作曲者 : SHOSTAKOVICH, Dmitry 1906-1975 露
曲名 : 交響曲 第5番 ニ短調「革命」Op.47 (1937) 演奏者 : ギュンター・ヘルビッヒ指揮 ザールブリュッケン放送交響楽団 このアルバムは こちら 最近、キタエンコの全集を聞いたばかりなので、これがナクソスにアップされてもちょっと後回しになっていたが、聞いてみていかにもヘルビッヒらしい録音だと痛感させられる。 ちょっと聞くと、どこと言って特徴のない平凡な演奏なのだが、聞き込んでいくとどこまでも深い…そんな演奏なのだ。 楷書のショスタコーヴィチなのだ。だから特徴が伝わりにくい。でもその美しいフォルムに気がつくとどこまでも付き合ってみたくなる…そんな演奏なのだ。 これ見よがしの劇的な「革命」ならその辺にころがっている。私に言わせればその方がずっと平凡なのだ。 この演奏のようにまともに正攻法で演奏する方が本当はずっと難しいのではないだろうか?先日聞いたキタエンコの演奏同様、ヘルビッヒの演奏は全くこの正攻法というか真っ正面から音楽を描いて聞かせる。 ヴォルコフもマキシムもいない、逞しい「革命」はショスタコーヴィチそのもののように思う。 オケはミスターSのブルックナー録音などで親しいオケであるが、なかなか良いアンサンブルで、トップ・クラスの演奏を聞かせる。ベルリン・フィルだとか、ドレスデン・シュターツカペレのようだとかは言わないけれど、そうしたトップ・オケがその名声のあぐらをかくことを許さない立派な演奏は、賞賛に値する。 淡々と進められる第3楽章を聞きながら、背筋が寒くなる思いであった。革命に殉じた人への哀悼なのかと思ったけれど、そうではなく、もっと深い哀しみが込められているようにも思わせる演奏だった。 そしてその一部始終が冷めている…。だから決して激することはなく、平坦な音楽は逆に恐ろしい深淵を覗き込んでしまったような気がするのだ。 終楽章のノーテンキなお祭騒ぎは速めのテンポで出て、有名なアチェレランドもあまり効かせず、実にあっさりとしている。いかにもアホらしいと言わんばかりで、その背後にある巨大な何かを感じさせただけで、音楽はどんどん進んでいくのだ。 力強さに欠けるわけでも、音楽が平板で退屈なんてことはない(その逆である!!)。この理不尽なまでに引き裂かれた世界こそが作曲者が描きたかったものなのでは?と私は思い始めている。 この唖然とするばかりの演奏を聞いて、昔、大阪フェスティバル・ホールで聞いた時、こんな凄い指揮者だとわからなかった耳の悪い聴衆だったことをヘルビッヒさん、お許しを!!
by Schweizer_Musik
| 2009-02-16 23:26
| ナクソスのHPで聞いた録音
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