡くなった友人のヴァイオリニストと話したことを思い出した。彼は長年コンマスとしても仕事をしてきたから言えた言葉かも知れないけれど、偉くなる指揮者って、いつも同じテンポなのだと言っていたっけ。色々な人がいるから、これが偉くなる指揮者の条件とか言うのでは決してないけれど、ポリーニとアバドの弾くブラームスの2番を聞いていてそのことを思い出した。 この録音は1976年5月の録音なのだけれど、この二人、オケをベルリン・フィルに変えて、ほぼ20年後の1995年12月に行った再録音がある。そしてこの2つの録音の演奏時間がほとんど変わらないのだ。聞いた感じもほとんど同じ。この変わらなさと、友人の言葉とどこかオーバーラップして思えてくる。 オケはウィーン・フィルとベルリン・フィルで多少のテイストの違いはある。奏者が違うのだから当然だけれど、テイストは全く同じ。二人のこの曲への解釈がこの50年前の録音の時点で完成していたということもあるだろうけれど、思いつき、場当たり的な演奏ではない、確固たるものがこの演奏にはあるように思える。 考えに考え、推敲に推敲を重ねて行ったブラームスに相応しい演奏だと思う。 二人ともイタリア人だから歌心がどうのという国籍に起因する思い込みに支えられた評が、これほど相応しくない演奏も珍しいと思う。ブラームスがこの演奏を聞いたらニコニコと満足するに違いないと、私は思う。
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by Schweizer_Musik
| 2023-04-17 04:59
| CD試聴記
曲名 : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68 (1876)
演奏者 : クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : Grammophon/435 6832 持ってるだけで、ロクに聞いていないCDを聞こうと思い立ち、ブラームスの交響曲全集を聞きはじめる。 大学祝典序曲、運命の歌、そしてこの交響曲第1番となるのだけれど、録音もよく、演奏も深々としたブレスで、実に心地よい。何しろどこをとっても真っ当で、伝統的なブラームスが聞けるのは嬉しい。 聞き進んで、終楽章のアルプスの山並みに響くがごときホルンのアンサンブルの後の有名な開放弦のG音からはじまるメロディーが流れてくると久しぶりにグッと胸に迫るものを感じた。 そう言えば、ウィーン・フィルとの旧盤もあったはずなのだが、今回見つけられず…。ともかく1990年11月録音のこの演奏を心から堪能して満足した。 ボンヤリと聞き流すことが最近増えていたことを反省しつつ、アバドの遺産をしばらく辿ってみようかと思う。 #
by Schweizer_Musik
| 2023-04-17 04:13
| CD試聴記
曲名 : 歌劇「マドンナの宝石」(1911) 第1幕への間奏曲 演奏者 : アンドルー・デイヴィス指揮 フィルハーモニア管弦楽団 CD番号 : EMI/TOCE-13291 学校用のハードディスクのデータを整理していて、こんなCDのデータが出てきて、捨てようかどうしようか迷って聞き始めたら、なかなか良いので残すことに…(笑) マドンナの宝石の他にはエルガーの「愛の挨拶」やローザスの「波濤を越えて」などが入っていた。 若い新人指揮者で、コリン・デイヴィスとよく間違えていた頃から、イギリス音楽を中心に聞いていたけれど、こうしたポピュラーな小品集も丁寧な仕上げで、なかなかよく聞かせる。 こうした曲集なら、カラヤンが1番だが、彼が録音していない作品もここに入っているし、カラヤンの録音があるものでもそんなに遜色のない良い出来で、聞いていてなかなか愉しく、つい一通り聞き通してしまった。
はるか昔、こうした曲集を持っていたけれど、演奏は誰だったか…。そんなことを気にもしていなかった時代、クラシック音楽に親しみ始めた頃、大分お世話になった曲も多い。なんだか懐かしくもなり、昔、聞き込んだ曲だけに、メロディーも和声進行も、オーケストレーションも憶えていて、あれ、ここにはトランペットが重なっていたっけ…なんて、改めてスコアを探してみたり…。 愉しかった!!(笑) 収録曲は以下の通り。 