出会い…スイスと音楽、そして津田理子さん -01
津田理子 〜 Musik Treffen in YOKOHAMA 〜 Vol.2

5月24日に行われるコンサートに向けて、スイスと音楽について小さな連載を行います。そしてそれをまとめたものが、当日のプログラムとして頒布されるということを考えています。
その第一回です。
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上の絵は津田さんのコンサートによく行かれる方はお馴染みとなっているのですが、ご主人の指揮者ダニエル・シュヴァイツェル氏がとても若い頃に書いたもので、津田さんのお宅の玄関を入ったところに飾られている絵です。
私はこの絵が好きで、今回の作品「風のダイアローグ」はこの絵からもインスピレーションを得たのですが、その話はまたいつか…。

 さて、スイスと言うとみなさんはどういう印象をお持ちですか?ヨハンナ・シュピリが書いた名作「アルプスの少女ハイジ」を思い出す人も多いのではないでしょうか?あのイメージのままの風景が今もスイスのあちらこちらに残っていて、日本からもたくさん訪れる観光客の人たちを思い出す人も多いのではないでしょうか?
 スイスは日本の九州ほどの国土で、地方分権の国です。小さな村がパッチワークのようになって州になり、連邦国家となっています。小さな国ですが、観光だけでなく化学工業や国際金融、あるいは有名な時計産業などが
 でも、スイスと音楽というとあまり結びついては来ないようです。チューリッヒやベルン近郊のトゥーンなどにブラームスが滞在し多くの音楽を書いたというのはご存知ですか?
 リヒャルト・ワーグナーがチューリッヒの銀行家ヴェーゼンドンクの庇護を受けて、長くこの町に住み、更にルツェルンに邸宅を構え、コジマとの結婚生活をスタートさせたことは?
 フランツ・リストがダグー夫人と道ならぬ恋に落ち、逃避行の地としてスイスを選び、ジュネーヴ音楽院の最初の教授陣の中にその名前が見出されることは?
 ストラヴィンスキーやフォーレ、あるいはチャイコフスキーなど、スイスと浅からぬ縁で結ばれた作曲家たちもそうですが、スイスに生まれた音楽家たちも数多くいます。ダルクローズのように教育の世界で名高い音楽家もいますし、世界的な名指揮者エルネスト・アンセルメもスイス人でした。作曲家ではアルテュール・オネゲルやフランク・マルタン、オトマール・シェック、ウィリー・ブルクハルトなどが近代では重要でしょう。
 スイスにはオーケストラもいくつもあります。ジュネーヴにあるスイス・ロマンド管弦楽団、チューリッヒにあるチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、チューリッヒ室内管弦楽団、チューリッヒ交響楽団、バーゼルにあるバーゼル交響楽団、バーゼル室内管弦楽団、ヴィンタートゥーアにあるヴィンタートゥーア・コレギウム・ムジクム、ローザンヌにあるローザンヌ室内管弦楽団、ルガーノにあるスイス・イタリア語放送管弦楽団などなど。他にのまだまだありますが、スイスが小さな山国だと思いこんでいる人には意外なほど音楽が盛んだなと思って頂けるのではないでしょうか?
 合併などしてかなり変わってきたものの、オーケストラ活動は活発に行われています。この他に、チューリッヒ歌劇場も専用のオーケストラを擁していますし、スイスが音楽はアルペン・ホルンとヨーデルぐらいだということが誤解だということはご理解いただけたものと存じます。
 さて、そういうスイスに根をおろし、活発な演奏活動を行ってこられたのが、今日お迎えするピアニスト津田理子さんです。お住まいになっておられるのはチューリッヒ近郊の小さな村。静かな環境の中で子育てをし、ご主人を支え、自らもピアニストとして活発な活動を行っておられるのです。
 ご主人はチューリッヒ交響楽団の創立者にして二十五年にわたって音楽監督をされた指揮者のダニエル・シュヴァイツェル氏。チェロのディプロマを持っておられ、セルジュ・チェリビダッケのお弟子さんでもあります。
 ご主人は1981年にスポンサーの強力を得、スイスの若い音楽家たちを集めてチューリッヒ交響楽団を作ります。その最初のコンサートから津田さんは協力し、毎年彼女の豊富な協奏曲レパートリーをこのオーケストラの定期公演などで披露して来ました。
 フランク・マルタンのピアノのオーケストラのためのバラード(記念演奏会での録音がCDになっています)やショパンのピアノ協奏曲(ベルギーのレーベルからCDが出ています)などをはじめブラームスの協奏曲、グリーグ、チャイコフスキーの第2番やスイスの作曲家ミークの協奏作品など、彼女のレパートリーは幅広く、今も新しいレパートリーに挑戦してとりあげていくエネルギーも秘めているのです。
下の写真は、東南アジアに手兵であったチューリッヒ交響楽団と演奏旅行に行った2000年にシンガポールのヴィクトリア・ホールでベートーヴェンの皇帝を演奏した後に撮られた一枚です。
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by Schweizer_Musik | 2009-01-26 20:04 | 音楽時事
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