貴志康一のヴァイオリン作品を聞く
作曲者 : KISHI, Koichi (貴志康一) 1909-1937 日本
曲名  : ヴァイオリン曲集 (1934出版)
演奏者 : 小栗まち絵(vn), 戎 洋子(pf)
CD番号 : VICTOR/VICC-154

ノーベル賞の授賞式を先日テレビで見たけれど、大変晴れやかで嬉しいことだった。今から六十年ほど前、湯川秀樹博士が受賞された時は、こんなテレビ中継はなかったが、日本中が沸き立ったと聞く。そりゃそうだろう。戦争に負けて、世界中から叩かれ続け、日本は誇りを失い、いやな事件なども立て続けに起こっていた時代である。
日本の学術研究が世界に評価されたことに、誇りの一端を取り戻す思いで、日本は沸き立ったのだった。
その湯川博士の受賞の晩餐会で演奏されたのがこの貴志康一の曲集から「竹取物語」だった。

貴志康一はわずか28才で生涯を終えたヴァイオリニストにして作曲家だった。大阪生まれで、芦屋育ち。ジュネーヴ音楽院などに留学し、自作品をベルリン・フィルとともに録音したほどの人物である。
彼があんなに若く亡くならなければ、日本の音楽界は豊かなたくさんの果実を手にしていたことだろうが、早世がなんとも惜しまれる。
その彼の「竹取物語」を含む曲集と彼の書いた歌曲のいくつかがこのCDに録音されている。
小栗まち絵のヴァイオリン、戎 洋子のピアノによるヴァイオリン曲集は1934年にヨーロッパで出版されたもの。ちなみに歌曲集もこのCDにおさめられたいくつかはヨーロッパで出版された。
歌曲では「かごかき」が最も有名である。
1930年代はじめ。まだ作曲界は黎明期だった。その時代に自らのアイデンティティーを託した作品群を、我々は心して聞くべきだし、そうする中からこそ、彼の音楽の素晴らしさが聞こえてくるのではないだろうか?

ビクターはクラシックCDの制作販売をやめるのだそうだ。これらの録音もCDが市場にある限りとなるようである。興味のある方はどうぞお急ぎあれ!!
by Schweizer_Musik | 2008-12-18 04:11 | CD試聴記
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