ノット指揮のマーラーの五番…凄い…
作曲者 : MAHLER, Gustav 1860-1911 オーストリア
曲名  : 交響曲 第5番 嬰ハ短調 (1901-02)
演奏者 : ジョナサン・ノット指揮 バンベルク交響楽団
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TUDERのナクソス参戦で、手に入りにくかったこのレーベルの名盤が、再び聞くことができるようになったことは、大変喜ばしいことである。
ラフの交響曲全集をはじめ室内楽の録音など、メジャーは絶対に手を出さないものであるし、リゲティの録音で知ったノットのシューベルトの交響曲全集やマーラー、ブルックナー、更にはストラヴィンスキーの春の祭典などの録音は、特筆大書すべき名盤だと思う。
実は、ほとんどCDで持っているので、今更とも思ったのだけれど、買いそびれたものもあり、そのまま手に入らなくなったものも少なくないだけに、このTUDERのナクソス参戦(言い方良くないかなぁ…)は私には嬉しい出来事だった。
できればスイスの作曲家を沢山録音しているMGBやイェックリン、あるいはトゥーンに本社があるクラヴェスなど待望するレーベルはあるが、その一角が参加したことに心からうれしく思う。
その中からマーラーの第5番を紹介しよう。
第二次世界大戦が終わって、チェコから逃れて来た(我が国の敗戦によって中国から逃れた多くの同胞を思い出す…)ドイツ人たち(彼らはプラハでドイツ系のオーケストラを組織していた人達だった)によって南ドイツのバイエルン州バンベルクに結成されたオーケストラである。
昔はカイルベルトが長く率いていたので懐かしく思い出される方も多いのではないだろうか。2000年以降はこのジョナサン・ノットが率いているそうで、この録音が2003年のものということで、彼らが素晴らしい成果をあげていることを発売当初強く印象づけたものである。
二年ほど前に来日し、評判となったことも憶えておられるのではないか?

さて、私のマーラーの第5番のスタンダードは、今はアントニ・ヴィト指揮による演奏であるが、ノットの演奏はそれよりはるかに若々しい演奏で、冒頭から聞く者の心を鷲づかみにするような求心力のある演奏だ。録音も素晴らしい。
なにしろオケの反応の良さはなんだろう!!打てば響くというのはこんな状態なのではないだろうか。巨大なマーラーのオーケストレーションは、意外にも室内楽的なセンス、奏者個々の鋭い耳と反応力、運動神経の良さが必要なのだ。
ただ肥大化したオケでは話にならない…。それがこのノットの指揮では見事なアンサンブルをバンベルク交響楽団が演じている。
良いオケだ。管楽器の輝かしさも素晴らしい。この曲では特に金管が活躍するので、その力量が問われるのだが、さすがという演奏である。
アントニ・ヴィトの演奏もとても良いのだけれど、残響の多い録音が、雰囲気を出しているのだけれどわずかにディティールがぼやけているのは惜しいところである。ヴィトの演奏が大人の円熟した運びに魅力があるとすれば、ノットの演奏はもっと直裁で若さが魅力だ。
どちらが良いかという選択は私には難しすぎる。でも今はちょっとノットの方に心が傾いている。一度みなさんもいかが?
by Schweizer_Musik | 2008-12-11 19:39 | ナクソスのHPで聞いた録音
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