温故知新 Vol. 31 ミュンシュのベルリオーズの幻想交響曲
作曲者 : BERLIOZ, Hector 1803-1869 仏
曲名  : 幻想交響曲 Op.14 (1830)
演奏者 : シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団
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私はもちろんCDを持っているが、この異常な作品を聞くのにこれほど相応しい演奏は無いのでは…。実はこのブログで私はすでに何度かこの曲を取り上げている。名演とされる演奏がとても多い曲なのである。それらの中でも真打ちと呼ぶべき演奏がこれだ。
後のパリ管弦楽団を振ったEMI盤の方が録音が良いのだが、この古い録音もなかなかに良い。何と言ってもオケのバランスとミュンシュの気合いの凄まじさ…。
スピーカーから大音量を鳴らして聞くなどということが出来ない集合住宅故に、ヘッドフォン鑑賞が多いのだが、最近購入したオーディオテクニカのATH-CKM55のエージングをかねて、鳴らしていたものの一つがこれだった。いや凄まじいサウンドに驚くばかりである。1954年の録音であるがすでにステレオで、良いとまではいかないが、まずまずのバランスと解像度で聞ける。

この曲をはじめて聞いたのは高校受験の後の春休み。大好きだった数学の先生のお宅におじゃまして、これを聞かせていただいた。結局レコードを貸してもらい、一ヶ月ほど聞き続けた。
恋愛に失敗して死のうなどという感性は、今の私には想像するだにバカバカしく思えてくるが、青二才どころか、まだ世間知らずの生意気盛りだった私は、大いに共感するところがあって、これと同時に借りたジョン・ウィリアムズが演奏するテデスコのギター協奏曲をとっかえひっかえ聞いていたのである。
幻想交響曲の指揮はバーンスタインで、オケはニューヨーク・フィル。良い演奏だったし、CDで今でも時々取り出しては聞いてみたりする。
しかし、驚きと同時に私を惹きつけてやまないのは、このミュンシュの演奏だ。1962年にもう一度ボストン交響楽団とで録音しているが、この旧盤の演奏も素晴らしく、どこもかしこも輝きに満ちている。

その昔、小学生から中学生にかけてのはじめの頃は、コロンビア・ダイアモンド・シリーズがなけなしのお小遣いで買っていたもので、続いてブルーノ・ワルターのモノラル盤の「ワルター不滅の1000」とRCAグランプリ1000クラシカル、セラフィム名曲シリーズ、グロリア・シリーズ…(懐かしいでしょ?)だった。
ウィレム・ヴァン・オッテルローのハーグ・フィルハーモニーを指揮したグロリア・シリーズの一枚や、どんなだったかすっかり忘れてしまったけれど、ジョルジュ・プレートル指揮ボストン交響楽団のRCAグランプリ1000クラシカル・シリーズなどを少しずつ手に入れて聞いて、この演奏に出会ったのだった。
こんなにも熱いパッションが迸る演奏ははじめてだったので、驚いた。第4楽章の「断頭台への行進 "Marche au supplice"」の冒頭のティンパニーなんて団子状態で、最新の録音などには到底及びもよらないが、聞き始めれば呪いにかかったように止められなくなること間違いなしで、強烈。お金があるのなら、こんな古い録音でなく、新しいものをお薦めするが、たまにはこういうアナログ録音も良いものだと思う。
もともとはモノラルで発売されたものらしいが、ステレオでも実験的に録音していたことから、後にはステレオでの発売が当たり前となっている。実用化したばかりの最初期のステレオ録音だと思えば、これは大変優れた録音なのかもしれない。如何?
by Schweizer_Musik | 2009-12-05 18:56 | パブリック・ドメインの録音より
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