ハンドリー指揮によるバックスの交響曲全集から
作曲者 : BAX, Arnold 1883-1953 英
曲名  : 交響曲 第4番 (1930)
演奏者 : ヴァーノン・ハンドリー指揮 BBCフィルハーモニック
CD番号 : CHANDOS/CHAN 10122(5)

5枚組のこのセットは、バックスの演奏史上、最も目覚ましい成果の一つではないだろうか。そして先日惜しくも亡くなったハンドリーの生涯における最高の録音の一つではないだろうか。
ブライデン・トムソンの録音をすでに持っていた英シャンドスがバックスの没後50年を期にハンドリーと再び全集録音に挑んだのは実に興味深い。
私の好きな第4番をとりあげてみたけれど、この曲のシャンドスの旧盤となったトムソンの録音は彼の録音の中でも最も良い出来の一つであった。アルスター管弦楽団も実によく反応している。
ナクソスにあるロイド・ジョーンズ盤は音楽の腰の高さが難点。ついついテンポがすべってしまうのだ。冒頭から不安定につんのめり、重厚さが霧散してしまっている。
また冒頭部分のオルガンもハンドリーではとてもよく聞き取れ、この分野でもシャンドスは大変進歩している。
テンポの良さは特筆すべきで、第1楽章のAllegro moderatoがこれほど相応しいのも今までになかったことだ。即ちトムソンの録音はModeratoだし、ロイド・ジョーンズの録音はAllegrettoであった。主観的な問題ではあるけれど、このテンポの良さが音楽の部分部分の性格を強調し、味わいを深くするのに役立っている。
マンチェスターのBBCフィルハーモニックも大変優れたアンサンブルで聞かせる。このオケが優秀なのは知っていたけれど、これほど輝きに満ちた演奏は珍しい。
第3楽章の音楽はストラヴィンスキーやプロコフィエフなどの影響を感じさせる、バックスとしてはかなり新しいスタイルに踏み込んだ作例であろうが、こうした音楽になるとトムソンのテンポの緩さ(遅いというのでなくしまりのないテンポというか…)は音楽をこわしてしまいかねない。
ロイド=ジョーンズ盤はうまくまとめているけれど、サラサラ流れていくだけでは音楽で感動は得られない。
ハンドリーはこうした問題点を全て乗り越えた、はじめての録音だ。第2楽章もよく歌い、不思議な懐かしさを感じさせるほど、なんとも言えない余韻がうれしい。
こうした録音が、ナクソス・ミュージック・ライブラリーにいまだアップされていないのは残念だ。(ちなみに、トムソンの全集もないのはどうしたことだろう…)
それはともかく、聞きたければ買えということ。お金を払っていただけないと、音楽業界は干上がってしまいますので…。
それにしても良い演奏だ。5枚組で、最後の一枚がハンドリーへのインタビュー。これはいらないから、もう少し安いと嬉しいのだが、ちょっと一万近いのはきつかった…(笑)。
by Schweizer_Musik | 2008-12-18 20:47 | CD試聴記
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