1. エルガー/愛のあいさつ "Salut d'amour" Op.12 (1889) 2. スッペ/喜歌劇「軽騎兵 "Die leichte Kavallerie (Light Cavalry)"」(1866) 〜 序曲 3. レハール/ワルツ「金と銀 "Gold und Silber"」Op.79 (1902) 4. ポンキエルリ/時の踊り "Tanz der Stunden" (1876/1880改訂/歌劇「ジョコンダ "La Giaconda"」より) 5. ワルトトイフェル/ワルツ「スケートをする人々 (スケーターズ・ワルツ) "Les Pâtineurs"」Op.183 (1882) 7. ヴォルフ=フェラーリ/歌劇「マドンナの宝石」(1911) 第1幕への間奏曲 8. イヴァノヴィチ/ワルツ「ドナウのさざ波 "Flots du Danube"」(1880) 9. ボロディン/交響的絵画「中央アジアの広原にて "Dans les steppes de l'Asie centrale"」(1880) 10. ローザス/波濤を越えて "On The Waves" (1891) 11. マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(1890初演) 〜 間奏曲 "Intermezzo" 12. エルガー/行進曲「威風堂々 "Pomp & Circumstances"」Op.39 第1番 ニ長調 (1901) 13. ヘンデル/ヘンデルのラルゴ "Largo De Haendel" (1738/歌劇「クセルクセス」HWV.40 第1幕 第1場より) 1987年6月録音 #
by Schweizer_Musik
| 2020-08-15 12:41
| CD試聴記
曲名 : 「コリオラン」序曲 Op.62 (1807) 演奏者 : コリン・デイヴィス指揮 バイエルン放送交響楽団 CD番号 : SONY-Classical/SICC 1763 コリン・デイヴィスがSONYにこんなものを録音していたとは知らなかった。 サー・デイヴィスは結構当たり外れがある。ベルリオーズなんて最強の自信で演奏していて、説得力抜群だったりするけれど、何度も録音しているホルストの惑星は、外れの内2入る。山っ気タップリの話を生真面目に説明されているみたいで、もう良いよと言いたくなる。 ベートーヴェンの交響曲全集も持っていたと思うけれど、印象に残っていない。で、この録音はさてどんなものかと、おっかなびっくり聞き始めたのだけれど、コリオラン序曲の低速ぶりに驚き、やっぱり今ひとつかと思っていたら、次第に引き込まれ、完全にノックアウト…(笑)。 この重心の低い音は超弩級だ。 確かにテンポが速いと、音が鳴りきらないで次々と進んで行く傾向がある。だから響きの重心が上がる。ベートーヴェンの書いたメトロノーム・テンポに合わせて、速いテンポをとる演奏がなんだか主流になっているけれど、サー・デイヴィスの指揮するバイエルン放送交響楽団のゆったりとした歩みは、かつての巨匠たちの時代に聞いていた響きを思い起こさせるもので、古楽器などによるオーセンティックな演奏からすれば、対極にあるものだろう。 しかし、ブルーノ・ワルターやフルトヴェングラー、カール・ベームや朝比奈隆を聞いて育った私のような者には、この重心の低い響きと、息苦しさのない余裕綽々のテンポから来る豊穣な音の世界は、とても魅力的で、今だからこそ新鮮でもある。 他の作品も全て、名演!! こんな録音を知らなかったとは…。はい、大当たりでした(笑)。 収録曲は以下の通り。 1. 劇音楽「アテネの廃墟」Op.113 (1811) 〜 序曲 2. 「コリオラン」序曲 Op.62 (1807) 3. 「レオノーレ」序曲 第1番 Op.138 (1800-07) 4. バレエ音楽「プロメテウスの創造物」Op.43 (1800-01) 〜 序曲 5. 劇付随音楽「エグモント」Op.84 (1809-10) 〜 序曲 6. 「レオノーレ」序曲 第3番 Op.72b (1806) 7. 歌劇「フィデリオ」Op.72 (1804-05/1814改訂第3版) 〜 序曲 8.「レオノーレ」序曲 第2番 Op.72a (1805) #
by Schweizer_Musik
| 2020-08-12 04:05
| CD試聴記
