作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名 : 交響曲 第6番 ヘ長調「田園」Op.68 (1807-08) 演奏者 : ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 CD番号 : EMI/TOCE-9041〜45 これもyurikamomeさんにお借りして聞かせて頂いたもの。良い演奏だ。私はまず「嵐」の場面を聞いてサヴァリッシュの正確無比な指揮とロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の実力を再認識した。 1991年の録音である。ハイティンクがこのオケを退いたのが1988年だから、まだそれほど時は経っていない。でも、弦の響きに昔日の栄光はすでに陰りを帯びているようで、第5楽章のヴァイオリン・セクションの響きが荒れて聞こえるのは残念だ。 深い残響の中で聞こえてくるのは確かにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の音だけれど、録音スタッフが変わったからか、残響が少し多めで、デティールがフワッとしている。暈けているわけではないけれど…。 しかし、この終楽章が一番よくない。テンポが走りすぎていて(速いのではなく、ちょっとだけつんのめっている感じなのだ)サヴァリッシュらしくないと思った。 ヴァイオリンも響きが痩せているなと思ったけれど、チェロなどの低弦は更に魅力が失われているのはどうしたことだろう。マヒューラはもう退団していたとは思うが(未確認…)。 トップ奏者が変わって、曲がり角を大きく曲がっりはじめた時代の演奏であった。私はこの曲を聞く時はまずこの2つの楽章の演奏(録音)を確認してから全曲を聞き始めるのだ。 こうして第1楽章を聞き始めた私は、かつての素晴らしかったロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と違うオケなのだと思うことにして、ようやく落ち着いて聞き始めた。そうすれば、良い演奏だし、下手に重ねていないので、奏者の音色がよくわかるし…とても良い録音だと思う。 ただ、サヴァリッシュの指揮が今ひとつ本来の調子でないように思ったのは、テンポが少しだけ落ち着かないところで、第1主題の提示はそれなりに納得ができるのだけれど、少しセカセカしているなと思っていたら、第2主題にはいるところで、伝統的に少しテンポを落とす場所もサッサと入ってゆくとそのままのテンポで走る。 イン・テンポなのかというとその後、いきなりテンポが遅くなったり速くなったり…で、うーん、落ち着かないなあ…。確かに「田舎に着いた楽しい気分」の曲なのだけれど、牧歌的広がりと落ち着きに欠けるようだ。 第2楽章はそれでも好調な滑り出しでなかなかに聞かせる。この楽章の魅力は木管なのだけれど、ちょっと遠すぎる。ライブならこうなるというのはよく分かるのだけれど…。 テンポの違和感はあまりなく、聞きやすい演奏だと思う。木管(かなり良い奏者が残っていたはずなのだが)の魅力がもう少しフィーチャー出来ていれば名演となっただろう。 第3楽章のスケルツォはここまでの感じでは、かなりのテンポで飛ばすのではと思っていたら、当たり前のテンポであった。それでもホルンの連打を強調してみたりという細部での面白さ、オケの管楽器奏者の優秀ぶりが伝わってきて、この楽章はとても楽しかった。いや、なかなか良い演奏である。さすがスーパー・オーケストラだ。第4楽章へはちょっとだけテンポをあげて入るが、私はこれは間違っていると思う。アチェレランドの指示はないのだ。サヴァリッシュ氏はどうしたのだろう? 嵐の場面もクリアな低音でスコアがとてもよく音化されている。この楽章を聞くだけでも大いに価値があったと思う。ただ、終楽章への移行部がもう少し落ち着いて、たっぷりとやって欲しいと思った。 終楽章は、やはり弦の出来が今ひとつで、細かなアーティキュレーションもかなりアバウトになっていて、良い評価は出せない。 この後、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団はシャイーの下で凋落する…(とまで言い切れないけれど、私が好きだったコンセルトヘボウ管では無くなっていた)。シャイーが悪いというよりも、主だった奏者が交代し、新しい時代に突入したと言った方が良いだろう。 ヤンソンスのものもいくつか聞いたが、私にはあまり…。ということで、1980年代までで、私にとってこのオケは終わっていることを、再確認してしまった。 普通には決して悪い演奏とは言えないが(こんだけこき下ろしておいてよく言うな…)、このオケのベートーヴェンなら、ハイティンクかヨッフムの旧盤を選ぶべしである。 yurikamomeさん、お借りして聞かせて頂いておいて、こんな書き方をして申し訳ありません。第2番を今から聞いてみようかと思っているところです。またレポートいたします。
by Schweizer_Musik
| 2009-02-27 11:06
| CD試聴記
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