デルヴォーの指揮した幻想交響曲
作曲者 : BERLIOZ, Hector 1803-1869 仏
曲名  : 幻想交響曲 Op.14 (1830)
演奏者 : ピエール・デルヴォー指揮 コンセール・コロンヌ管弦楽団
CD番号 : EMI/TOCE-13386

安いのでつい衝動買いした一枚。しかし、幻想交響曲を一体何枚買えば気が済むのかとつくづく自らの業の深さを思い知らされた次第である。
この曲をつまらなく演奏するのは、よほどのヘボであろう。オケがちゃんと鳴るように書かれているのだ。ある程度の腕の指揮者とプロのオケならば、問題ないはずである。
でこの演奏、期待に違わぬ名演であった。デルヴォーさん、かなり弾けておられて、いやなかなかのめり込んだ「幻想」ぶりである。薬で自殺を図ったアホな男の見た幻想はこんなにおどろおどろしいとはちょっと辟易とするので、もう聞くのは止めようといつも思うのだが、人間怖いモノ見たさという変な好奇心も神は授けて下さったようで、私もついつい…(笑)。
しかし、この曲、ベートーヴェンが亡くなってまだ三年という時期に、オペラしか興味のないフランスで書かれた異様さは、作品を常識的な世界ではなく、明らかに異常な世界の住人にしてしまった。ドイツやオーストリアならば、もっと伝統に従った大人しいものになったことだろう。これよりもずっと後に書かれたシューマンやブラームス、メンデルスゾーンの曲がこの曲を聞いた後では極めて保守的で何もやっていないように聞こえてしまう…。
ティンパニ好きのベルリオーズだから、レクイエムほどではないがこの曲でもやたらの鳴り響く。ティンパニの和音(重音)もあるほどだ。当時の楽器では大変だったろうなと思うところでもあるが、いやよくやる…。
コンセール・コロンヌ管弦楽団は明らかな二流楽団。音はささくれだって品がないし、アンサンブルだって適当にはじけてしまっている…。なのに、やたらと勢いがあるのも若き日のデルヴォーの熱さなのではないか。ところどころ明らかに弾けてないところもあり「おいおいちゃんと練習しろよ」と言いたくもなるが、多分この程度なのだろう。オケがコンセルヴァトワールあたりだったらと思わざるを得ないが、それもご愛敬。一聴に値する名演だと思う。
精緻な演奏の幻想なんてくそくらえっていう人に向いた一枚である。
by Schweizer_Musik | 2009-09-20 22:33 | CD試聴記
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