冬の夜の慰めに (32) チャイコフスキーの劇音楽「ハムレット」
作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名  : 劇音楽「ハムレット」Op.67bis
演奏者 : ジェフリー・サイモン指揮 ロンドン交響楽団, ジャニス・ケリー(sop), デレク・ハモンド=ストロード(br)
CD番号 : CHANDOS/CHAN10108X
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激しい幻想序曲版もあるのだけれど、ここでとりあげるのは劇音楽の方。シェークスピアの方は、高校生の頃に読んだだけで、以来、すっかり遠ざかっているけれど、そんなことはロクにわからなくても、この音楽は充分に楽しめる。
かわいいファンファーレを挟みながら、チャイコフスキーの美しいメロディーが次から次へと紡がれていく様は、第一級の音楽である。グリーグの「ペール・ギュント」やビゼーの「アルルの女」など劇音楽で有名になった作品は数多いけれど、このハムレットももっと有名でも良さそうなものだけれど、世の中不思議なこともあるものである。
1891年の作曲・初演というから、「くるみ割り人形」の後に書かれたのではないだろうか。いずれにせよチャイコフスキー円熟の筆になるものである。
歌あり、充実したオケの小品あり、軽い場面の伴奏もあったりする。時々交響曲に使われた素材の木霊が聞こえてきたりして、知的好奇心もいささかくすぐられたり、いや楽しいのである。
ジェフリー・サイモン指揮ロンドン交響楽団と私はあまり存じ上げないけれど実力派らしい歌手たちのの演奏は、このあまり親しいとは言えない作品と、はじめて出会う者にとって大変優れた演奏で応えている。
チャイコフスキーのなんとももの悲しい響き、歌い口に心が締め付けられるような思いで、5幕への間奏曲のように第5交響曲のようなクラのメロディーに弦の重々しい行進曲のリズムの伴奏に、遠く、シューベルトの「冬の旅」の冒頭の音楽の寒々とした世界を聞くのである。
バリトンの声にもう少し品があれば…ああこれだけの演奏なのに文句を言っては罰が当たる…。寒い夜長に、昔買ったシェークスピアの本をちょっと取り出して読みながら、この曲を聞いてみよう。
by Schweizer_Musik | 2008-12-07 21:36 | (新)冬の夜の慰めに…
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