ギーゼキングの弾くグリーグのピアノ協奏曲
作曲者 : GRIEG, Edvard 1843-1907 ノルウェー
曲名  : ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16 (1868/1906-7改訂)
演奏者 : ワルター・ギーゼキング(pf), ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団
CD番号 : EMI/CDM 5 66597 2

この古いギーゼキングの録音を聞いて、やはり1951年の録音というだけの古びた音であるけれど、意外なほどのリリシズムに驚いた。
ギーゼキングの新即物主義(ノイエ・ザッハリヒ・カイト)なる様式がどうのというのは私にはよく分からないけれど、この演奏の情感溢れた表現は心に沁みる。
しかし、極めて優れたギーゼキングの演奏があってのことであるけれど、この古びた音の向こうから聞こえてくるフィルハーモニア管弦楽団の演奏が素晴らしいのだ。
いや、大ベテランのギーゼキングがやる気満々で突っ込んでくる冒頭、それに負けない覇気溢れるカラヤンの颯爽としたオケがそれを受け止める。
と思ったら、フワリと抒情的なフレーズをひとくさり流すと、オケはピタリとそれに張り付く。いやまさに協奏曲とはこうあるべきという見本のような演奏なのだ。
リパッティでこの曲に出会い、ラドゥ・ルプーによって奥深さを知った私には、このギーゼキングもまたかけがえのない名演である。
ツィメルマンとカラヤンはデジタル時代になって録音しているけれど、その完成度の高さは買うけれど、このような熱さ、演奏から伝わるヒリヒリとした熱さは、すでに失われていた。
戦後まもなくの頃の演奏であり、二人ともナチス・ドイツで演奏し、戦後戦犯として訴追された苦い体験を持つ者同士が、ロンドンで、どう思ってこの演奏に取り組んでいたのだろう?
しかし、熱いグリーグだ。ノイエ・ザッハリヒ・カイトが冷静でつまらない演奏だと思っていたら火傷しますよ!
by Schweizer_Musik | 2009-02-05 22:52 | CD試聴記
<< タイユフェールのヴァイオリン・... 懐かしのリステンパルト指揮のナ... >>