ヴァント指揮ベルリン・ドイツ交響楽団のライブよりシューベルトの「グレイト」
作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名  : 交響曲 第8(9)番 ハ長調「グレイト」D.944 (1825?-28)
演奏者 : ギュンター・ヴァント指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団
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この曲はヴァントの得意の作品だったらしく、いくつもの録音が存在しているが、このライブは1993年6月14日にベルリン・フィルハーモニーでのライブだとのことである。
私はケルン放送交響楽団との全集録音を愛聴している。実はシューベルトの交響曲全集についてはカール・ベームのものとならんでヴァントのものが最高だと思っている。晩年、いきなり神格化されていまった感があるが、1970年代の録音がやはり最も良いと思われる。
この新しいライブを聞いて、やはりその感を強くした。良い演奏だとは思うが、テンポの動きがぎこちなく感じるところもある。例えば第2楽章の最初のフォルテ(弦楽による部分)でのテンポは明らかに少し前のめりになってしまう。これはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのライブでも気にかかったところだが、このベルリン・ドイツ交響楽団との演奏では更に増幅されている。古いケルン放送交響楽団との録音でもこの傾向はあったが、もっと小さな動きだった。
同時期のミュンヘン・フィルとのライブ(1993年5月28日ミュンヘン、ガスタイク、ライヴ録音→ナクソスで聞くならこちら)では最初のケルンでの全集録音と同じ程度の動きだった。それよりもこの部分でのボウイングは大変特徴的で、テヌート気味に演奏される。カール・ベームやブルーノ・ワルター、フルトヴェングラーなどの伝統的な解釈では、短めのマルカートで演奏されるし、ここでテンポ・アップする人はいない。
ミュンヘン・フィルとのライブについては以前書いた(こちら)。ただ、このベルリンでのライブは少し不安定な感じが否めない。
これはヴァントの解釈の問題であるので、私ごときがああだこうだと言うレベルの問題ではなさそうなので、この位にしておくが、この楽章以外は大変気に入っている。第3楽章はやはり第一級の演奏だと思うし、気力も充実しているようだ。
トリオで大きくテンポを落として、どこか悲しげな表情を聞かせるあたりは、最高の演出だと思うし、終楽章のメリハリの効いた活力のある表現は、はち切れんばかりのエネルギーの横溢を感じさせる。終生、老いに伴うかのような円熟とは無縁だった指揮者なのだ。
終楽章の充実感は、かつてケルン放送交響楽団との録音(1977年3月19日録音)で聞かれたものと同じであるが、更に充実している。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのライブよりも良いと思うが、この終楽章はあり演奏よりも充実している。細かなテンポの動きが、ここに来てスムーズになっているし、アーティキュレーションなどの解釈もしっくり来ている。録音も残響を適度に取り入れながら、なかなか良いのだ。
ただ、もう私はヴァントのシューベルトの全集を持っているので、わざわざこのライブを買わなければとまでは思っていない。ベルリン・フィルやミュンヘン・フィルとのライブの方が全体としては出来は上だと思う。この録音について、ヴァントもきっと「もう録音したではないか、どうしてこれを出すのか?」と言うのではとも思う。
しかし、私はこの終楽章のために買っても良いと思い始めている。
by Schweizer_Musik | 2009-11-28 03:56 | ナクソスのHPで聞いた録音
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