トーマス・タリスのエレミアの哀歌
作曲者 : TALLIS, Thomas 1505-1585 英
曲名  : 預言者エレミアの哀歌 "Lamentations of Jeremiah" (1559以前)
演奏者 : ビーター・フィリップス指揮 タリス・スコラーズ
CD番号 : Gimell/CDGIM025

今ではこれもナクソスにあるので、気軽に聞くことができる(こちら)。また現代譜に直したものではあるが、五声の合唱の楽譜もIMSLPにある。
この曲はターナー指揮プロ・カンティオーネ・アンティカの歌で初めて聞いた。もうずいぶん昔のことだが、良い演奏で出会えたことは幸せであった。
LP時代からCD時代へと移り、聞くことが無くなってしまったけれど、Gimelから素晴らしいCDが出たと聞いて購入したのがこれだった。確かに素晴らしい!!これ以上の演奏があるのだろうか?
ナクソスを探していたら、ホワイトのエレミア哀歌やラッススの哀歌が入ったサマリー指揮オックスフォード・カメラータの演奏(こちら)もあり、これはyurikamomeさんがとりあげておられ、ラッススが未聴だったため、聞いてみたりしようと思ったところであるが、その前にこのトーマス・タリスの名作を…。
意外なほど斬新な響きをもってこの哀歌をトーマス・タリスは音楽にしている。特に半音の不協和が大胆に鳴ったり、対斜が起こったりとこのユダヤ人にとって忘れがたい悲劇を激烈な響きを穏やかな流れの中にサラリと滑り込ませたタリスの手腕の冴えはいかばかりであろうか。
バッハのマタイ受難曲の現代音楽的なまでの描写性の追求、激烈さに近い何かを感じさせるものである。
これは、ホワイトの作品でも言えるし、ラッススの作品でも言える。ラ・リューの哀歌でも劇的な表現というよりかなり屈折した表現が使われているが、この哀歌への作曲家たちのこだわりがそんなところに出ているのかもしれない。
サマリー指揮の合唱はピッチが不安定で、やや粗い発声が気にかかる。高声部よりも低声部が不安定だからちと困る。土台がしっかりしていないのではやはり駄目だ。タリス・スコラーズの演奏の後ではちょっと気の毒であった。
ちなみに、ホワイトの哀歌はタリス・スコラーズの演奏があるので、やはりこちらが良いだろう。ちょっと残酷なほど出来の差がついてしまった…。
by Schweizer_Musik | 2009-09-20 23:53 | CD試聴記
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