ジャン=エフラム・バウゼの弾くドビュッシーの版画
作曲者 : DEBUSSY, Claude 1862-1918 仏
曲名  : 版画 (1903)
演奏者 : ジャン=エフラム・バウゼ(pf)
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2009年のグラモフォン賞にこのジャン=エフラム・バウゼが弾くドビュッシーのピアノ曲全集のVol.4(映像, 練習曲他)がノミネートされていたけれど、どうもそれがそのまま受賞したらしい。この「版画」は全集のVol.2に入っているものだが、この演奏も実に冴えた良い演奏だ。
ドビュッシーの異国趣味がよく出た作品で、「塔」では東洋が、「グラナダの夕べ」はもちろんスペインがテーマになっている。「雨の庭」は最近「発見」された「忘れられた映像」の中に原型を聞くことができるが、この曲にはなかなか決定盤というべき演奏がなく、このバルゼの演奏が現在の私の中での決定盤というか、基準となる名演と言えそうだ。
特に有名な「雨の庭」での細やかささ漸進性のバランスのとれた演奏は高く評価できる。私はグラモフォン賞をとった「映像」はとても良い演奏だと思ったが、私のスタンダードとなっているミケランジェリの一位を揺るがすほどのものとは言えず、練習曲は内田光子の演奏に互角の評価というところか。
しかし、「版画」に関して言えば、この演奏が唯一無比のものと言えそうだ。「塔」のメランコリックな表情、物憂いハバネラと時折聞こえてくるざわめきが印象的な「グラナダの夕暮れ」も良い。
もちろん他の演奏もとても良い演奏で素晴らしい。
中でも「ピアノのために」が冴えた演奏で魅了された。「トッカータ」はああこんな風に弾いて欲しかったんだと納得。天才フランソワの演奏ももういらないかな…。スティリア風舞曲や喜びの島など、さすがと言わざるを得ない。
彼をドビュッシー弾きとレッテルを貼るのはもちろん誤りであろう。様々な作曲家たちの作品を彼が今後どういう風に聞かせてくれるのか、楽しみになってきた。グラモフォン賞受賞によって更に彼への注目が集まるようになるのではないだろうか。
by Schweizer_Musik | 2009-10-23 05:58 | ナクソスのHPで聞いた録音
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