モーツァルトのハフナー交響曲の聞き比べ
作曲者 : MOZART, Wolfgang Amadeus 1756-1791 オーストリア
曲名  : 交響曲 第35番 ニ長調「ハフナー」K.385 (1782)

私が所持しているハフナー交響曲の録音を探したところ39あった。もっと探せばまだまだ出てくるものと思うが、充分な数だと思い、探すのをやめた。
15ほどの録音を聞き(よく聞いたものである。まっ20分ほどの比較的短い交響曲でもあるので聞けたのだけれど、こういう聞き比べは順番に聞いていくだけでなく、飛ばして比べてみたりして、何が自分の好みなのか、どういうものを良しとするのかを考えながら聞くので、愉しいというより、モーツァルトの勉強のようなところがある。
スコアを読み、そして聞き、またスコアを読む。そんなことをして特に気に入った演奏は次のあげねる11の演奏で、特に良いなと思ったのがピノックのものであった。続いてワルターのステレオ盤が続き、スウィトナーに魅力を感じた。
ピノックを除けば、中学生の頃から耳にタコができるほど聞いてきたものがほとんどで、やはり刷り込みとなっているものへの愛着から逃れることは難しいと思われる。

・アルミン・ジョルダン指揮 パリ管弦楽団アンサンブル (ERATO)
・オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 (EMI/CMS 7 63272 2)
・オトマール・スウィトナー指揮 ドレスデン・シュターツカペレ ( こちら)
・カール・ベーム指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Grammophon/453 231-2)
・トレヴァー・ピノック指揮 イングリッシュ・コンソート (Grammophon)
・ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ (PHILIPS)
・ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団 (SONY/35DC 73)
・ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィルハーモニック (SONY-classical/SMK 64 473)
・ヨーゼフ・クリップス指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(PHILIPS)
・ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団 (SONY Classical/75DC 601〜3)
・エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(DECCA)

かつてホグウッドの全集が一世風靡したことがあった。あの時は海老沢敏氏をはじめ多くの人があの演奏を薦めておられたが、今聞くと弦の音が乱暴で、品の無い音に思われる。それならネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの演奏が好きだったし、それで良いと思っていたこともあるが、ピノックの全集が出てしまってからはそれも色あせてしまった。
それほどピノックの全集は素晴らしいと思う。彼はアゴーギクで無理な表現を強いることも、ノン・ヴィブラートだからと言ってそれを強調するようなディナーミクの変化もつけたりしない。解釈そのものは意外なほど伝統的でスコアと真っ正面から向き合った演奏に思われた。
ワルターの新旧2つの演奏は、私にはどちらかと選べなかった結果である。第1楽章冒頭のフォルテがこんなに上品で、それでいて生気にみなぎる音で鳴り響いたものは他にない。特に古いニューヨーク・フィルとの演奏は中学生の時に耳にタコができるほど聞いたもの(それしか持っていなかったからである)で、今もって私のハフナー交響曲像はこの演奏で固まっている。
カール・ベームの演奏は、この次に聞いたものだった。響きの立派さ、声部の遠近感の付け方は完璧だ。余計な思いこみ解釈など微塵もない。それでいて決して情感に乏しいものではない、このバランス感がカール・ベームのモーツァルト演奏の真骨頂だろう。
同じ頃に聞いたものでスウィトナーのものへの思い入れは、以前にも書いたのでくり返さないが、オケがドレスデン・シュターツカペレという最高の楽器で演奏していることもこの録音の優れた点であるし、指揮の素晴らしさも特筆すべきだ。
優れたオケの響きとスタンダードな解釈が魅力のもう一つの演奏がヨーゼフ・クリップスとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏である。これはCD時代に入ってすぐの頃に手に入れてしばらく私の愛聴盤となっていたもので、これとネヴィル・マリナーの全集が私のハフナー交響曲のスタンダードだった頃もあった。ピノックが出てくるまでは…。
ラファエル・クーベリックの演奏はこの指揮者が大編成のマーラーなどに向いていると思いこんでいた私の偏見を粉々に打ち砕いた名盤として忘れることが出来ない。第3楽章が少々メリハリに欠ける感じがするのだけれど、立派なオケの響きでついつい聞き惚れてしまった。
同じ立派なオケの音ということではクレンペラーの重厚なハフナーも印象的だ。1960年の録音で、まだまだ元気な巨匠が、重心の低い響きでハフナー交響曲を驚くほど雄大な音楽に聞かせる。これはもう名人芸と言うべき代物だ。

モノラルの録音はワルターの他にもう一枚。1950年にエドゥアルト・ヴァン・ベイヌムがロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と録音したもので、これは最近聞いた中でも最も素晴らしいものの一つ。モノラルであるがデッカらしく、なかなか状態は良い。
他にアルミン・ジョルダンの演奏をあげておいたけれど、バランスの良い演奏ということでまずあげておかなくてはと思い、トップにあげておいた。

この曲は後期六大交響曲の他の曲と同様(40番を除く)直管のトランペットが使われているが、多くの演奏ではそれは隠し味的に抑え気味のバランスで演奏しているが、イーゴル・マルケヴィッチ指揮 ラムルー管弦楽団の演奏はこれを賑やかに鳴らして祝祭的な曲調を強調しているが、これはモノラルの録音が今ひとつなので残念ながら選に漏れた。
他に、落とすには惜しいなと思いつつ、ここにあげなかったもので、惜しいと思うのは颯爽としたカラヤンとベルリン・フィルのグラモフォン盤(EMI盤は録音に残響が多すぎ、聞きにくく私の好みではない)、オケの弦の響きに今ひとつのものがあるが…(残念ながら神奈川フィルでないのだ…)ゲオルク・ティントナー指揮 シンフォニー・ノヴァ・スコシア(こちら)、ガット弦を使い、指揮者をおかないスタイルで演奏したコレギウム・アウレウム合奏団のもの、そして入れても良かったのだけれどライブ特有の乱れがあるので外したアンドレ・クリュイタンス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(Altus/ALT086)も紹介しておきたい。

ハフナー・シンフォニーをこうして聞き比べたことは今までなかった。同じものを延々と聞くので厭きるかなと思ったけれど、モーツァルトの音楽にそうした心配は全くいらない。愉しい一日となった。
by Schweizer_Musik | 2009-08-02 19:23 | CD試聴記
<< ペルゴレージのコンチェルティー... ミューザ・川崎の現田茂夫とNH... >>