オールソンの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第1番
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.2-1 (1795)
演奏者 : ギャリック・オールソン(pf)
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昨年、第3番のソナタをとりあげた(こちら)けれど、今回は第1番のソナタ。
この前にソコロフの弾いた28番のソナタを聞いて、ひどく感心したのでそれをとりあげようかと思ったのだけれど、28番のソナタについて書くにはちょっと重いなぁと思い始めて、この曲にした次第。
ずっとフランス歌曲(今日はひたすらサン=サーンスの歌曲「墓地にて」の勉強で過ごした…)後は、こうした作品を聞くのは実に良い気分転換になる。
オールソンのベートーヴェンの全集は最近では出色の出来と言えるのではないか?
最近聞いたものとしては、まだ全集になっていないと思うがマウリツィオ・ポリーニのものや、ちょっと前になるが、ジャン=ベルナール・ポミエのもの、あるいはアルフレート・ブレンデルの最後の全集などと並んで極めて優れたものだと言える。
終楽章のパセティックな表現など、彼の燦めくようなタッチで演奏されれば、もう聞く方は圧倒されるしかないだろう。
古い、ヴィルヘルム・バックハウスやヴィルヘルム・ケンプ、あるいはアルトゥール・シュナーベル、イヴ・ナットといった演奏の後、フリードリヒ・グルダの目も覚めるような鮮やかな全集を聞いてきた私としては、これらの古い全集に愛着は禁じ得ないものがある。特にケンプとグルダは何度も聞いたものであるが、今となっては古いものと感じられるのは致し方ないのかもしれない。
これらの巨匠たちの演奏に比べると、オールソンはかなり自由にテンポを動かし、音楽の性格をより際だたせる。が、それも嫌みにならないのは、オールソンの輝かしいタッチによる。この美しい音の奔流に、若いベートーヴェンの迸るようなパッションが活き活きと伝わってくるのは実に感動的であった。
若い若いベートーヴェンの音楽である。まだ耳の病気も現れていない、前途洋々たる若い音楽家の世界なのである。
ナクソスでは7枚分がアップされている。私もまだ全部は聞いていないけれど、聞いたものに関しては何れも素晴らしい名演揃いであった。この第1番を含む第8集も他の第23番「熱情」、第30番」の演奏とともにお薦めしたい名演であった。
by Schweizer_Musik | 2009-08-23 22:44 | ナクソスのHPで聞いた録音
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