フリッターによるショパン後期の3つのワルツを聴く
作曲者 : CHOPIN, Frédéric François 1810-1849 ポーランド
曲名  : 3つのワルツ Op.64 (1847)
演奏者 : イングリット・フリッター(pf)
CD番号 : EMI/TOCE56080

これはつい最近購入したもの。いや、私がショパンを買うなどというのは実は珍しいことで、購入場所はiTune−Storeで、ダウンロードしたものである。CD番号は日本盤のものをとりあえずつけてあるが、ダウンロード版で私は充分で、1500円だった。ブックレットもついている(英語)。ただ、やたらとフリッター女史のお美しい写真が散りばめられていて、興味のない私には不要で、ゴミ箱行きとなってしまった…(笑)。
まぁ、こうした子供だましのような作りでも売れればいいのだろうけれど、音楽を聞いて判断すべきなのは自明のこと。今はいくらお美しくても、人は皆老いるわけで、そうしたイメージでしか売れない程度のピアニストなのかと誤解してしまうそうだ。

そうしたくだらない話はともかく、この演奏はなかなか良い。冒頭におかれたピアノ・ソナタ第3番を聞いた時に、この人の音楽的センスの良さに驚いた次第。もっと早く聞くべきだった。ほったらかしにすべきではなかった。(ブックレットをちょっと眺めて購入を後悔し、以来聞かないままになっていたのである。罪作りなブックレットだ。ちなみに私の好みのタイプでなかったせいではない。念のため…笑)
この後期の3つのワルツは、子犬のワルツや嬰ハ短調のワルツが含まれるもので、ショパンの全ワルツの中でも傑作中の傑作である。それをショパン・コンクール2位のフリッター女史が弾いているのだが、響きが木質のとても良い音で余裕がある。耳に付く嫌な甲高い響きは終始無縁で、録音も落ち着いた良い音でとらえている。
タッチがとても優れているのだろう。柔らかな響きは音色に変化を与え、音楽に遠近感を与えている。優れた第一級の演奏である。
ブーニンのようなマニエリズムにとらわれた演奏ではなく、極めてオーソドックスな解釈で、奇を衒うところは皆無。若い人は特にこうでないと…。
それは、嬰ハ短調のワルツで同主調に転調(cis moll→Des dur)したところが特に象徴的なのだが、極端な音色の変化を敢えてつけず、部分を描き分けることに腐心するのではなく全体像を聞かせようとする態度に徹しているのである。
続く変イ長調のワルツでは音色の変化にテンポの変化で細かく描き分けていくのと対照的で、音楽自体がすでにしっかりと対比を印象づける作りをしている時にはそれを強調せず、変イ長調のように音楽が平坦に出来ている場合に、こうした演奏で変化をつけていくという姿勢に徹しているのだ。
ワルツ第一番や幻想即興曲などという比較的初期の作品も弾いているが、1845年頃の3つのマズルカOp.59ゆバラード第4番などの後期に属する充実した作品が中心であるのもこのアルバムの特徴だと思う。
広くお薦めしたいショパンの名盤の登場である。
by Schweizer_Musik | 2009-07-30 04:03 | CD試聴記
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