若き日のシゲティが弾くプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番
作曲者 : PROKOFIEV, Sergei 1891-1953 露
曲名  : ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 Op.19 (1916-17)
演奏者 : ヨーゼフ・シゲティ(vn), トマス・ビーチャム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
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ヨーゼフ・シゲティが晩年住んだというレマン湖畔の町を歩いていると、そのあまりの穏やかな佇まいに、こういうところで晩年を送れた彼を心から羨ましく感じたものである。
ここで海野義雄や前橋汀子を教えたのだと思うと、志を持った若い彼らの練習する様子を散歩のついでにと見回る彼の姿が浮かんでくるようだった。
同時代の作曲家の作品を積極的にとりあげた人でもあり、ブゾーニ、プロコフィエフやブロッホ、バルトークなどとも親しかった。彼らの作品のいくつかはシゲティが初演している。このことだけでも、彼がいかに多くの作曲家たちから信頼された作曲家であったかがわかる。
彼は演奏テクニックが弱いと誤った認識を持つ人が多いのは、残念なことである。
確かに彼は友人のブゾーニの忠告を聞いて、華麗なテクニックを披露するチャイコフスキーなどをレパートリーから外して、ドイツ古典派からロマン派にかけての作品と同時代のバルトークやプロコフィエフなどの作品をレパートリーの中心とし、技巧的な作品(例えばパガニーニなど…)を排除した。
多くの人たちが好んだヴァイオリンの小品を弾かなかったわけではないが、厳選していたようだ。
だから、1930年代に初来日した時の評判は散々だったそうだ(出典 : Wiki)。多分、ミッシャ・エルマンやフリッツ・クライスラーのようなヴァイオリニストが当時は良かったのだろう。しかし、彼の真価を当時の日本人が理解できなかったとは言え、やがては彼に師事し立派なヴァイオリニストと育った若者がたくさん居ることなども含め、彼が残した功績は計り知れない。
それにしても、このプロコフィエフの美しいこと!!1928年に録音したというブラームスなどは、オケがあまりに酷く(特に第2楽章冒頭のオーボエは下手な学生でもこんなに酷くは演奏しないぞと言いたくなるレベルだった)気の毒であったが、その後、ユージン・オーマンディと共演して録音したものや、演奏活動から引退する少し前に録音したメンゲスとの共演盤などがあるので、特に困らないし、ヴァイオリン・ソロに関してはユージン・オーマンディとの録音と同程度に優れている(メンゲスとのものはボウイングに余裕が無くなっているが、節々に味があるので、ぜひ再発してほしい→現在廃盤中…そのうちパブリック・ドメインになるだろうか…)。
このプロコフィエフは引退直前の演奏はさすがにお薦めする気にはならないけれど、この古い録音をまず一度聞いてみてほしいと思う。彼がこの作品を演奏するテクニックが無かったとか、聞く耳を持たない人は言いつのるけれど、そんな人には教えたくない名演である。

ついでながら、ブロッホのヴァイオリン協奏曲も収められているが、これもまた素晴らしい演奏である。メンゲルベルクとの傷のある演奏を聞くよりまずこちらを聞くべきだ。
「弦によせて」(音楽之友社刊)は弦楽の演奏を志す人は必携の書である。1968年に翻訳されてから今も売られていることだけでも、その意味がわかろだろう。ナクソスのおかけでこの名演をお薦めしやすくなったのは嬉しいことである。復刻状態もとても良い。私の持っているEMI盤よりも良いと思う。
by Schweizer_Musik | 2009-12-12 08:42 | ナクソスのHPで聞いた録音
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