曲名 : 大序曲「1812年」Op.49 (1880/合唱Ver) 演奏者 : アントニオ・パッパーノ指揮 ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団, 合唱団 CD番号 : EMI/0946 3 70065 2 8 この作品は、不幸な生い立ちを持っている。もともと開かれる予定の産業博覧会のためにニコライ・ルービンシュタインが依頼したもので、最初、出版社経由での依頼だったが、「自分自身が感動しないであろう作品に手を付けることはできない」と断ったものの、ニコライ・ルービンシュタイン自身からの直の手紙での依頼に重い腰をあげて作曲したものだった。 作曲中も「序曲はおそらく騒々しいものになる。私は特に愛情を持って書いたつもりはない」と弟アナトリーへの手紙に書いているほどで、出版社にも「良い作品にはならないだろう」とまで書いている。11月7日に作曲を終えているが、1881年春、その博覧会は開かれず、更に依頼主のニコライ・ルービンシュタインが3月23日に亡くなって、この作品は宙にういてしまう。 結局、初演される前に、スコアなどが出版されるという、珍事まで起きたこの作品は、1882年8月にモスクワで初演された。ただ、初演の批評は散々で、凡作であると片付けられた。その後も何度か演奏されているが、評判はあまりバッとしなかった。その点で、作曲者が出版社に宛てた「良い作品にはならないだろう」という予感は当たった。 しかし、作曲から七年、転機が訪れる。 曲に改訂が加えられ、作曲者自身の指揮によって、サンクトペテルブルクにおける演奏会でこの曲は大成功を収めたのだった。作曲者自身が日記に「満足!」と書いている。 原作には大砲をここで放てという指示があったり(実際に大砲が使われることもある)、任意ではあるがバンダを使うこともある。ただ、合唱を使うという指示は原作にはないのだけれど、冒頭のヴィオラとチェロで演奏されるロシア正教会の聖歌「神よ汝の民を救い」が、合唱に置き換えて演奏されることが時々行われる。以来、あちこちでこの曲が取り上げられ、名曲の仲間入りを果たしたのだった。 曲はいつものチャイコフスキーのスタイルで、少々分かりにくいが、長い序奏(二部に分かれている)があり、展開部を持たないソナタ形式による主部が続く。その点、同じ頃に作曲された弦楽セレナードの第1楽章に近い構造を持っていると言える。その序奏のメロディーが再び戻ってくる点も同じである。 さて、第2主題の後、ロシア民謡風の小さなエピソードが挿入される(207小節〜)がモスクワの西部、ボロジノの民謡だとかで、その部分も歌われることがある。(これは二度出てくる) この後、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が崩壊し、ロシア正教会の聖歌が壮大に再現(合唱版はここで大合唱で歌い上げる)することになる。 戦争を描くことに、チャイコフスキーは躊躇したのかも知れない。また、政治に関わることを躊躇したのかもしれないが、結局作曲者の予想を裏切り、この曲はチャイコフスキーの作品の中でも特に人気のある作品となった。 アントニオ・パッパーノはイギリス出身のイタリア系の指揮者。あちらこちらの歌劇場でコレペティトールを務めて、力をつけて指揮者としてデビューした。昨今珍しい影議場のたたき上げ指揮者なのだ。 オーケストラは1908年創設で、1584年創設の音楽院に付属している。多分音楽院としては、世界で最も古い学校だろう。 で、この演奏。ロシアの音楽はロシア人に限るなどという本場主義とでもいうのか、そうしたことがただの幻想に過ぎないと思い知らせてくれる名演である。オケの響きも重心の低い、見事な安定度で、この軽薄になりやすい描写音楽を、しっかりとした音楽作品として再現している。 昔のフリッツ・ライナーなどのような隅々までビシッと決めたような息苦しさとは無縁の、伸び伸びとしたフレージングもまた魅力的だ。収録された他の作品も素晴らしい名演!!一聴をお薦めしたい。 抄録曲は以下の通り。 1. 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ "Francesca da Rimini"」Op.32 (1876) 2. 幻想序曲「ロミオとジュリエット」TH.42 (1869/70. 80改訂) 3. ワルツ "Valse" (1877-78/歌劇「エフゲニ・オネーギン」Op.24 第2幕 第1場より) 4. ポロネーズ "Polonaise" ((1877-78/歌劇「エフゲニ・オネーギン」Op.24 第3幕) 5. 大序曲「1812年」Op.49 (1880/合唱Ver) #
by Schweizer_Musik
| 2020-08-10 10:47
| CD試聴記
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