チューリッヒ交響楽団によるカリプソとラヴェルのクロスオーバー *****(特薦)
チューリッヒ交響楽団によるカリプソとラヴェルのクロスオーバー *****(特薦)_c0042908_6344652.jpgカリプソがオーケストラと共演。そしてその中心にラヴェルがいて、更にここから音楽がどんどん連鎖して流れ始めるのが、何ともおもしろい!!カリプソのコーラス・グループのレベルは高い。マンハッタン・トランスファー風の洒落たハーモニーが、アフロ・アメリカンのリズムに乗って実にゴキゲンな音楽になっている。指揮者ダニエル・シュヴァイツァー氏の交友範囲はとても広いものと推察するが、これを彼がプロデュースしたとは、恐れ入ったといか言いようがない。
構成はラヴェルのマ・メール・ロワ組曲の間にカリプソの歌が混じるのだが、このラヴェルがとてつもなく名演。フランス風の軽い、ちょっと淡々とした演奏と違い、メロディーをよく歌わせながら、美しいサウンドを作っている。
彼と話した時、ラヴェルに大変興味を持っていると言っていた。奥様のピアニスト、津田理子さんをソリストにピアノ協奏曲やクープランの墓などもすでに定期演奏会などでとりあげて好評を得ている彼らだけに、次のリリースも期待したいところ。師のチェリビダッケゆずりの精緻なサウンドとカンタービレが見事に一致した、名演だからだ。
もちろん、ラヴェルだけとりだして聞くようには作られていない。時に鳥の鳴き声の効果音が曲間に入ったりする。ラヴェルの曲にインスパイアされてカリプソのギターが入り、新しい歌を紡ぎ出していくのだ。面白いではないか。今や古典となったラヴェルが新しい音楽の種となり、新しい芽を息吹かせる。これなら地下のラヴェルも喜んでくれるに違いない。

歌もオーケストラの伴奏も入るものから、コンボ編成でまとめたものまで様々。それらはなかなか魅力的なものばかりだ。カリプソの音楽とクラシックのオーケストラでは、サウンドの作り方が全く違うが、その間をとってバランスの良い音作りがなされている。変にポピュラー風の上下の帯域を強調したサウンドではなく、クラシック音楽に合わせたサウンドとなっている。カリプソ・ファンにとっては珍盤であり、希少価値のある録音となろうし、クラシック・ファンを心から楽しませることも間違いない。
何しろラヴェルが実に表情豊かで美しいのだ。カリプソのメンバーにオーケストラもインスパイアされたのか、生き生きとしたリズムで応える。おかげでマ・メール・ロワの名盤が誕生した。シュヴァイツァー氏がニコニコと私にこのCDを差し出されたのも当然かも。プロデューサーにして指揮者である彼の、幅広さが良い方向に出た素晴らしい一枚。
こんな面白いCDを我が国のレーベルで引き受けるところはないだろうか?ユニバーサルさん、ABEXさんいかが?
現在、オーケストラのホームページからこのCDが購入できる。よろしければ申し込まれてみられてはいかがだろう。
チューリッヒ交響楽団CDショップのページ
by Schweizer_Musik | 2005-03-27 06:35 | CD試聴記
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