オイストラフ/EMI全録音集(17CD)より (1)
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ三重奏曲 第7番 変ロ長調 Op.97「大公」 (1810-11)
演奏者 : ダヴィド・オイストラフ(vn), スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー(vc), レフ・オボーリン(pf)

大公という何だかいかめしいような名前がついているせいか、スケール雄大な音楽ととらえられることが多いけれど、悠然としたテーマがそれらしく、更にいかにもベートーヴェンらしい入念な主題労作と展開が、大きなパースペクティヴの中で行われるこの音楽に「大公」というタイトルが良いかどうかは別にして、確かに大きな作品であると思う。
オイストラフをはじめとして、このメンバーによる録音はいくつも残っているけれど、代表させるとすればこの曲ではないか?
EMIレーベルに録音した全てをCD17枚にまとめたセットが、iTuneで4500円で出ていたので、つい衝動買いし、DVDに焼いて持ち歩いて聞いていた。列車の中で仕事もせず音楽を聞いて良い気分に浸っていたわけで、なんとも申し訳ないような…(笑)。
この曲は変に熱演するとグチャグチャになってしまう不思議な音楽である。力が有り余っているソリストたちが、耳を澄ましてフレーズをやりとりする中から自然と音楽が広大な地平がひらけていく…そんな音楽である。そこのところ、このダヴィド・オイストラフ(vn), スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー(vc), レフ・オボーリン(pf)の3人の演奏はわきまえているのは当然だ。ソリストとしても一流の彼らが、耳を澄ましてお互いのフレーズに反応し、音楽(ムジツェーレン)している姿から浮かび上がるこの作品の圧倒的な大きさ…。
列車で隣り合わせて乗った女性の無礼などすっかり忘れて、実に良い気分で聞き惚れていた。朝の通勤がこんなに楽しいことは久しぶりであった…。
しかし、こんなに聞けるかなぁ…CD17枚分ってなかなか大した量である。半分以上はすでに持っているものであり、何度も聞いたものなのだけれど。
by Schweizer_Musik | 2008-11-06 00:11 | CD試聴記
<< オイストラフ/EMI全録音集(... フルネ追悼…デュカスの交響曲を聞く >>