ニコラーエワのベートーヴェンのソナタ全集より
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 Op.7 (1796-97)
演奏者 : タチアナ・ニコラーエワ(pf)
CD番号 : SCRIBENDUM/SC 036

ニコラーエワ女史は亡くなる少し前、モスクワのチャイコフスキー・コンクールの審査員をしているところを見たのが最後だった。彼女は審査員長としてそこにいた。私の友人のピアニスト松村英臣君は、マックス・エッガー先生にコンクールを受ける際、彼女が審査員なら受けて良いと言われたそうだ。同じ彼からジュネーヴのコンクールを受けるという時に散々止められた。犬猿の間であった人が審査員で、あんな奴が審査員をしているようではたかが知れていると言われたのであった。結果はエッガー先生の言ったとおりになった…。
本物の耳を持っていたし、腕も持っていたニコラーエワこの1984年の録音であるから、もう歳をとってからの演奏ということになる。それもライブ。
1960年代、更にその前の演奏の見事さを知っている者にすると、この演奏だけを聞いて良い悪いを言うのは酷な気がする。テクニックには、はっきりと衰えが聞かれ、崩壊寸前と言っても良いかも知れない。
でも本物の音が鳴り響いている…。凄まじいまでの意気込みがそこに感じられ、かけがえのないテスタメントを聞いている気になった。
普通の意味でこれを推薦するのは無理だ。しかし、ニコラーエワという偉大なピアニストを知っている者にとってはかけがえのない演奏でもある。メロディア原盤で、CD初期にはいくつか出ていたものだが、まとめてバジェット・プライスでボックス化されたものでありがたいものだ。すでに数枚持っていたが、こうしてまとまって聞くと色々とまたわかことがあった。
1984年に行った全曲演奏会のライブで、会場ノイズは多い。最近のライブは、会場ノイズをデジタル技術でほぼ取り除いているのに、この演奏ではそのままで、まるで手をかけていないものだ。かつて聞いた印象とはちょっと違うけれど(異なる録音なのだろうか?)少し懐かしく思った。

追記
気になったので「ハンマークラヴィーア」を聞いてみた。ちょっと痛々しいほどであった…。やはり彼女のために出すぺきではない録音であったのかも知れない。良い状態での演奏はこんなものではないのだから…。
やはり、彼女が演奏した平均率クラヴィーア曲集やショスタコーヴィチの前奏曲とフーガなどの不滅の名演をまずはお聞きになった方が良いだろう。
でも、私は結構楽しんだ…。間違いは無くても、ただつまらない退屈な演奏などとは次元の違う世界がこにあったからだと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-10-11 19:43 | CD試聴記
<< 金曜のアルコールがようやく… ポール・パレー指揮のリストの交... >>