クレツキの指揮で聞くマーラーの「巨人」
作曲者 : MAHLER, Gustav 1860-1911 オーストリア
曲名  : 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」(1884?-88/93-96改訂)
演奏者 : パウル・クレツキ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : EMI/TOCE-7144

その昔、セラフィム・レーベルで1000円の廉価盤で出ていたこの演奏で、マーラーを知った人も多いのではないだろうか?
最近、yurikamomeさんのコメントでこの演奏を思い出し、何としても聞きたいと思って探して、ようやく今聞くことができた。
なるほど、フィナーレでカットがあったのだと今頃になって思い出した。昔聞いた時はさほど気にならなかったけれど、今となると20小節ほどのカットは惜しいことだ。
彼も作曲家である。クレツキの作った歌曲ならCDで持っている。素直なメロディーの作品であった。古いクーベリックのデッカ盤もカットがあったとか聞いたことがあるので、昔の慣習だったのかも知れないけれど、作曲家ならカットなんてして欲しくなかったなと、今になって思ったりした。
しかし、そんな些細なことなどどうでも良い。この演奏は当時のマーラー演奏については鬼門だったというウィーン・フィルのステレオ最初の「巨人」の録音なのだ。
クレツキはとてもよくまとめている。マーラーを演奏するのにかなりの抵抗があったとか聞くが、保守的なウィーン・フィルのことだ、さもありなんと思う。
しかし、この演奏はそうした抵抗に遭いながらもクレツキの最高の名演の一つだと思う。彼にはこの前にイスラエル・フィルとの演奏があり、最近復刻されて評判も良いようだが、私は未聴である。他に第4番と大地の歌(マレイ・ディッキーとフィッシャー=ディースカウがソリストであった)と第5番のアダージェットがあるが、ウィーン・フィルとはこの「巨人」だけだった。
六十年代はクレツキが最も輝いていた時代だった。ポーランドから亡命し、スイスの国籍を取りやがてスイス・ロマンド管弦楽団の音楽監督となった彼であったが、彼がもう少し長生きしていたら、スイス・ロマンド管弦楽団ももっと違っていたかも知れないと思うことが時々ある…。
数日前にスウィトナーの録音わ聞き、ゲルギエフの録音を聞いた。どれが一番良かったかと言われれば、このクレツキが一番で、続いてスウィトナー、番外にゲルギエフである。
レントラーの素晴らしさ、葬送の音楽のゾクゾクするようなソリストたちの見事さ!!まさに室内楽的マーラー(変な言い回しで恐縮!)である。
終楽章のカットはともかく、迫力も最高である。かつて、この演奏で「巨人」を聞き込んだ一人として、懐かしく、そして感じ入った次第である。
しかし、このSERAPHIM SUPER BESTという1500円の廉価盤のマスタリングは素晴らしいもので、譜めくりの音まではっきり聞こえ、録音しているところに自分もいるような錯覚をおぼえた。テープのノイズはあるけれど、それ以上によく出来たアナログ録音の素晴らしさを実感させる。
今も手に入りやすいことと思うが…、まっ良い演奏が目白押しのこの名曲だけに、今更推薦すべきか迷うところではあるが、クレツキという名指揮者を忘れないためにも、一度くらいは若い人にも聞いて欲しいと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-02-23 13:19 | CD試聴記
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