スキタイ組曲を名匠ロヴィツキの指揮で聞く
作曲者 : PROKOFIEV, Sergei 1891-1953 露
曲名  : スキタイ組曲「アラーとロリー」Op.20 (1915)
演奏者 : ヴィトルド・ロヴィツキ指揮 ベルリン・シュターツカペレ
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こんな録音があったとは知らなかったけれど、ナクソスのおかげで聞くことができた。プロコフィエフの初期の作品で、ディアギレフのために書いたバレエ「アラーとロリー」は、結局上演を拒否されるという運命をたどった音楽だけれど、スキタイ組曲として組み直され世に出た作品だ。
古典交響曲の前に、彼はこんな冒険を行っていたということに驚かされるが、よく言われるように「春の祭典」の影響がなかったとは言えないのかも知れない。(彼はこの曲の代わりに「道化師」を書いた)

第1曲 ヴェレスとアラへの讃仰 "l'adoration de Vélè et de Ala"
第2曲 チュジボーグと悪鬼の踊り "Le dieu ennemi et la danse des esprits noirs"
第3曲 夜 "La nuit"
第4曲 ロリーの出発と太陽の行進 "Le départ glorieux de Lolly et la cortèege de Soleil"

この4曲のタイトルからだけでも「春の祭典」を想像してしまう。スキタイとは紀元前三千年頃にあったウクライナの最古の遊牧騎馬民族国家の名前。詳しくはこちら
ディアギレフがこの作品に対して「筋は作為が多く、音楽はチェレプニン風で面白くない、もう1つ新しいバレエを書くべきだ」(Wikiの記事より引用)と言って上演を拒否したのだが、私にはほとんど難癖つけて拒否したように思われる。おそらく、すでに人気を得ていた「春の祭典」との共通点がありすぎるからというのが、本音だったのではないかと私は想像しているのだが…。
そんなことよりも、このロヴィツキの演奏はまことによろしい。アンドレ・プレヴィンの録音は美しいけれど、音像が冒頭から遠くまとまっているのでやや迫力に欠ける点が不満だったし、ピエール・ブーレーズの1970年のクリーヴランド管弦楽団との録音も低音の迫力に欠け、ブーレーズは一体この曲をどう考えているのかと不思議に思ったものである。
サイモン・ラトルがバーミンガム市交響楽団と1992年に録音したものはテンポが前のめりだったりで安定感に欠ける。
というわけで、古いステレオでアンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団の録音か、モノラルでならという条件でイーゴル・マルケヴィッチがフランス国立放送管弦楽団と録音したものが良いなぁと思っていたが、このロヴィツキ盤はこの二つに匹敵するか、凌駕する名演だと思う。
今まではアンセルメのものぐらいしか良いのが無かった(私の知る範囲で…)ので、ロヴィツキの切れ味鋭い演奏はとても嬉しい。
しかし、この演奏家もまたあまり話題にならないままになっているが、ロンドン交響楽団とのドヴォルザークの交響曲全集なんて素晴らしい名演だった。どうも不思議なことである。
アンセルメの録音はさすがデッカの名録音である。広がりがあり、テープ・ヒス・ノイズ以外は全く素晴らしいバランスで聞ける。一方ロヴィツキは重心の低いバランスで、空間の広がりはあまり感じないものの、突き上げるような迫力がある。どちらも得難い名演として、いつでも聞けるようにしておいてほしいものだが、できれば、デジタルで良い録音を残して欲しいと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-03-30 09:14 | ナクソスのHPで聞いた録音
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