ムストネンの弾いたベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15 (1794-95)
演奏者 : オリ・ムストネン(pf), タピオラ・シンフォニエッタ
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個性的な演奏ということで名高いムストネンによるベートーヴェンである。果たして今まで聞いたことのないような協奏曲に仕上がっている。
タッチは輝かしく、素性の良さを感じさせるが、この強烈に偏った解釈は賛否を呼ぶだろう。でも確かに面白い。古楽器によるものとはまた違ったものだが、私にはデフォルメが過ぎるように思われる。
第1楽章からテンポを大きく動かしながら、音楽を隈取り深く表現していくのが、私には煩わしいを感じられる。私は充分に保守的な人間だからそう感じるのかも知れないし、これを面白いという人は多いだろう。
しかし、こうしたマニエリズムの風潮が蔓延ることは、好ましいこととは言えないと思う。ピアノにグレン・グールドのような閃きがあまり感じられない。というか、恣意的に聞こえてしまうのだ。テンポはこれほど大胆に動かすのはどうなのだろう?
普段あまり聞こえないパッセージを強調してみたり、アクセント、あるいはノン・レガートの多用など、グレン・グールドのスタイルをどこか彷彿とさせる(彼のこの曲の録音はもっとまともだったけれど…)。
第1楽章のカデンツァは耳慣れないなと思ってネットで色々と調べてみたらムストネンの自作なのだそうだ。この部分は彼の作品であるだけに、説得力抜群であった。
こうした個性的な解釈ゆえにオケと指揮者なしで共演することとなったのだろう(勝手な想像…)。
一方オケもこの解釈に合わせた表現だが、それほど耳にきつくなかった。
アンサンブルはとても良いし、悪い演奏ではない。この個性が受け入れられるか受け入れられないかに関わっている。
私にはちょっと…であった。ファンの方、ごめんなさい!
by Schweizer_Musik | 2008-11-06 20:21 | ナクソスのHPで聞いた録音
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